　風呂から上がって歯磨きをして部屋に戻ると、男が机で爪切りをしていた。

　隣に座って、横からその仕草を眺める。

　手の指、足の指、全ての爪を切り揃えてから、もう一度手の爪を切る。

　深爪気味になるほど短く切ってから、今度はその全ての指に、丁寧にヤスリをかけていく。

　一本一本、丁寧に丁寧に、指先がすっかりつるつるになるほどヤスリをかけて、満足したのか、確かめるようにこちらにその指先を寄せるから、そのつるつるした人差し指と中指を撫でてやる。

　すり寄ってきた隣の身体から、自分と同じ石鹸の匂いがすると、なんだかたまらない気持ちになる。

　爪切りを片づけて、ティッシュペーパーの在り処を探して、ベッドの頭もとに放り投げる。

　電気を消して、今着たばかりのシャツに手をかけたら、いざ。

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