第7話 衝撃の事実!ヤスは〇〇〇だった。

う~ん、何かザラザラする。


おかしい俺のベットは高級マットレスを使っているわけではないけど、こんなにザラザラはしていなかったはず。


『旦那、旦那。大丈夫ですか?』


うるさい。俺は旦那なんて言われるような年ではない。


年は・・・、年は・・・、ワァ眠い。


「もう3時間。」


『旦那さすがに3時間も寝てたらダメでやんす。そもそもスライムに睡眠は必要ないっすよ。」


「やんす」か「っす」か語尾をハッキリさせろよ。


そもそもそのスライムが原因で今だに眠いんだからな。


美女に世界を救ってくれって言われる夢から覚めたと思ったら今度はスライムになった夢だぜ。


下水道で昆虫を潰しては食べるんだぜ。さすがに排泄物を食べることはなかったけど。


そんな夢を見たら碌に眠れるわけない。


『起きてくださいっす。旦那。』


・・・はぁ。


頭に響くこの声はヤスの声だ。


つまり夢ではなかったということだ。


「はぁ、神は俺を見捨てた。」


『何言ってんすか。ビジアンヌ様の寵愛という神の加護以上のものを持つ旦那が神に見捨てられてたらこの世にすべては神に見捨てられてますぜ。』


俺の絶望感を言い表しただけだからそんな真剣に返されても困るんだが。


それよりも新しい語尾「ぜ」が増えてますます統一感がなくなっていることが気になる。


『それにしてもビジアンヌ様の寵愛を持っているとは言え旦那は半端ないっす。スキルをバンバン獲得するだけでなく魔力量を増やすために空気中の魔力を吸収するなんて聞いたことないっす。』


「いや~、それほでもあるかな。自分で言うのもなんだけどさすが神に選ばれただけはあるってことかな。」


ずっとヤスにディスられていたので素直な賞賛で気分が良いな。ヤスが凄く良いやつに思えてします。


これはあれかタバコ吸ってる人が携帯灰皿を持っていたら副流煙で迷惑なはずなのにちゃんとした人に見えたり、角みたいなリーゼントヘアの不良がゴミを拾っていたら良い人に見えたり、普段はス●夫との●太を奴隷のように扱っているジャ●アンが映画で仲間の為に行動していると良い人に見えたり、訪問販売で高額商品を売り家てくる営業マンがちょっと手伝いしてくれると最高の営業マンに見えたりするあの現状化!


つまりヤスは偶に俺を持ち上げることで自分を良い人に見せかけて俺を騙そうとしているわけだな。


フッ、ヤスよ、お前の手の内はすでに暴いた!


『それで調子に乗って一人で突っ走って連携してくる格下にやられるっすね。』


キッチリ落としてきたなヤス。小難しい心理学はコレッポッチも使ってないな。


「ヤスって一応俺のスキルだよな?」


『何当たり前のこと言ってんすか。旦那のステータスのスキル欄にも載ってるじゃないっすか。』


「そうなんだけどヤスって要所要所で俺のことをディスるからさぁ~。俺のスキルって気がしないんだよなぁ~。」


『ううう、旦那がそんなことを思っていた何てオイラ悲しいっす。涙が流せないから分からないかもしれないっすけど、涙な流れすぎて前が見えないっす。』


涙が流せないのに涙で前が見えないっていったいどんな状態なんだよ。大げさに言い過ぎて全くヤスの悲しさとやらがこっちまで伝わってこない。


それにスキルのヤスに視界なんて存在するのか。涙云々の前に元から前なんて見えてないだろ。


『分かってるっす。この悲しみを旦那には伝わらないことは。でもこれだけは分かってほしいっす。オイラはビジアンヌ様が旦那に授けた力の一部っす。絶対に旦那を裏切るようなことはないっす。』


スキルが俺を裏切るって、それってもう呪いだよな?


『ううう、旦那信じてほしいっす。』


あれ、ヤスの機嫌を取らないとずっと頭にこの声が響きつづけるのか。


冗談のつもりだったけど、これってほとんと呪いに近いよな。


『うう、旦那。何とか言ってほしいっす。』


俺が悪いのか。


いや、悪くても悪くなくてもヤスの機嫌を直さないと永遠とヤスの泣き声が頭の中に響くという現実は変わらない。


はぁ、俺が機嫌を取るしかないと言うか俺しか機嫌をとれない。


「分かった、分かった。俺が悪かったよ。」


『誠意が感じられないっす。やっぱり旦那はオイラのことなんてどうでもいいんす。』


うわ、めんどくさ。何だよ誠意って俺はお客様センターのクレーム対応係じゃないんだぞ。


俺にどうしろってんだ。


「ホント、ゴメンって。ヤスが俺を裏切らないのは分かったよ。ただもうちょっと俺を立ててくれると嬉しいかなって思っただけなんだ。ホントだぞ。」


『苦言を呈するのは旦那のためっす。旦那はスライムっすよ。スライムは魔物っす。人は魔物を見つけたら悪即斬っす。優しく褒めるなんて甘いこと言ってたら旦那が死んじゃうっす。厳しくしているのは旦那のためっす。』


な、なんかゴメン。ヤスがそんなに俺のことを考えてくれていたとは気が付かなかった。


『ううう、でも旦那がそんなことを言うってことは俺のことまだ信じてくれないっすか。』


ちょっと待て、まだ機嫌直ってなかったのか。


「信じてる、信じてるぞ。」


『ホントっすか?』


「ああ、ホントだ。信じてるぞ。なんと言っても俺のスキルでビジアンヌ様の力の一部なんだろ。」


『信じてるって証がほしいっす。』


なんて面倒なスキルなんだ。


しかし、機嫌が直ってくれないと何時までも頭にヤスの言葉が響く。


「証って何だ。」


『オイラとある約束をしてほしいっす。』


「約束?」


『ついでで良いからオイラ用の身体がほしいっす。』


はぁ?身体?


「ヤス用の身体ってお前スキルだろ?どうするってんだよ。」


『何言ってんすか。旦那が名前を付けたから変な自我が目覚めて身体がほしくなったんす。それに旦那ならそのうちスキルに身体を与える都合の良いスキルを覚えるはずっす。』


俺が名前を付けたせいで身体がほしくなったと。


ついでで良いのならこのまま頭にヤスの声が響き続けるより良いだろ。


「分かったよ。世界の環境を直すついでに探してやるよ。」


『やったっす。可愛いい身体をお願いっす。』


「可愛い身体ってお前女なのか?」


『当たり前っす。』


当たり前なのか。


女の子にヤスなんて名前付けちゃったぞ。

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