第18話 なに言ってんだこいつ????  頭大丈夫か????????

「でだ。一緒に来るからには、最低限のことは伝えておこうと思う」


 再びマナカを抱えた俺は、夜空を跳びまわりながら、夜な夜な俺が何をやっているかを説明しはじめた。


 一応念のために言っておくが、もちろん不埒なことはしていないからな?


「ざっくりいうと、俺は《想念獣》を討滅する退魔士、《正義の味方》ってやつだ」


「そーめん銃? 流しそうめんでバキューン! みたいな?」


 ……なに言ってんだこいつ????

 頭大丈夫か????????


「《想念獣》ってのは《想念》――人の抱く強い想い、特に妬み嫉みといった負の想いが生み出した異形の化け物のことだ。マナカが昨日襲われた――」


「変態真っ黒人間! 許すまじ!」


「そう、あれだ、あれが《想念獣》。まぁ人型は実は珍しいんだけどな」


「いきなりレアキャラに遭遇したわけですな、なるほど」


 ……反応がいちいち軽いんだけど、ちゃんと分かってんのかこいつ?

 友達と話している時もこんな感じだった気がしなくもないが……色々不安だ。


「人の想いってのはさ。何かを為したり、誰かを助けたり、世界を良い方向へと進ませるなくてはならない大切なものなんだ。でもそれと裏返しで悪意や嫉妬、羨望といった強烈な負の感情にもなりうるものだ」


「ふむふむ、それはなんとなくわかるかも」


「そんな負の感情たる《想念》が、人という器では抑えきれないほどに膨れ上がり、時として実体ある存在となって顕現して悪さをするのが《想念獣》だ」


「おおっ、話がつながりました! そーめんではなく《想念》!」


「そして想いという名の欲望そのままに、人に仇なすそいつらを、俺は退治してまわってるってわけだ」


「あ、だから《正義の味方》なんだね」


 握った右手で開いた左手をポンと叩いてガッテンするマナカ。

 無駄に可愛らしい。


「そういうことだ。昔話に出てくる物の怪や妖怪、アヤカシといったものは、だいたいがこの《想念獣》だと言われている」


「はっ!? 妖怪……! アヤカシ……! おんみょうじ、陰陽師ですな? 安倍晴明あべのせいめい様ですな!?」


 な、なにそのガツガツな喰いつき方?

 しかも「様」って……。


 ああ、そういや少し前に、イケメン安倍晴明がBL的な感じで流行ったことがあったっけか。

 マナカもイケメン安倍晴明に魅せられた口か……。


 俺は逆にちょっと嫌な思い出があるので、さらっと流そう。


「まぁざっくり言うとそんな感じかな?」


「すごい! 憧れの晴明様が実は同じクラスだったなんて!」


「いや、安倍晴明ではないからな?」


「一緒一緒! もーまんたい! ってことはクロちゃんはユウトくんの式神ってこと!? キューキューニョリツライ!? 完全に繋がっちゃった的な!? はふぅ……リアル晴明様、素敵……」


「お前ほんとに頭大丈夫か……っ!?」


 学園のアイドルの仮面の裏に隠されたマナカのヤバイ実態を見てしまい、不安が右肩上がりで大きくなる俺だった。

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