第33話 彼女の名前は仙

「オーククィーンっていう強い仲間ができたのになんでガッカリしてるんだ。」


さすがに女性のサクラさんにオーククィーンの鼻がイメージと違ってガッカリしているなんて言えない。


オーククィーンが魔物とは言っても女性であるサクラさんに女性型の魔物の顔について話なんてしたら不況を買うに決まっている。


「いや、ちょっと魔力を使いすぎただけだから大丈夫。」


とりあえず誤魔化しておく。


「ご主人様、名前をつけてほしいブ。」


え!


今「ブ」って言った?


そんな残念要素は要らないですよ。


「ダメですかブ~。」


「いやいやダメじゃない。ダメじゃないぞ。今考えているから待ってくれ。」


名は体を表すとも言うから適当につけるわけにはいかない。


しかも魔物は進化するのだ。


つまり良い名前を付ければ進化したときにより俺のイメージに近づいた姿になるはずなのだ。


ここは定番の花の名前にしよう。ただ花言葉なんて洒落たものは知らない。


それに言語学者でもない俺が花に込められた意味なんてものは知らないから俺のイメージになるがこの世界はだいたいイメージでなんとかなってるから大丈夫なはずだ。


優しげで美しいその上親近感を持てるお姉さんのイメージに合う花は・・・水仙かな。


実家の庭に咲いていて親近感はあるし柔らかく優しい感じのする白い美しい花だったはず。


「よし、お前は名前は仙だ。白く綺麗な花の名から借りた名だがどうだ?」


「へぇ、なかなか良い名前じゃないか。良かったな仙。」


「うれしいブ。ご主人様ありがとうございますブ。」


ほぼ綺麗なお姉さんである仙にお礼を言われて嬉しいはずなのにとても残念な気分になる。


やはり語尾の「ブ」が耳に残ってしまう(耳ないけど)のがダメなのか。


しかし、コレは仙のアイデンティティに関わることだ。


「仙、出来れば語尾にブって言うのは止めてくれないか。」


え、仙のアイデンティティ?仙は俺の眷属だぜ。主人第一に行動すべきだろ。


それにこれは仙のためでもあるんだ。


ほぼ綺麗なお姉さんである仙が語尾に「ブ」なんてつけていたら俺じゃなくても怪訝な目で見られるに違いない。


だから今のうちに矯正するのが仙のためなんだ。


そうこれは仙のためであって俺の願望はおまけだ。


「ご主人様、私は語尾にブなんて言ってないブ。」


「・・・そうか、俺の聞き間違いだったな。」


仙はごく自然に返してきたので誤魔化している様子もない。


マジか、自覚ないのか。


気にはなるがこれも愛嬌と思って慣れるしかないな。


最後にステータスを確認。


ステータス!




ステータス


名前 未設定


種族 エロエロマジックスライム(M気質)


魔力量 41000/4000


ランク F?


スキル 


触手 ビジアンヌの寵愛 ヤス 魔力操作 魔力感知 メタルウィップ 多重魔力吸引 強打 スライムドリル エッチな風魔法(ウィンドカッター弱 ウィンドボム弱) あんでっと化 ケッカイ こうそく思考 変態 念話 多段螺豪突き


バースト・・・たぐいまれ無い妄想力でケッカイスキルとエッチな風魔法を最大限有効活用した結果生まれたスキル




名前 仙


種族 オーククィーンアンデット


魔力量 6000/5000


ランク B


スキル


同族支配・・・自分より能力が低いオーク種を支配下における。


配下強化・・・配下の能力を強化する。


剛力・・・力が強化される。


大剣・・・大剣の扱いが補正される。


斬撃強化・・・武器を強化する。


物理耐性・・・物理的な攻撃に強くなる。


女王様・・・Mに関連するものに特攻。




アレだけ多くのオークを倒したのにまだ進化できないか。


・・・・。


『あ~、多くのオークすっね。面白い面白いっす。』


いや、違うぞ。偶々だぞ。多くのオークなんて詰まらないオヤジギャグなんて狙ってないからな。


『どうでもいいっすから。』


あ、はい。


と、とにかく仙が狙い通り同族支配のスキルをもっていたのは行幸だ。


これでオーク軍団を支配下における。


「仙、これから他のオークもアンデットにするから支配下においてくれ。」


「分かったブ。任せてくださいブ。」


ほぼ美人の仙がニコニコ返事してくれて嬉しいのに・・・いや嬉しいです。


「うんじゃやるぞ。目覚めよ。」


『ププ、目覚めよっすか。』


カッコ良いセリフが思いつかなかったんだよ。


余剰魔力を使い果たす勢いで魔力が身体から抜けてオークの死体を包み込んでゆく。


「ブギャ?」


「ブゴ?」


「ブブギャ?」


一匹二匹三匹と次々にオークが起き上がる。


フフフ、見よ。精強なる我軍を。


『そうっすかぁ。それより大丈夫なんっすか。また下水道のときの二の舞は勘弁っすよ。』


ッチ、ヤスは的確に俺の胸にナイフを突き立ててくる。


大丈夫、今回は仙がいるから何とでもなるさ。


「これだけの数をアンデット化できるとは接近戦が得意なのかと思ったら魔法が得意だったんだね。」


サクラさんに褒められちゃった。アンデットを作り出すなんてキモいって言われなくて良かった。


もし言われていたら三日三晩ぐらい寝込んでたわ。


「「「「「ブッギャッギャッギャッギャ~」」」」」


なんかアンデット化したオーク達がこっちと言うか俺を指さして笑っているような気がする。


『大丈夫っす。間違いなく笑ってるっす。』


全く大丈夫じゃないっす。


予想はしてた。予想はしてたけど現実に直面するとイラっとするぞ。


「アンタあいつ等に見下されているみたいだけど、あいつ等はアンタの配下じゃないのかい?」


あ~、サクラさんにもそう見えますよね。


「ご主人様、私があいつらには躾が必要ですね。」


仙さんオコです。激オコです。威圧スキルはないはずなのに空気が非常に重くなってます。


それにオコ過ぎて語尾の「ブ」が無くなってます。


「ちなみにオーク共は何て言ってるんだ?」


俺と違って涼しげな様子でサクラさんが仙に質問しています。


「聞くに堪えない言葉なのでご主人様のお耳汚しになるだけです。それよりもご主人様、許可をお願いします。」


あ、俺の許可待ちだったのね。


オーク達の言ってる内容も気になるけど、雰囲気からして仙の言うように碌なことは言ってないのは分かるから良いや。


もし聞いたら再び屍に戻す必要が出てきたら面倒だからな。


「仙、配下の教育をお願いね。」


「お任せください。」


仙は全身から発せられる怒気からは全く繋がらない優雅なお辞儀をした。

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