第20話 お仕事中
「スライムさん、臭いです。」
ガーン!
俺の癒しユズに臭いなんて言われるなんて。
おかしい吸収と分解の効果で俺の身体は常にキレイなはずだ。
これを言ったのがヤスだったらなんてことはないのだがユズに言われると胸にナイフが突き刺されたように感じる。
スライムだから胸は無いしナイフで刺されたこともないけどそう感じるんだ。
『ププ、やっぱり汚物マミレの旦那は臭いんっすね。』
「黙れ。」
癒しのユズに言われたことがショックで怒声を上げてしまった。
「ヒィ、スライムさん。ごめんなさい。我儘言わないから許して。」
「違う、違うよ~、ユズを怒ったわけじゃないよ。」
女の子を泣かすなんて紳士として有るまじき行為だ。
でも違うんだ、俺が怒ったのはユズじゃなくてヤスなんだよ。
案内人としては優秀だがそれ以外のヤスの行動が俺にプラスに働いたことはないんじゃないか。
「ホ、ホント?」
「ホント、ホント。ちょ~っと嫌なことを思い出しただけだから。」
天使ユズに悪魔ヤスを紹介するわけにはいかないんだ。
俺には悪魔から純粋な天使(小悪魔疑惑有り)を守る使命があるんだ。
「あたしが下水道の臭いを我慢できないって我儘言ったのを怒ってないの?」
あ、臭いって下水道のことか。
ハァー、良かった。
ユズような心優しい子が俺を傷つけるようなことを言うわけないじゃないか。
ヤスなんかとは遺伝子レベルから違うんだよ。
スライムの俺には鼻がないから臭いを感じなかったけど、ここは下水道なんだから臭いのは当たり前じゃないか。
それをいままで気付かずにユズに辛い思いをさせていたなんて紳士失格だ。
「怒ってないよ。気がつかなかった俺が悪いよゴメンね。」
ユズの周りに漂う空気を換気するために風魔法で作った新鮮な空気でユズを包みこむ。
「キャ!」
新しい空気を風魔法で作っただけなのになぜユズのスカートがめくれる。
スカートめくりなんて小学生で卒業したぞ。
『旦那は前世の幼少期からエロスライムになる素質を持ってたんっすね。』
うるさいぞヤス。
スカートめくりなんて誰でも一度は通る道だ。
なぁ、みんな。
「もう、スライムさんのエッチ。」
ユズが両手でスカートを押えながら若干赤くなった顔で俺に非難の視線を向けてくる。
しかし天使がそんな視線を向けても可愛いだけだ。
「ゴメン、まだ魔法の制御に慣れていないんだ。」
もしかしなくてもこれはエッチな風魔法の補正効果が働いた結果だろう。
グッジョブだ。
『エロエロマジックスライムの本領発揮っすね。』
「スライムさんのバカ。」
しまった!
俺の本音はダダ漏れなんだった。
しかしユズの可愛い表情とセリフをゲットしたので結果オーライだ。
『旦那、情報収集に放ったアンデット達はどうしたなったんすか?』
「・・・ああ、あいつらね。一旦呼び戻してみようか。」
『忘れてたっすね。』
いや、覚えてたよ。
ただちょっと天使にアンデットを合わせるのが心苦しかっただけだ。
そう俺は決して忘れていたわけではない。
「ユズ、これから俺の仲間のたくさんラットを呼ぶけど驚くなよ。」
「分かった。」
「我が眷属よ集まれ!」
アンデット化したラットやコウモリとの繋がりを通して呼びかける。
「今、忙しいです。後にしてください。」
忙しいって何してんの。
「猫に追いかけられてます。助けに来てください。」
ゴメン、助けにはいけない。自力で何とかしてくれ。
「美味しいチーズを食べているので手が離せません。」
知るか!すぐ戻ってこい!
「Zzzzz。」
寝るな!起きろ!
「寝床を探すのが忙しいので後で。」
なんで寝床を探してんだ、情報収集はどうした。
いくらあんでっと化スキルに忠誠度のマイナス補正があるとしてもみんな自分勝手に動きすぎじゃね。
情報収集していないだけじゃなく誰も帰って来ないじゃん。
これはあれだな。
もうあんでっと化は雌にだけ使えと言う神の啓示だな。
『すべての事象をエロに繋げるとはエロスライムの鏡っす。』
違う。女性ばっかり仲間にしてハーレムを作りたいわけじゃない。
ただ男だと忠誠心にマイナス補正がかかるから女のほうが効率が良いんだ。
ただそれだけなんだ。
とにかく待っていても誰も帰ってこないことは確定した。
「・・・・さてみんな忙しいみたいだから諦めて先に進もうか。」
情報収集するにはもっと優秀で忠誠心の高い仲間を見つけないとダメだ。
取りあえず次の目的はユズの集落に行くことは確定。
ユズの村で情報を集めてみるのも良いだろ。
俺の癒しであるユズの周りの空気を常に新鮮なものに変えながら下水道の奥にある目的地を目指す。
俺にはユズがいれば十分だ。
ラットやコウモリが一匹も帰ってこなくても寂しくないぞ。
『オイラもいるっす。』
喋らないヤスなら歓迎だ。
『酷いっす。』
酷いのはヤスだから反論は受け入れない。
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