第42話 裁縫が得意な人

仙がこの状態になったのは俺のせいだった。


大岩を全力の一撃で破壊した仙に俺は褒めもせず自分の考察に没頭してしまって放置したんだ。


『その上、大声でバカなんて言うから仙が自分を責めたんっすよね。旦那はMに加えて鬼畜だったんすね。』


仙には悪いことをしたと思っているよ。


でもアレは不可抗力なんだよ。


だってね。


大岩が手刀で真っ二つに切れたんですよ。


まるで名刀で達人が切ったかのように。


イヤ、どんな名刀でどんな達人が最高の一刀を放ったとしても大岩が真っ二つに切れてしかもあまりの入れ味に切れたものが引っ付いて直接触っても切れてることが分からないなんてあり得ないと思うでしょ。


アニメや漫画でもすぐに二つに分かれないだけで引っ付いたままってのはなかった。


それが俺が直接触れて金属に変化させた触手で叩いても引っ付いたままだったんだ。


二つ目の大岩を仙が粉々に砕いたタイミングで二つに分かれるなんて驚かない人はいないでしょ。


はい、言い訳終了。


仙はどうしたかって?


もう謝って褒めて持ち上げてとにかく俺が考えられるあらゆる方法を使いました。


取りあえず普通の状態に回復したので当初の目的地であるユズのところへやってきた。


折角命力の扱いが上手くなったことを仙に見せれなかった。


見せたらまた暗黒面に堕ちていきそうだったので。




村にあるビジアンヌの神殿で掃除をしているユズを見つけた。


「ユズ~、ちょっと良い?」


「あっ、スライムさん。大丈夫でしたか。倒れたって聞いて心配してたんですよ。」


流石、我が天使だ。


どこかの元案内人にも爪の垢を煎じて飲ませたい。


いや、そんなことしたら逆に天使が穢れてしまうからダメだ。


代わりに俺が・・・。


は、違う違う。


「大丈夫だよ。ちょっと魔力欠乏で寝てただけだから。ホラ」


ちょっと魔力を込めて風魔法を発動させる。


俺を中心にした風の渦が上空に舞い上がる。


アレ、おかしい。想定した以上に魔法の威力が高いぞ。


ちょっとした風が吹くくらいの魔力しか込めてないのに。


「キャ。」


ユズが悲鳴を上げて両手でスカートを抑える。


「もう、スライムさんのエッチィ~。」


天使が天使が恥ずかしそうに頬を赤くしながらまるで怒ってない声でムっとした顔を作って注意してくる。


なんだこのラブコメに出てきそうなシチュエーションは!!!


神様ありがとうございます。天使様ごちそうさまです。


「ご主人様、大丈夫ですかブ。」


風魔法が想定以上の威力が出たのはエロ補正が発生したせいだった。


クッ、仙がスカートを身に着けてないのが恨めしい。


ズボンをはいているので風魔法でのエロ効果が発生していないのだ。


イヤ、短パンってのもありか。


これだけ忠誠心が高いからやはりメイド服が良いだろうか。


「わざわざスライムさんが神殿にやってきたのは何か用事があったの。」


俺が仙の今後の服装に思いをはせているとユズが声をかけてきた。


仙のメイド服を妄想じゃなくてイメージしていたら俄然やる気が出てきた。


さぁ、目指せ裁縫マスター!


「誰か裁縫が得意な人を知らないか。」


「裁縫かぁ、アタシが出来れば教えてあげたいけど。アタシ不器用だから裁縫苦手なんだよねぇ。」


そうなのか。天使は不器用だったんだなぁ。誰にでも苦手なものはあるよ。


そんなことで裁縫が苦手なくらいで天使の素晴らしさは少しも揺るがない。


寧ろ可愛らしい欠点があるおかげで親近感が沸いてくる。


天使に手取り足取り教えてもらう計画は断念しないといけない。


ここは前向きに考えて俺が裁縫をマスターして手取り足取り教えてあげれば良いんだ。


なんていい考えなんだ。


ユズも苦手な裁縫が出来るようになって俺もユズとスキンシップできてウィンウィンの関係になれる。


「あ、でも。サクラ姉さんなら裁縫も得意だよ。アタシが一緒に頼んであげようか。」


やはりユズは天使だ。


俺のために裁縫が得意なサクラさんに一緒に頼んでくれるなんて。


「・・・へ?サクラさん?」


「うん、サクラ姉さんは裁縫も得意なのよ。戦士としてあれだけ強い上に裁縫も出来るなんて凄いでしょ。」


「そ、それは凄いね。」


ま、まさかサクラさんが裁縫が得意だったとは。


ゴメンなさい、許してください、悔い改めます。


イヤ、大丈夫だ。


確かに俺はサクラさんが裁縫が得意だなんて欠片も想像してなかった。


むしろ裁縫ができないと考えていたがあくまで考えていただけで口には出してないから誰にも(ただし、ヤスを除く)俺の考えは知られてない。


これはチャンスだ。


ユズに手取り足取り教えてもらうことは出来なかったけど、代わりにサクラさんから手取り足取り教えてもらえるんだ。


教えてもらっている途中にいろんなところが接触するなんてことも起こり得る。


主に胸とか双丘とか母性の象徴とかが。


サクラ姉さんは俺にお願いに気軽に答えてくれるくらい気安い関係だから事故が起こっても軽く許してくれる出そう。


何と言っても事故なら仙が悲しむこともないはず。


そう考えるとこれは天の思し召しと思えてきた。


感謝します。ビジアンヌ様。


『そんなことで感謝したらビジアンヌ様が可哀想っす。』


そんなこととはなんだ。


俺はどんな些細な事でも感謝するぞ。


ヤスのディスりに付き合っている場合じゃない。


今すぐにでもサクラさんに裁縫を教えてもらいに行かないと!


「悪いけど、一緒にサクラさんに頼んでもらえるかな。」


「もちろん。」


すぐにサクラさんに頼むため訓練場へ行くぞ。


「ちょ、ちょっと待ってよ。今すぐ行くの?私まだ神殿のお掃除が終わってないから待って。」


ウヌヌ。


天使に迷惑をかけるわけにはいかないけど事は火急を要する。


両立させるためには掃除を早く終わらせればいい。


「分かった。俺と仙も掃除を手伝うぞ。良いな仙。」


「もちろんですブ。」


「使徒であるスライムさんに神殿を掃除させて良いのかなぁ。」


今重要なのは掃除を早く終わらせることだ。


それ以外は些末な問題なのだよ。


掃除を終わらせてサクラさんに裁縫を教えてもらう。


そして仙が着るメイド服を作るんだ!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る