第9話 異世界にも宗教があった

『だから調子に乗ったらダメだって言ったんす。』


「面目ない。」


動きを止めないように常に移動しながらラットとコウモリをスライムウィップでブチブチ潰していく。


ちょっと魔力量が増えたからって大物ぶって仁王立ちして戦ったのは反省しないと。


やはり大量のラットとコウモリに挟撃されたのはやはり留まって戦ったのが悪かったんだ。


その証拠にあれ以来ラットとコウモリと何度も戦っているが一回も囲まれていない。


「さてこの調子でドンドン行くぜ!」


『調子に乗ってらダメっすよ。」


分かってるよ。


多重魔力吸引と魔力感知を発動しながらラットとコウモリをプチプチ潰し続けた。




多重魔力吸引を発動しながらラットとコウモリを潰し始めて一日がたった。


「さてさてどれくらい魔力量が増えたかな。」


ステーテスゥゥ!!!




ステータス


名前 未設定


種族 エロスライム


魔力量 100/80


ランク G




スキル 


触手 ビジアンヌの寵愛 ヤス 魔力操作 魔力感知 スライムウィップ 多重魔力吸引




「オォォ、魔力量がかなり上がっている。やはり虫と比べたら格段の魔力量だな。」


『虫なんかと比べたらそりゃラットやコウモリの魔力量は多いっすけど、それより多重魔力吸引の効果が反則っす。』


あ、やっぱり。


多重魔力吸引はチート級のスキルだと俺も思うよ。


「そろそろ次のステップに移っても良いと思うんだけどヤスはどう思う。」


『次のステップってなんでやんすか?全く心当たりがないんっすけど。』


「ステータスも上がったし下水道の構造調査をしておこうかと思ってな。」


『下水道から脱出する時のことを考えたら必要っすね。オイラはまた無謀にも格上の魔物を倒して一気にステータスアップを考えてるのかと思ったっす。』


ヤスよ。そういうことは思っても言わないことが人間関係をスムーズにするためには必要なんだぞ。


確かにラノベでは格上の相手と戦って能力が覚醒したりするらしいけど現実にそんなことしてたら命がいくつあっても足りんわ。


「俺のモットーは命を大事にだぞ。」


『え?そ、そうっすか』


ヤスに気を使われた。ディスられるのも嫌だけど、急に気を使われるのも嫌だ。


人の機微は難しいなぁ。




『旦那、そっちはすでに通った道でやんすよ。』


多重魔力吸引で空気中の魔力を吸収しながら途中に出会ったラットやコウモリを倒しながら進んでいるとそんなことをヤスに言われた。


「なんで分かるんだ?」


『旦那にヤスって名前を付けていただいたんでスキル名がヤスに変わりやしたが元々オイラは案内人スキルなんですぜ。道案内なんてお手のもんっす。』


「つまり態々探索しなくてもこの下水道の構造が分かるってことか?」


『街の位置や森の広さなんかは分かるっすけど、建物の構造までは分からないっす。ただ一度通れば道を覚えられるっす。』


なんとヤスはとんでもなく優秀なスキルだった。前世でいうカーナビやグー●ルマップ並に便利やん


ただ俺をディスるだけの呪いのようなスキルではなかったのだ。


ビジアンヌの力の一部なだけあったわ。


「ヤス、お前ってすごいヤツだったんだな。」


『旦那がオイラのことどう思っているのか問いただしたい気分っす。』


「・・・・」


『雄弁は銀沈黙は金っすか。でもこの場合何も言わないと後ろめたいことがあるって言ってるもんっす。オイラ悲しいっす。』




街の外の川へと繋がる場所へやって来た。


出口は鉄格子が嵌っているがスライムの俺なら問題なく隙間を通り向けられる。


魔力感知で周辺の様子を探るとすぐ近くは森になっているようだった。


「あの森の魔物って強いのか?」


『浅層の魔物なら今の旦那でも十分対応できると思うっす。ただ中層以降になると旦那はケチョンケチョンにされるっす。』


ケチョンケチョンって・・・


プランとしては下水道でもう少しステータスを上げた後、森で魔力収集だな。


それから仲間も探さないといけないなぁ。


人族を相手に戦うわけだしどう考えても一人じゃ無理だ。


「ヤス、この世界で俺の仲間になってくれそうな存在っているかな?」


『スライムである旦那には普通の手段じゃ難しいっすね。魔物は基本誰もとっても敵っすから。』


「そうだけど俺ってビジアンヌの寵愛を持ってるし出自を言ったら神の使いみたいなものだろ?この世界に元々存在した者なら味方してくれるんじゃない?」


そうスキルにもバッチリビジアンヌの寵愛って言う間違いようのない物があるんだ。


『あ~、まぁ、そうなんですけど。どうやってそれを伝えるんっすか?』


「え~っと、鑑定してもらう?」


『鑑定スキルなんてホイホイ持っている人はいないっすよ。仮に持っている人がいたとしてその人がよっぽど信頼できる人物じゃないと無理っすよ。だって魔物で最弱のスライムがビジアンヌの寵愛を持っているなんてどう考えても信じてもらえないっす。頭がおかしくなったのか心配されて最悪、不敬だって殺されるかもしれないっす。エセシュウ教の連中なら危機として広めるかもしれないっすけど。』


そうだよなぁ。


神様を信じている人がどれくらいいたか分かんないけど、前世で言えばアリが神の使徒ですって言うようなものか。


それより新しい単語が出てきたな。


「エセシュウ教って何?」


何でそんな名前にしたのか問いただしたい名前だな。


『ああ、それは異世界から侵略してきた人族が広めた宗教っす。エセシュウ神を唯一の神として崇めてビジアンヌ様を邪心扱いしているとんでも宗教っす。しかも天使族を隷属化している中心人物たちっす。』


名前通り碌でもない宗教だな。


天使族ねぇ。やっぱり白い羽根が生えて頭に金のワッカがあるのだろうか。


天使族も気になるけど今は仲間を集める方法を考えないといけない。


ビジアンヌの寵愛という神の使いと証明できるスキルがあるのに俺がスライムであることで無意味になってしまった。


何でビジアンヌ様は俺をスライムに転生させたんだ。このくらい予見できそうなのに。


あ、俺の魂がもっとも適応するものに転生させてくれたんだった。


アレ?


これって俺が悪いの?違うよね?

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