第30話 想像力(妄想力)
「そろそろオークに攻撃を仕掛けます。準備は良いですかサクラさん。」
俺はオークに気づかれないようにゆっくりとオークの巣に近づきながら念話でサクラさんに話かける。
「アタイは準備出来たよ。あんたの良いタイミングで仕掛けな。」
主任務は陽動だけどオークも出来るだけ削っておかないとまずい。
オークキングやオーククィーンと戦っているときに割り込まれたら致命的なスキをさらすことになる。
俺は決して天才的頭脳を持っているわけではないがそれでも死にたくないからラノベ知識を使って必死に考えた。
「と言うわけで俺の数少ないスキルで有効な攻撃方法を考え出したわけだよ。ヤス君。」
『キモイっす。』
そこはどんなことを考え付いたのか尋ねるのがお約束じゃないですかね。
被せるようにディスることはないんじゃないかな。
『良いからさっさとやるっす。この間にもサクラさんはオークキングを葬るタイミングが来ないかと危険地帯に身を潜めてるっすよ。』
ゴメンなさい。すぐ行動に移しますからサクラさんには黙ってて。
まず、取り出したるはケッカイスキルです。
これでオークを囲うように結界を作り出します。
もちろん敵であるオークを守るためにやっているわけではなくオークが逃げられないようにしているんです。
ただ普通にケッカイスキルを使っただけでは「対象範囲内に魅力的な女性がいるほど強化される。」という意味不明な特性上結界の強度は十分とは言えない。
そこで結界内に美女お姉さんサクラと天使ユズがいることを想像しながら結界を作り出す。これで多少は強度があがるはず。もちろん豚はいないものとします。
『エロエロマジックスライムの妄想力を逆手に取ってるんすね。』
妄想力って否定はできない。
だってどんなに頑張っても俺が想像する二人の姿は・・・
俺に言えるのは次に覚えるべきスキルは裁縫スキルってことだけだ。
『御託は良いっすから豚を始末するっす。』
はいは~い。
続きまして準備しますのはウィンドボムの魔法です。
ただこれも普通に使ったら大した威力にならないので天使のスカートがアレな状態を想像しながら使います。
違いますよ。アレってのはちょっと風のいたずらでフワっとなるだけですよ。
いくら想像とはいえ俺の天使にそんな酷いことはしませんから・・・しませんからね。
「ブゴ?」
「ブギ?」
鈍い奴らだ。豚以下だな。
結界の存在に気が付いたみたいだけど何が起こっているのかまでは分かっていない。
『鈍いお蔭で旦那がチンタラやっていても気づかれてないんっすよ。こんな調子でこの先大丈夫かオイラは心配っす。』
良いんだよ。上手くいっているんだから。
それにきっと主人公補正とかがあるはず、いやあってください。
オークに気づかれる前に終わらせよう。
結界内にさらにウィンドボムを複数作り出す。
「爆ぜろ!」
(ドドドドドカン)
結界内でウィンドボムが連鎖爆発を起こして大地と空を揺るがした。
ウィンドボムの威力が周囲に拡散することなく結界内に収束したからだろう、結界内にいたオーク達は巨大なミキサーにかけられたように細切れになった。
出来ればモザイクで分からなくしてほしいくらいだ。幸い俺はスライムになったから吐き気を催すことはない。
ピロリン スキルバーストを獲得しました。
フ、俺の才能が怖い。新しいスキルをまた作り出してしまった。
『エロエロマジックスライムの妄想力は侮れないっすね。妄想だけでスキルの効果を引き上げるんっすから。ただ妄想に使われた方には申し訳なく思うっす。』
良いだろ想像するくらい、誰にも迷惑かけないんだからさ。
健全な男児なら誰でもやっていることだろ?やってるよね?
『オイラに言われても困るっす。こう見えてオイラは一応女っすから。それに旦那の妄想の被害を一番受けているのはオイラっすよ。見たくもない旦那の妄想を見せられるんっすから。ただメイド服ってのにはちょっと興味あるっす。』
え?いや、マジ?
俺の妄想じゃなくて想像は全てヤスにダダ漏れなの。
確かにヤスは俺のスキルだから俺の一部でもあるわけだし理屈では分かるよ。
会話も念じるだけで出来るわけだから強く想像した映像が送られるのは分からないでもないけど、そこはプライバシーを守ってほしかった。
『旦那、異世界にプライバシーを求めても無理があるっす。スキルや魔法があるんすから。』
「ブギャ!」
「ブブギ!」
「ブヒギャ!」
さすがにあれだけ大きな音がすればオーク達が騒ぎ出した。
俺の存在も認識できているようでコッチに複数のオークが向かって来ている。
ヤスに俺の妄想じゃなくて想像がバレたのを恥ずかしがっている場合ではないか。
「さっそく新スキルの活躍の場面だな。食らえバースト。」
スキルを使えばあら不思議、自動で結界が現れオークの逃げ道を塞ぐと同時に爆発と衝撃が吹き荒れる。
「次だ、次だ。」
バーストスキルを発動するたびに十以上のオークが細切れの血肉へと姿を変えていく。
「ハッハッハ、圧倒的ではないか。」
『調子に乗ってアッサリやられないでくださいっすよ。』
はいはい、分かってますよ。
バーストスキルを連続で使って百近い数のオークを処分したころやっとキングが動きを見せた。
「ブギャァァァァァ!!!!!!」
キングの叫び声が空気を振るわせた。
スライムに耳があったなら俺の鼓膜は破れていたかもしれない。
キングの取り巻きである通常のオークの倍近い体格のオークがコッチへ向かって来た。
そろそろサクラさんも動くだろう。
『旦那、サクラさんに気を回している余裕はないっすよ。オークジェネラルもキングほどじゃないっすけど強敵には変わりないっす。』
サクラさんの豊満な胸が俺を待っているんだ。
キングにもジェネラルにも負ける気はない。
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