第35話 サクラさんにもう一度お願いする

抱いてもらうことはできるんだけど俺の身体がもたない。


仙の恵まれた身体を体感することが出来なかったのは残念だったな。


いや、まだ諦めるのは早い。


諦めたら試合終了ですって昔の偉い人が言ってたはず。


何か効果を打ち消すスキルを覚えられるかもしれない。もしくは女王様スキルの効果に耐えられるほど俺が強くなれば大丈夫だ。


仙が俺を抱きしめることに嫌悪していないと言う圧倒的アドバンテージがあるのだからな。




若干気落ちした仙を慰めながら村の訓練場にやってきた


「サクラさ~ん。」


訓練場でヒュンヒュン風切り音を立てながら素振りをしているサクラさんを発見。


しかし、等身以上の大剣で小枝を振ってるかのような音なんてどうやったら出せるんだろ。


「どうした、アタイに何か用事か?」


「サクラさんに頼みたいことが・・・・」


アレ、何か大事なことを忘れている気がする。


何だか胸にポッカリ穴が空いたような喪失感がある。


とてもとても大事なことだったはずだ。


それにしてもサクラさんの身体は相変わらず・・・


「ハッ!俺サクラさんに抱きしめてもらってない。」


そうだ。オークの巣を殲滅したらサクラさんに抱きしめてもらうお願いをしていたのにそのあと魔力を使い過ぎて眠ってしまったんだった。


危ない危ないもう少しで言葉巧みに言質をもらったお願いを無駄にするところだった。


仙の双丘を体感するのは先送りになってしまったがサクラさんの双丘を体感するお願いを思い出せてよかった。


「何言ってるんだ。アンタはどうやってここまで帰って来たと思っているんだ。」


どうやってって・・・わざわざそのことを言うってことはまさか。


「え、いや。まさか、そんな。」


「どうやら分かったようだね。アタイがアンタを抱いて村まで歩いて帰ったんだよ。仙はオーク達を再教育しないといけなかったし、ちょうどアンタのお願いもあったからね。」


そういえば何となく眠っているとき気持いい感覚があったような。


俺の知らない間にサクラさんに抱いてもらってたってこと。


それじゃ、意味がないんだよ。覚醒しているときにしっかり体感したいんだよ。


「もう一回抱きかかえてもらうわけには・・・・。」


サクラさんは既にお願いを叶えてもらったからダメだと思うけど、仙の胸をすぐには堪能できないことが分かったから猶更諦めきれない。


「アタイは別に良いけど・・・、ホントに良いのか?」


へ?


良いの!


マジで!?


「ヤリィ!ヤッタ・ヤッタ・ヤッタ。」


思わず小躍りしそうだ。


ん?何でサクラさんは俺に良いのか確認してきたんだ。


「ヒッブ、ヒッブ。」


どこからか奇妙な泣き声が聞こえてきた。


泣き声って言うか鳴き声?


これってもしかしなくても仙だな。


「ヒッブ、私が不甲斐ないばっかりにヒッグ。自分の力も制御できないからヒッブ。私が自分の力を制御出来れば何時でもご主人様を抱きしめて差し上げるのにヒッブ。」


あ、いや。これは困った。


俺を抱きしめられなかったことがそんなにショックだったなんて考えもしなかった。


『おそらく旦那が考えているようなことではないと思うっす。別に仙は旦那のことが好きで抱きしめたいわけじゃないっすよ。仙じゃなくてサクラさんに抱きしめてほしいとお願いしたのを聞いて旦那の命令を遂行出来なかったことで見捨てられると思ってるんじゃないっすか。』


そうなのか。


まさかそこまで忠誠心が高いとは。


「仙、気にするな。アレはお前のせいじゃない。ちょっと特殊なスキル効果のせいなんだから。」


別に仙がワザとやっていないのは分かっている。


今後何かスキルを覚えるか力の加減を覚えてくれればいいんだ。


「でもでも、ヒッブ、ヒッブ。」


「で、どうすんだ?」


どうしよ。


流石にこのまま放置ってわけにもいかんよな。


俺がもっと自分の欲望にのみ従って行動できるならサクラさんのお言葉に甘えて抱き着くけど、仙が泣いてるのにそんなことしたら罪悪感が半端なく襲ってくるな。


「仙、仙、聞いてくれ。」


「ヒッブ、ご主人様なんでしょうかブ。」


「近い将来、仙が力をコントロールして優しく抱きしめられるようになると俺は信じている。」


「でも、今は役立たずブ。だからサクラさんにお願いしてるブ。」


そう、そうんだけど。


何かないか何か。


サクラさんに代わりにお願いすることがあればそれを理由に抱いてもらうお願いを取り下げれば自然な流れになるはずだ!


一つだけサクラさんに教えてもらいたいことがある。あるぞ。


「いや、実はサクラさんには他に頼みがあるから俺を抱きしめてもらうのは仙に頼むしかない。だからなんとしても力の制御を出来るようになってくれ。」


『イヤイヤ、そんな話で納得するのは旦那くらいっすよ。』


理由なんて何でも良いんだよ。


大事なのは気持ちだよ気持ち。


それと仙が納得してくれるかどうかだよ。


「そうなんですかブ!分かりましたブ。絶対ご主人様を優しく抱きしめられるようになるブ!」


やっぱり大事なのは内容より気持ちだよな。


しかし、こんな話で納得するとは仙ってもしかして頭が残念なのか。


少し注意しておいたほうが良いかな。


「で、アタイにお願いしたい別のことって何だい?」

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