第36話 新たなる力その名も命力

サクラさんが再び抱きしめてくれるという神に祈っても良いくらいの幸運が振ってきた。


しかしその幸運も一瞬で消え去った。


決して仙を責めているわけではないつもりだがあの素晴らしい双丘を体感できなかったのだ。


しかも睡眠中におぼろげに体感しているのが始末が悪い。


手が届きそうで届かなかったのにさらに届きそうになったと言えば良いのか、分かるだろ。


どうして俺はあそこで寝てしまったんだ。


もう少し頑張って起きていたら・・・・


はぁ~、何時までもウジウジしてても結果は変わらん、それよりも未来を見よう。


そう未来だ。


仙が力をコントロール出来るようになればあのサクラさんに勝るとも劣らない素晴らしい胸を存分に体感できるんだ。


未来はきっと明るいぞ。


『結論は出たなら早く話をしたらどうっすか。旦那がダンマリ状態なんでサクラさんがさっきからイライラしてるっすよ。』


え!ヤバ。


美女のあるサクラさんを待たせるなんて万死に値する。


俺の心構えは別にしてもサクラさんがその気になれば俺なんて本当に殺される。


「ゴメン、頼みたいことってのはオークキングを一撃で倒した方法を教えてほしいんです。」


どうしてそんなことを思ったのか。


サクラさんの武器は大剣であり、オークキングもその大剣で首を切り落としたのは分かりきっている。


ではなんでそんな分かりきったことを聞いたのか。


それを答える前に完全記憶能力を持っている人や一部の天才と言われる人は別として視界に入る情報すべてを取得できるわけではない。


だから普通なら俺も魔力感知能力で全方位に対する情報を取得できても処理できないはず。


あくまで普通ならだ。


俺にこうそく思考という情報処理能力を持っているからこれをうまく使えば情報処理能力を上げられるはずと考えていた。


その考えはバーストスキルを編み出したことで証明されたのだ。


どんな特殊で変な効果があるスキルであっても用はは使い方次第だと分かったのだ。


つまり魔力感知スキルで全方位の魔力情報を取得できても俺では処理仕切れなかったがどこかでエロイベントが発生しているから見逃すわけにはいかないと思っていればアラ不思議、こうそく思考の補正効果が発動して全方位の魔力情報をつぶさに処理できるようになったのだ。


あえて言おう俺は天才であると。


『よ、エロの天才。煩悩の権化!誰も旦那の妄想には敵わないっす。』


フ、持たざるものの戯言など聞く耳もたんわ。


『現実逃避っすね。』


・・・つまり俺はオークジェネラルと戦いながらもサクラさんの様子を伺うことができたのだ。


そこでサクラさんが魔力でない何かを身に纏っていたんだ。


なぜ分かるのかと言えばサクラさんの周りだけ何も見えなかったからだ。


俺が認識できないってこと魔力が無いかは魔力以外の何かがそこにあるってことだ。


いくらサクラさんでも魔力無しでオークキングの首を一刀両断できるとは思えない。


つまり魔力以外の何かを使ったはずなのだ。


「オークキングを倒した方法ってアタイの愛剣で首を切り落としただけだよ。」


サクラさんは少し探るような眼をしながら見た通りの状況を説明した。


なんか俺は不味いこと聞いたのだろうか。


まぁ、もう不味いことを聞いていたとしても手遅れなので突っ込んで質問しよう。


「そうじゃなくてサクラさんオークキングを切ったとき魔力以外の何かを纏っていたのが何なのか知りたいんだよ。」


「あんたアレが見えたのかい?」


探るような眼ではなくなったが今度は戦闘状態のときのような真剣な眼を向けてくる。


「見えたって言うか見えなかったって言うか。俺って周囲の状況を魔力で把握しているんだけど、あの時のサクラさんは魔力を纏ってなかったから他の何かで身体を強化していたんじゃないかって思ったんだ。」


「フ~ン、方法はどうあれアレを感知したってことは使徒様に資質があるのかもしれないね。」


興味深そうな眼に変わったので問題はなかったのだろう。


俺って多分そういう才能とか必要そうなことってテンでダメだったからどうだろ?


いや、俺にはビジアンヌの寵愛がある。きっと何かうまい具合になるはず。


腐っても使徒だからね。


『そういえば旦那は下水道生まれでしたっすね。そう考えれば旦那が腐っていることに疑問はないっすね。』


「俺が腐ってもって言ったのはね。」


『あ~、ハイハイ、分かってるっすから旦那はサクラさんの話に集中するっす。』


ヤスは絶対分かってないがここまでの経験上、俺が否定しても時間が無駄に過ぎるだけだ。


それにヤスの相手をするよりもサクラさんと話をするほうが重要だ。


「資質ですか?」


「アタイが使ったのは命力と名づけた力だよ。これは鬼神の加護を取得したときに使えるようになった力だ。トン・チン・カンは全く身につかなかったけどアンタはどうだろね。」


サクラさんは俺を挑発してくる。


挑発するために尊大な態度に見せるためか両腕を組んで強調された胸がすごいことになっている。


こうそく思考が発動して脳内に細部まで保存されてゆく。


『能力の無駄づかいっす。』


何を言っているんだヤスは、この状態になるのを狙っているに決まっているだろ。


こうそく思考の効果が最大になった状態が最も学習能力が高い。


つまり命力とやらを身につけられる最善の状態なのだ。


「サクラさん、俺もその力を使えるようになりたいです。教えてください。」


「良いよ。ただ命力を使えるようになる保障はないよ。」


「分かってます。まずは山籠もりですか?」


やっぱ新しい力を身に着けるって言ったら山籠もりしての修行だよな。


前世の俺だったら無理だけどスライムとなった俺は肉体的疲労はほぼない。


だからどんなキツイ修行も耐えられる。


バッチコイ!

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