第21話 スカベンジャーパニック
あんでっと化したラットもコウモリも全く忠誠心がないことに痛めた心をユズに癒してもらいながら下水道を進む。
そしてため池の奥にあるスカベンジャーで溢れていたエリアにやって来た。
「うう、気持ち悪い。」
確かに格子状の鉄枠からスライムがニョキニョキ出て来るのは気持ち悪いかも。
スライムになって精神構造が変わったのか俺は特に何も感じないな。
生き物を殺したときも何も感じなかったから今更か。
・・・気持ち悪いって俺のことじゃないよね?
『旦那もスカベンジャーも同じスライムっすから、似たようなもんじゃないっすか。』
確かに同じスライム族で同じ下水道に・・・違う!
俺はあいつらとは違う!
あいつらの主食は汚物だが俺の主食は・・・・魔力?
とにかく違うんだ。
「ゴメンなさい。スライムさんは気持ち悪くないよ。」
「うう、ありがとう。」
エエ子やユズはエエ子や。
ヤスは悪魔だけどユズは天使だ。
『それでこんなところに来てどうするんっすか。』
おのれ外道め。俺の癒しタイムを邪魔するとは。
実体があればスライムウィップ百叩きの刑に処したぞ。
「このスカベンジャーを使って街を混乱させるのが脱出のための一手を打つんだよ。」
結界が無効化されているだろう状態なのだからそのまま脱出できるのではと思うだろうが恐らく簡単には脱出できないと俺は思っている。
なぜなら街を魔物から守るための結界は厳重に管理されているはず。
だから結界が無効化されていることはすぐに察知されていると考えられる。
そのため今頃は結界に頼らず外敵に対応するために多くの見張りが配置されているはずだからだ。
そんな状態でスライムと鬼人族の子供が外壁の近くにいればすぐに発見されることは簡単に想像できる。
そこで俺は見張りの注意を他に向ければ結界のない町から簡単に脱出できると考えたのだ。
そこで役立つのがこのスカベンジャーの群れだ。
スカベンジャーの群れを街中に誘導出来れば新たに街中に増えた見張りの注意を外への警戒から内への警戒に変更せざるえない状況になるはずだ。
いくら俺のスライムウィップ×強打の一撃で死ぬスカベンジャーとはいえこれだけ大量に街中に溢れればそうなるはずだ。
「ユズちょっと降りてくれるかな。」
「うん。」
天使のために床にある汚物をキレイに分解吸収する。
あれほど汚物を忌避しいたのがウソのようだ。
さてスカベンジャーの群れをどうやって街中に誘導するのかと言うと簡単な話である。
ここは街の下水道ってことはこの上は街である。
つまり天井に穴をあけてしまえば溢れんばかりのスカベンジャーの群れは自然と街中に飛び出して行くというわけだ。
「それじゃ行くぜ!スライムドリル!!」
キュイイイーンと音を立てながら天井目がけてドリル状の身体で体当たりする。
ビックスカベンジャーに大穴を開けた時よりも上がった身体能力を存分に使って天井を上に向かって掘り進む。
「スライムさん、すっごーい。」
ヤスからは決して言葉にされないような声援を天使が言ってくれた。
天使の声援が俺の背中を後押ししてくれる。
これだ、これだよ俺が欲しかったものは。
ビジアンヌの力の一部で作られたスキル案内人がもとになって出来たヤスは案内人としては申し分ない能力があるがその言動のせいでプラマイゼロなのだ。
今まで何をしてもヤスは基本ディスるだけなのだ。
いくら納得して行動していると入ってもテンションは下がる一方なんですよ。
そこにきて可愛らしい女の子であるユズの声援、そりゃテンションも上がります。
え、チョロいですか?良いんですよチョロくて、嬉しいだから。
オーリャオリャオリャオリャァァァ!!
(ボフ)
何とも気の抜けるような音と共に下水道と街中を繋ぐ穴が開通した。
「おお、この世界でも太陽と空の色は変わらないんだなぁ。」
スライムドリルの勢いのまま宙に投げ出されながら前世と同じ空と太陽の色に安心した。
もしかしたら紫の太陽とか緑の空なんてものがあったら何時までも違和感がなくならなかっただろうから安心したんだ。
「「「・・・・・・。」」」
着地すると大勢の視線が俺に向けられていた。
そんな熱い眼差しを向けられると照れるぜ。
「「「・・・・・・。」」」
大勢の人がいるのに何故かみんな固まって動かない。
どうやら俺のリアクション待ちのようだ。
大勢の視線を集めているときにやることと言ったらアレだな
俺は二本の触手を作り出して左右に振ってアピールする。
仕方ないだろ俺は言葉を発せれないから挨拶できないんだよ。
「キャー、スライムよ!」
スライムなんて子供でも倒せるような魔物でしょ?
まるでゴキブリを発見したかのように悲鳴をあげるのはなぜ?
『そりゃ、旦那からゴキブリのような嫌悪感を感じるからっすよ。』
え、俺ってこの世界ではゴキブリ扱いなの?
それならまだエロいエロい言われているほうがマシだ。
『旦那はそんなに女性からエロいって言われてたいんっすか。変態っすね。』
マシってだけで言われたいわけじゃないですよ。
「死ねや!ブヘラ」
いきなり筋肉隆々の厳つい男が殴りかかってきたのでツイツイ触手で殴ってしまった。
「アレ、弱い?」
世界の環境を壊すくらいだから一般人も強いのかと思ったけど違うみたいだ。
やっぱり下水道に来た男達が持っていた道具が躍進の原因か。
「おい、穴からスライムがドンドン出てくるぞ。衛兵を呼んでくれ。」
ようやくスカベンジャー達が地上に出てきてくれたようだ。
ここにはもう用事はないのでさっさと下水道に戻るか。
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