第17話 ごめんなさい、ほんの出来心で……
《想念》とは、より強く、より早く、より高くありたい――そうやって手の届かないものに
これはそんな《想念》であるクロの力を使って身体強化を行っての、特大の大ジャンプだ。
「わわっ! ほわーーーん!」
「あまり喋るなよ。舌を噛むぞ」
「う、うん、わかった。っていうか飛んでるよふぇええええ!」
「だから喋るなって言ってるだろうが」
ビルの窓枠、軒、屋上、看板の上などを足場に次々と跳びまわり、どんどんと高度を上げていく。
空を飛ぶ《想念獣》はあまりいないため、マナカの安全を考慮するなら高いところからの方が対処しやすいという判断だ。
そうやって俺がマナカを片手で抱きかかえたまま跳びまわっていると、
「あの……えっと……」
急にマナカが腕の中でもじもじしはじめた。
「ユウトくん、あのですね?」
頬を赤く染めながら、上目づかいで見上げてくる。
「ん?」
「さっきからその、おっぱいをですね、鷲掴みされてる気がしているのですが……」
「ん……?」
言われてい気が付いた。
マナカが落ちないようにと片手でしっかり抱きかかえていたところ、ちょうどいいでっぱりが手のひらのあたりにあって――つまりマナカのおっぱいがあって――ガッツリと掴んでしまっていたのだった。
「鷲掴みされてる気がしているのですが……」
恥ずかしいのだろう、小さな声で繰り返すマナカ。
だが、これは誓って故意ではなかった。
本当の本当に無意識の産物であり、たまたまの偶然。
お巡りさんや検事さんには信じてもらえないかもしれないが、ちょうどいい具合にでっぱりがあったから、ナチュラルに掴んだだけなのだ。
「ふむ……」
試しに揉み揉みしてみると、柔らかくも弾力のある不思議な感覚が手のひらに返ってきた。
「不可抗力だ。他意はない」
もみもみ、もみもみ。
「そんなこと言いながらさらっと揉みしだいてるよぉ。セクハラする《正義の味方》さんだよぉ」
「失敬な。ちょうど胸に手が当たってるんだ。抱きかかえている以上、これは仕方のないことだ。強いて言うならば、役得というやつだ」
うむ、実にやわらかい。
さすが学園のアイドル、いいものを持っているな。
「ねぇユウト」
刹那、クロの放つ冷たい声がした。
「ねぇユウト、ボクは君をそんな風に育てた覚えはないんだけれど」
刺々しい口調と、有無を言わさぬ強烈なプレッシャー。
「女の子ってのはさ、どれだけ大事に扱っても、大事に扱いすぎることはないんだよ。わかるよね?」
「あ、はい……」
「それをなに? 胸を掴んで揉む、だって? 人間にはやっちゃいけないことと、絶対にやっちゃいけないことがあるって、何度も教えたよね?」
「えっと、はい……」
「オッケー。ならユウトが今しなくちゃいけないこと、わかるよね? 今なら後で小一時間正座でお説教するだけで勘弁してあげるから」
俺はいったんマナカをおろすと、
「ごめんなさい、ほんの出来心でした。絶対にもうしませんのでどうか許してください」
しっかりと頭を下げて、心からのごめんなさいをしたのだった。
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