第32話 トン・チン・カンなら死んでたらしい

サクラさんが切り札でオークキングを倒した後はあっという間に決着だついた。


オークキングが首チョンパされた結果、オークジェネラルの能力強化が無くなった。


オークキングがいた状態でも互角に戦っていたんだから能力強化がなくなれば結果は明らかだ。


その後、オーククィーンと戦っていたサクラさんを颯爽と助けに行こうかと思ったときには既にオーククィーンは地に伏していた。


「助かったよ。正直あんまり期待してなかったんだよね。まさかオークジェネラル3匹と互角に渡り合うだけじゃなく倒しちまうとはな。お蔭でキングの気が完全にあんたに向いたから不意打ちを完璧に決めれたよ。」


サクラさんは俺が陽動すらできないと思われてたのかな。


心外ではあるが見方を変えれば俺はサクラさんの期待以上の活躍をしたってことだ。


ご褒美じゃなくてお願いに関して期待ができるな。


「死んじゃうかもしれないって思ってたんだよ。トン・チン・カン・なら間違いなく死んでるね。いや~、本当に助かったよ。アハハ~。」


「え!ホント?」


「ホント、ホント。」


いつの間にか死地に送り込まれていたみたい。


いや、まぁ。俺もオークの巣の状況を確認してたし、特に断りもしなかったから良いんだけど何か釈然としない。


だからと言ってユズやサクラさんの頼みであるオーク討伐を断るって選択はなかったのも事実だ。


だって可愛い系美少女とカッコ良さと妖艶さを併せ持った美女の頼みでっせ、断れるわけないじゃないっすか。


結論を言ってしまえば特にどうってことないけど、ご褒美じゃなくてお願いに期待しよう。


『エロエロマジックスライムの本能発揮っすね。』


フ、なんとでも言えば良いさ。


「じゃ、無事終わったことだし帰るか。」


そう言うとなぜかサクラさんが両手を広げた。


え?え?なに?


「ん?どうした。戦いが終わったら抱きしめてほしかったんだろ。スライムとは寂しがり屋だな。」


そ、そっか。そう言えばそうだったね。


もちろん忘れるわけはないぞ。


例え頭を殴られて記憶喪失になっても絶対に忘れない自信はある。


ただ、余りにも自然な動作だったから思考が追いつかなかっただけだ。


こうそく思考というエロ系特化したスキルを持ってしても対応できないとはビックリだ。


今すぐ魅惑の園に飛びついて至高の存在を全身で感じたいがその前にやっておくべきことがある。


ここに来た目的の一つでもある仲間集めである。


聞いてない?そりゃ言ってないですから。


「サクラさん、ちょっと待ってください。やりたいことがあるんで。」


「オークはもう殲滅したけど何かやることあったっけ?」


オーククィーンを倒した後に残ったオークもすでに殲滅済みである。


普通?なら後は鬼人族の村に帰還してオークの巣討伐報告をするだけだ。


「まぁ、個人的なちょっとした実験みたいなものかな。」


「良いけど、手早く頼むよ。こんなところで野宿なんて嫌だからね。」


その意見には同意します。


この世界に来たときは下水道なんて劣悪な環境で生活していたが集落というより良い環境があるのに態々オークの巣跡で野宿したくない。


これから仲間集めに加えて簡単な実験をしようと思っている。


こんなオークの死体しかない場所で仲間集めと言ったら決まっています。


ジャジャ~ン、あんでっと化スキルゥ~(ドラえも〇風)。


『ご託は良いんでさっさと終わらせるっす。』


安定のディスりがヤスから発せられる。


ちなみにオーククィーンは他のオーク達みたいに豚っぽくない。


寧ろちょっと肉付きの良い身体をしていて胸もデカくてエロい。


もともと仲間に出来る雌型の魔物を探すつもりだったけどこれは大当たりです。はい。


身体のことばっかり言っていて顔のことを言っていないのはサクラさんとの激闘の末に首から上が無くなっているからだ。


ただこれは寧ろ好都合だ。


今まであんでっと化を使った経験上、魔力を込め量を増やせば欠損箇所を修復できることは分かっている。


そしてスキルは意外と応用が利く。基本的な効果は変わらないがそれ以外はイメージで結果が変わるのだ。


つまり首のないオーククィーンをあんでっと化を使って好みの顔にできるはず。いややってみせる。


魔力を込め、顔をイメージする。


イメージするのはタレ目でちょっとふっくら目の優しい顔立ちの近所のお姉さんだ。


「起きろオーククィーン。」


特に声を発する必要はないけどカッコつけてみました。


そんなことでサクラさんの好感度が上がるとは思ってないよ。


ただゼロでもないでしょ。


掛け声がよかったのか、俺の妄想じゃなくて想像力が高かったのか。


ほぼイメージどおりの美人お姉さんが俺の目の前に立っていた。


「へぇ、戦闘もアレだけこなせた上にこんなことも出来たんだね。さすがはユズが連れてきた使徒様だ。」


サクラさんはホントに驚いたのか、先ほどまでの軽い感じの口調はなくなっていた。


褒めてもらえたのは素直に嬉しいのだが個人的にはちょっと納得いってない。


身体つきについてはもともと文句かったので問題ない。


タレ目でふっくらした優しげな顔立ち顔立ちをして要望どおりだ。


頭の上にブタさんの耳があるのもイメーしてなかったけどデメリット要員ではない。


ただ唯一鼻がブタさんの鼻なのだ。


確かにそこまで強固に鼻をイメージしてなかったけどきちんと顔全体をイメージしたよ。


オーク因子が強かったとしても責めて耳までにしてほしかった。


豚というかブタさんって感じの鼻なのがせめてもの救いだ。


彼女は全く悪くない。


けどそれでも俺がガッカリしてしまうのは仕方ないと思うんだ。

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