第19話 原因は俺らしい

またまた鬼人族の女の子の話をまとめる。


どうやら最近鬼人族の周りにオークが頻繁に現われるようになったとのこと。


鬼人族の集落は迷い結界に守られているのでオーク自体は危険ではあるがそれ以上の問題が人族である。


嘗てもっと人族の勢力圏と鬼人族の集落は離れていたが、人族が森をドンドン切り開いた結果歩いて数日の場所まで近づいてしまった。


もしオークが集落を作っていたら近いうちに人族も気がつくと予想できる。


そうなれば必然的に人族が鬼人族の集落にも気がつくことは容易に想像ができる。


人族には迷いの結界は意味をなさない。


迷いの結界が人族に効果がないわけではない。人族の持つ道具が迷いの結界を無効化するらしい。


この集落の危機を何とかする可能性がある俺のところへ女の子は助けを求めてきたのだ。


「ウウウゥ~、エエ話や。オッちゃんに任せとき!何とかしたるわ。」


なんて健気でエエ子なんや。


集落のために自身の危険を顧みず魔物その上人族の街までやってくるなんて。


「ホント!ありがとう!スライムさん!」


『旦那、チョロいっす。チョロ過ぎっす。オイラ心配になるっす。もしかしなくても女性に会うたびにエロスライム兼チョロスライムになるんじゃないっすか。』


ヤスが何か言っているが知らん。


俺は紳士だ。だから良い子が困っていたら助けるんだい。


「まずはこの街から出て・・・君の名前は?」


「あたし?あたしの名前はユズだよ。」


「ユズね。そう言えばユズはどうやって街に入ったんだ?」


ヤスから聞いた話によれば人族の街には結界が張ってあって正規の入り口以外からの出入りはできないはずだ。


それなのに人族ではい鬼人族のユズが街の下水道までなぜ来れたのだろうか?


「??壁に空いてた穴から入ったよ。」


そりゃ壁に穴が空いていたなら簡単に入れるな。


ん?そうなのか?街の結界ってそんな簡単に突破できんのか?そもそも物理的な街の壁と魔法的な結界って関係あるの?


『街の壁に穴が空いたくらいで結界は無効化されないっすよ。そもそも街の壁と結界は別物っすよ。』


「それじゃ何でユズは街に入れたんだ?」


『そりゃ、結界が無効化されてたからじゃないっすか。』


結界がある=ユズは街に入れない


ユズが街に入れた=結界がない


と言う式が成り立つのは分かるが俺が知りたいのはそういうことじゃないんだよ。


「それじゃ何で結界が無効化されたんだ?」


『えっ?旦那分からないんっすか!』


ヤスのディスりに慣れてきつもりだったがやはり腹が立つ。


こうなったら意地でも自分で答えを見つけてやる。


結界が無効化される原因って何があるんだろうか?


俺のラノベ知識によれば結界を発生させる魔法陣や魔道具の破壊、或いは魔力を供給する魔石の破壊などが考えられる。


魔法陣や魔道具の破壊が原因なら大事になって街の警備も厳重になるはずなのでユズも簡単に街へ入れなかったはずだ。


魔石の破壊も同様だが魔力不足と言う魔石の破壊と同等の現象ならどうだ?


魔力不足に絞って原因を考えると、魔力の過剰使用か魔力漏れだろうか。


それとヤスも言い方から考えると答えはおのずと導き出される。


「俺の魔力吸引が原因で結界の魔力が不足しているんだな。」


どうだ。このくらいのことは俺でも分かるんだぞ。


『そんな当たり前のことをドヤ顔で言われても困るっす。』


ですよねぇ。ヤスが俺を褒めることは無いのは分かっていましたよ。


『旦那は分かって無いでしょうが原因は魔力吸引ですけど、進化時に魔力吸引を発動していたせいで周辺一帯から魔力を集めて進化したことが原因っすからね。』


魔力吸引にそんな副次効果があったのか。


そんなスキルを身に着けているとは俺はやはり天才なのか。


「結界が無効化されているってことは今がここから脱出するチャンスだな。」


そろそろここから出ようってときにチャンスが訪れるとはコレが噂に聞く主人公補正と言うヤツか。


『旦那はどう見ても主人公じゃないっすから偶々っすね。』


エロスライムが主人公でも良いじゃないか!


イケメンじゃないとダメなんですか!エロスライムじゃダメなんですか!


「あたしに必要なのは主人公?じゃなくスライムさんですよ。」


俺の心の声を本音察知で察したユズが慰めてくる。


ヤスとは違うなヤスとは。


ユズは俺の癒しだ。


『エロいことしたらダメっすよ。』


「しねぇよ!」




脱出を無事に成功させるためにもう一手打つ。


ユズは俺の頭?の上に乗せている。


俺のたった一人の癒しをこんな汚物マミレの下水道を歩かせるわけにはいかないのだ。


俺ってば紳士ですから。


『汚物マミレの旦那の上に乗せたら意味ないと思うっす。』


「うるさい俺は汚くない!俺の体表にある汚れは常に分解吸収されているからキレイだ!」


「スライムさんは冷たくて気持いいから大丈夫ですよ。」


水枕みたいにヒンヤリ気持良い俺の体温にユズもメロメロだ。


『メロメロって妄想はユズちゃんが可哀相っす。それに一言も汚くないとは言ってないっす。』


可哀相ってなんだよ、可哀相って。


雑巾はどんなにキレイになって雑菌がなくなり臭いがしなくなっても雑巾には変わりないのは分かっているんだ。


ただ雑巾の良いところを見つけてくれるその心が嬉しいんだ。


ってなんで俺は雑巾で例えているんだ。


ヤスのディスりが遂に俺の心を蝕んできたのか!


『旦那の被害妄想っす。オイラは常に旦那のことを思って忠言しているだけっす。』


ディスりが既にデフォルト化している。


やはり俺の癒しはユズだけだ。


ん?


あれ?


ヤスとユズの構図は飴とムチ?


ユズは本音察知のスキルを持っているってことは俺以上に俺の心の内をが分かっているんじゃ。


ヤスと俺の会話に入ってきてないけど本音が分かるならヤスとの会話も察知している?


えっ!


ってことはユズは狙って俺に優しくしているのか。


いやいやそんなはずは・・・。


ユズに意識を向けるとニコっと俺に微笑んでくれる。


そんなことはない。


ユズは村のみんなのためにここまで来た心優しい子だ。


万が一にもないが仮にユズが狙って俺に優しくしていてたとしても俺が優しくされて嬉しいことには変わりない。


つまりそんなことはどうでも良いんだ。


頭に浮上したユズ小悪魔説を振り払いながら脱出のもう一手を撃つ為に下水道を奥へと進む。

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