第29話 お願い

「それじゃ、作戦を簡単に説明するよ。アタイもキングとクィーン両方いるとなると単純な力押しだけじゃ勝てないからね。」


メタルウィップを豆腐のようにスパスパ切るサクラさんが簡単に勝てないってオークキングとオーククィーンってどれだけ強いんだ。


『個体差はあるっすけど、大よそ魔力量は5000前後っすね。』


おふ、俺の魔力量の約2倍じゃん。


それが2体っすか。


『近接戦闘能力は2倍以上の開きがあるっすよ。』


「なぜに?」


『スライムは万能型な上に旦那はエロエロマジックスライムっすから魔法型っす。オークは近接物理特化だからっす。』


なるほど、もし俺が戦うなら遠距離から一方的にタコ殴りにすべきってことね。


「それじゃ、同じ近接特化タイプのサクラさんは不利?」


「アタイを甘くみるんじゃないよ。一対一ならオークキングが相手でも百回戦えばアタイが百回勝つよ。ただ今回はオークキングとオーククィーンが一緒にいる上に取り巻きも大勢いるからね。ちょっと、いやかなり面倒なのさ。正直あんたが村に来てくれて良かったよ。」


サクラさんにお礼を言われた。


つまりチョットサクラさんの胸やお尻を観察してても良いよね。


・・・オークキングとオーククィーンが一緒にいると面倒なのか?


『本題のオークキングとオーククィーンの話がオマケになってるっすよ。キングはクィーンの伴侶、クィーンはキングの伴侶のスキルを持っていて互いに強化し合う関係なんっすよ。だからひとりのときの数倍強くなっているんす。キングとクィーン両方から能力補正を受けているので取り巻きのオーク達もバカにできないっす。』


えっ、それって大事やん。国が亡んだりするレベルじゃね?


『さすがに国は亡びないっすけど、街ぐらいは余裕で更地になるっすね。』


こわ、メッチャこわ。


いくらサクラさんが強くても俺と二人だけじゃ勝てないんじゃない?


「サクラさん、サクラさん。ココは戦略的撤退を提案します。俺達だけじゃムリです。」


サクラさんや俺の天使であるユズのためにできる限りのことはしたいが死ぬのは嫌だ。


「大丈夫さ。アタイの切り札が決まればオークキングだろうと一撃で仕留められる。それに例え撤退したとしてもどうする。トン・チン・カンを戦力に加えても、キングとクィーンがいるオーク軍には足手まといだよ。村で防戦なんてもっての外だ。ここで仕留めるしかないんだよ。覚悟を決めな!」


鬼人族の村には防壁もなければ防衛用の兵器もなかったな。


天使とサクラさんがいることで期待できる補正効果を加味しても俺のケッカイスキルから作られる結界で俺より遥かに強いオークキングとオーククィーンの攻撃を防げるとは思えない。


トン・チン・カンはともかくユズやサクラさんにはいろんな意味で死んでほしくない。


腹を括るしかないのか。スライムに腹があるのか分からんけど。


「分かった。俺もここで戦うよ。ただお願いがあるんだ。」


「お願い?何だ言ってみな。アタイだけじゃキングとクィーンを倒すことはできないんだ。一緒に戦ってくれるアンタにはできるだけの礼はするつもりだよ。」


これは俗に言うピンチはチャンスってヤツではないのか!


オークキングとオーククィーンのいるオークの群れは確かに強大でピンチだがサクラさんがお願いを聞いてくれるのはチャンスだ。


「え、え~と。その~そんなに難しいことじゃないんだけど。」


クッソ、自然に自然にお願いするだけだ。


「なんだい、さっさっと言いな。」


「無事にオーク達を殲滅出来たらお礼に抱きしめてほしい!」


言った!言ったぞ!


あの立派な胸を思う存分味合わせてくださいって言ったぞ(※言ってません。)


『安定のエロ思考っすね。』


健全な男子なら普通だ。


サクラさんが何かポカーンとしてるぞ。やっぱダメか。


胸やお尻をガン見できる関係まで壊れたら大変だ。


心象が悪くなる前に謝っておこう。


「スライムを抱きしめるなんて気持ち悪いっすよね。すいません忘れてください。」


「別に抱きしめるくらい良いよ。むしろ命懸けの戦いの報酬がそれだけで良いのかい?」


「とんでもない。命を懸けるに値する報酬ですよ。」


美人で妖艶なサクラさんの胸を堪能できるなんてこれ以上の報酬はないぞ。


「フフ、お前は寂しがり屋だったんだな。」


え?全然違いますよ。


なんかサクラさんが微笑ましいものを見る視線になってるけど・・・うん、このままのほうが俺に都合が良いから訂正する必要はないな。


「さて、お前のお蔭で肩の力が抜けた。作戦はシンプルだ。お前には陽動をやってもらう。アタイはそのスキにキングを切り札で倒したのちクィーンの相手をするから取り巻きはあんたにまかせるよ。」


俺に戦術や戦略の知識や才能があればもっと良い作戦が思いついたかもしれないけどそんなものはない。


いざとなれば俺が頑張れば良いか。


『いや、むしろいざとなったら旦那よりサクラさんに頑張ってもらうパターンしかないと思うっすよ。』


こういうのは気持ちの問題なんだよ。


気持ちで負けたら勝てるものも勝てないんだよ。


『そうっすけど、何か話変わってるっすよ。』


「よっしゃ!気合いだぁぁ!」


サクラさんに抱きしめてもらうために頑張るぞ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る