第22話 さらば下水道

「お待たせ~。」


え、スカベンジャーの群れがあふれ出ている中をここまで降りてきたのだって?


もちろんスライムドリルで新しい穴をあけて降りてきましたよ。


スカベンジャーなんて汚物マミレの生き物をかき分けて進みたくないですからね。


『旦那も汚物マミレ度で言えばいい勝負っす。』


なんだよ、汚物マミレ度って。


『それはどれくらい汚物にマミレているか表す指数っす。詳しい説明が必要っすか。』


別に知りたいと思ったわけじゃないから必要ない。


「これからユズの村に向かうぞ。」


俺は体を縮めて上に乗るようユズに促す。


「ヨイショ、ヨイショ。ありがとスライムさん。」


ユズが座ったのを確認してゆっくりと外の小川に繋がっていた場所に向けて進む。


『おっさんの上に乗る女の子・・・犯罪臭がするっす。』


そこは微笑ましい仲良し父娘でしょう。


ヤスの心は重油のように真っ黒でドロドロなのだろう。




ヤスの心の重油を洗い流す方法を考えた結果、そんな方法はないと確信したころ目的地である処理済みの下水が川へと流される場所までやってきた。


「スライムさん、ここからじゃあたし外に出られないよ。」


「俺に任せない。」


下水道から小川へ出る通路を塞いでいる鉄の柵に二本の触手を当ててヒョイっと左右に力を込めてやるとあら不思議あっという間に道が出来ました。


「ワァ、スライムさんスッゴーイ、サクラ姉ちゃんみたい。」


「イヤ~、それほどでもあるかな。」


『旦那の魔力量だったら出来て当たり前っすよ。』


聞こえない、聞こえな~い。


悪魔の声は聞こえないぞ。


「それじゃ、ユズの村に向かって出発だ。」


「しゅっぱ~つ。」


魔力感知で外壁周辺に見張りがいないことを確認して森に向かって下水道から外に出た。


遠くから騒がしい声が聞こえてくるのでスカベンジャーの群れが注意を引き付けてくれているのだろう。


見張りが戻ってくる前にさっさと森の中に隠れるぞ。




「ここまで来れば街の見張りに見つかる心配はないだろ。」


街の外壁が見えないくなったので取りあえず大丈夫だ。


「それでどっちにユズの村があるんだ?」


「う~んとね。あっち。」


ユズが少し右手側の森の奥を指さした。


「落ちないように捕まってろよ。」


「は~い。」


ユズを落とさないように気を付けながら獣道すらない森を進む。


少し進むと魔力感知に人型の反応を捉える。


あれはゴブリン?


「スライムさん、魔物が来るよ。」


「ユズも分かるのか?」


「うん、あたしのスキル本音察知は本音と相手の位置が分かるの。」


相手の本音が分かるだけでも有用なスキルなのにその上相手の位置まで分かるとはユズってかなり優秀な人材だな。


街までどうやって一人のユズがやって来たのか分かった。


本音察知で相手いる場所を避けながら森を抜けたんだな。


(ガサゴソ)


草木をかき分ける音が聞こえてくると緑色のガリガリに痩せているが腹だけ出ている身長一メートルほどの人型の生き物が出てきた。


『ゴブリンっすね。今の旦那なら敵ではないっす。』


まぁ、最弱の魔物(ラノベ知識)であるゴブリンに進化して魔力量も上がったのに苦戦してたらこれからやってけないわ。


「ゴブ!」


「ゴブゴブ!」


「ゴッゴブ!」


なんかコッチを指さしてゴブゴブ言いながら逆の手に持ったこん棒を振りかざしている。


ゴブリンって魔物?それとも原住民?


ラノベだと知恵のある亜人ってパターンと知恵のない魔物ってパターン両方あるから判断に困る。


『魔物っすよ。ゴブリンと同じにされたら鬼人族に怒られるっすよ。』


そうだな。気を付ける。


「ゴブリンさんっていつもお腹空かせているんだよ。」


「もしかしてユズってゴブリンの本音も分かるのか?」


「分かるよ。今モゴブリンさんがメシ~とかニク~とかエサ~と言ってるよ。」


オオォォ。ユズがいれば言葉が通じない相手の意思が分かるのか。


・・・こっちの言葉が伝わらないと意味はないか。


いや、敵対的かそうじゃないかだけでも分かれば役に立つ・・・はず。


「「「ゴブゴブ!」」」


ゴブリン三匹は雄たけびを上げながらコッチに突撃して来た。


せっかく三匹いるのに連携も何も考えていないようだ。


戦略なんて知らない俺でも三方から攻めるくらいはするぞ。


「スライムウィップ!」


「グギャ!」


先頭を走っていたゴブリンは俺のスライムウィップの一撃で地面に沈んだ。


手足がピクピク動いているがおそらく死んでいる。


「ゴ、ゴブ?」


「ゴゴブ?」


残りの二匹は足を止めて驚いたように両目を見開いて俺の見ている。


「ゴブリンさん仲間が急に転んで驚いたみたい。」


親切にもユズがゴブリンの心情を解説してくれた。


でもあれをこけたと思ったのか。


俺の攻撃を視認すらできていないんだな。


「ゴブ!」


「ゴゴブ!」


二匹のゴブリンは再びこん棒を振り上げて突撃してきた。


「スライムウィップ×2」


「「グギャ。」」


スライムウィップの風切り音が聞こえると同時に二匹のゴブリンも地に臥した。


あっけないな。


「スライムさん。つよ~い。」


ちょっと前までラットしか倒せなかった俺がゴブリンを一撃の元に倒している。


このまま順調に成長できればドラゴンなんかも倒せるようになるかも。


『ゴブリンを倒したくらいでいい気になったらダメっすよ。』


ちょっと良い夢見てたらこれだよ。

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