第41話 理論派?感覚派?

そもそも根本から間違っていたのだ。


俺は今まで命力も魔力と同じように扱っていた。


命力と魔力、名前が違うんだから別ものだと分かるだろうに俺はなんてバカなんだ。


身体が強化される特性を魔力も命力も持っていたから勘違いしていたがこの二つは全くの別物だ。


魔力の性質は水に近いのだろうか。


魔力はそのまま操ることは難しい。


そのまま操ろうとすると水が砂に沁み込むように身体に勝手に戻ってしまう。


魔力を自在に操るならばまず魔力が通るための道が必要だ。


人間の体に例えると血管を作り出してそこに血を流すのと同じようなものだ。


だから全身に魔力を巡らすとは極細の魔力管を全身に隙間無く張り巡らせることだ。


魔力が通る為の道が何で出来てるかは・・・・知らん。


俺が言ってるのはあくまでイメージだから本当に体の中に管を作るわけじゃない・・・と思う。


理論派のつもりだったけどスライムになったせいか感覚派になったみたいで論理立てて説明できないんだよ。


それに俺は学者じゃないから学術的解説なんて出来なくて良いんだよ。


『そうっすね。ただのエロエロマジックスライム(M気質)っすから学者じゃないのは確かっす。』


っすっすっす、煩い。


俺が珍しく真面目に考察してんだよ。


『悪気はないっす。旦那が正気を失ったのか心配になっただけっす。いつもと同レベルのツッコミで安心したっす』


それってどういうことかな。


俺は正気を失わないと考察も出来ない頭しかないってことか?


この理論派から感覚派にクラスチャンジした俺に対する挑戦だな。


俺の理論派にも感覚派にも通じる理路整然とした考察を叩き込んでやる。


え~と、どこまで話したっけ・・・


『魔力が通る為の道が何で出来ているを旦那が分からないってところまでっす。』


そうそう・・・知ってたし分かってたしちょっと内容を頭の中で整理してただけだしぃ~。


『そうっすか~。』


こ・こいつ・・・まぁ良いや。今更だ。


ヤスが途中で割り込んできたから話に戻りにくいな。


さて続きの考察。


俺は命力も魔力と同じように道を作って全身に巡らせようとしていた。


しかし命力と魔力は全く別の性質を持っていた。


魔力が水だとすれば命力は油だ。


だから魔力のように道を作ってもの道が渋滞起こして身体中に巡らない。


『道を広くしたら良いんっすね。』


だから道ってのも油ってのもイメージの話で実際は違うわけよ。さっきも似たようなこと言ったよね。


それと考察の途中ではいってくるな。


『は~いっす。』


まったく。


命力を身体に巡らせる方法だが仙が命力を動かすのをみて分かった。


命力は魔力と違って通り道を作らなくても身体へ勝手に戻ったりしない。


動きは遅いがそのままゆっくりと動かすことができるのだ。


『その結論だけで良かったのではないっすか?』


聞こえない、聞こえないぞ。


ヤスの正論なんて聞こえない。


決して俺はインテリぶりたかったわけではない。


そう俺は今後誰かに命力について教えるときのために考えをまとめただけだ。


うん。間違いない。


『ワァ~、そんな先のことも考えてるなんて流石っすねぇ~。』


これぽっちも感情の込めていない言葉がヤスから発せられる。


今回もヤスは放置でさっそく俺も命力を操るぞ。


命力の道を作らずにそのまま命力を操れ・・・ない。


何でだ。


今までと同じで命力が何かに詰まったように動かない。


イヤイヤイヤ。


落ち着け俺、落ち着け。


こういう時は一から見直すんだ。


・・・見直すって何を見直せばいいんだ。


今までの間違いを反省して命力を通す道を作ってないのに上手くいかない。


相変わらず最初で躓いているから見直しようがないじゃん!


『はぁ、旦那、今も魔力吸引スキルをつかってるっすよ。』


何、当たり前のことを言っているんだ。


俺はできる限り力をつけて安全性を確保したいから魔力がいつでも増やせる魔力吸引スキルを使うのはあたり・・・・。


魔力吸引スキルを使ってるってことは魔力を操ってるから命力をうまく使えないのは分かってたし、ただいつもの癖で発動してただけだし。


気を取り直してもう一度。


おぉ、身体中に命力を巡らせられる。


ここまで自由に命力を動かせれば俺の尊厳は保たれる。


しかし、魔力と命力が同時に扱えないのは面倒だな。


物理面では命力が優秀で魔法系では魔力が優秀だから出来れば同時に使いたい。


何より命力を操るときは魔力吸引スキルが使えないのはいただけない。


これは今後の課題だな。


サクラさんも同時には扱えないようだったし。


「仙、お前もこれくらい自由に扱えるようになるんだぞ。」


取りあえずどちらが上かハッキリさせとかないとな。


・・・アレ、あの忠誠心MAXの仙から返事がないぞ。


なんで仙はあんなに後ろにいるんだ。


俺のは念話だから距離は関係ないから聞こえてるはずなのに返事がない。


『旦那が大声でバカって言ったときからっすね。』


ホントだ。


真っ二つに割れた大岩の前に立ってる。


もしかして気合い入れて大岩に一撃を入れて怪我でもしたのか?


みたところ外傷はなさそうだけど。


「仙、どうした。大丈夫か?」


来た道を戻って仙の側へと行く。


「ゴメンなさい。ゴメンなさい。バカみたいに力を入れて地面を陥没させて。ゴメンなさい。ゴメンなさい。バカ力でご主人様を潰して。ゴメンなさい。ゴメンな・・・・・」


ど、どうした仙。


壊れたロボットみたいに同じようなセリフを繰り返して。


明るい仙がダークサイドに堕ちそうなくらいネガティブになっている。


『どう考えても旦那のせいっすね。』


えっ?


俺?

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