第8話 爆弾発言
マナカは俺を追い詰めていたぶって楽しむ、真性ドSのイケナイ女王様なのか!?
間違いない、それなら全部この行動につじつまがあう……!
くっ、やはりこの女、可愛い顏してなんたる悪女か――!
俺が
――キーンコーンカーンコン――
救いの鐘が高らかに鳴り響いた。
「ほら、本鈴のチャイムが鳴ったよ。ホームルームが始まっちゃう」
「ううー、またそうやって誤魔化す……」
そうさ、俺たちは高校1年生。
こうして学校が始まってしまえば、
そうだ、これでいい。
選ぶべきは待ちの一手。
俺が別段、何かをしなくとも、学校という学生にとっては逃れられない絶対的なシステムが、否が応にも全てを有耶無耶にしてくれるのだから。
「むー……」
チャイムが鳴ったことで、しぶしぶといった表情で自分の席へと戻るマナカ。
その後。
1、2時間目の休み時間は、友達に捕まって質問攻めにあうマナカをよそに教室から退避し。
3時間目の休み時間は他の生徒同様に数学の抜き打ちテスト勉強。
そして迎えた昼休み。
終礼と同時に学食に逃げこもうとした俺の行く手に、立ちふさがった生徒がいた。
――もちろん
これはもう席の関係で仕方ない。
俺は窓際、マナカは廊下側で入口のすぐ傍だからな。
もちろん授業終わりのあいさつを手抜きして、いの一番に動き出せば逃げるのはたやすかった。
しかし数学の高峰先生は、熱心かつ分かりやすい授業に加え、非常に生徒思いという大変素晴らしい方なので、終業の礼を軽んじることは俺のプライドが許さなかったのだ。
「えーと、なにかな? 込む前に学食に行きたいんだけど」
そして相も変わらず、貫き通すは知らぬ存ぜずサブマリン作戦。
正直マナカのような可愛い女の子を無視してしまうのは心苦しくはあるのだが、日陰に生きるものとして、目立つことだけはそれにもまして避けなければならないのだった。
なにより学食が込むのは、これは揺るがしようのない事実なわけで。
そう。
俺の昼飯事情に関与できないマナカは、なにをどうしてもここは折れるしかないのである。
ふっ、計算通り。
悪いが俺の作戦勝ちだ。
「……わかったよ。何がなんでも知らんぷりするつもりだね……うん、そっちがそういうつもりなら……わたしにだって考えがあるんだもん」
マナカが何かを決意したように勢いよく顔を上げた。
グッと握った両の拳に、俺はいいようのない危機感を覚えた。
だめだ、四の五の言ってはいられない。
本能が警鐘を鳴らす。
とにもかくにも可及的速やかにここから退散するべきだと――。
しかし、ほんのわずか、俺が行動に移そうするより先に、
「鶴木辺くんにお弁当を作ってきたんだ。一緒に食・べ・よ♪」
これ以上ない極上の笑顔でもって、マナカは爆弾発言をぶっ放したのだった。
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