第13話;ネズミの正体(笛吹き男)
馬車の中で私は、盗賊を討伐した後に寄った、小さな町の話をした
冒険者ギルドの登録を目指いていたけど、人口が少ないためかその町にはギルドは無かった
素通りしようかとも思ったんだけど、馬が大分疲れているようだったから
魔法で治してもよかったけど、一晩だけのつもりで寄ることにした
その街には防壁は無く、堀のみが町の周りに堀ってあり四方に吊り橋がかけられていて、高見櫓(たかみやくら)は設置してあったわ、魔物用かなって思った
堀は近くにある大き目の川から水を引いていたので堀に魚の影が見えていて、釣り場らしきものもあったけど、人影は無くて
橋には一応見張り役のような人がいたんだけどやる気があるようには見えなかったわね、特に何もなく渡ることができたけど
建物は中世ヨーロッパ風の建物が建っていて、小さい町だが綺麗に整えられているようだった
「なんか暗いな」
町の風韻気は暗く人気(ひとけ)が無かった
少ない出店(でみせ)の暇そうな主人に聞いたが病が流行っているそうで、早く出ていった方がいいと言われたけど、
馬屋付きの宿屋を紹介してもらってそこに向かった
チュー
「わっ・・・何?・・・なんだねずみか・・・」
家のネズミとの格闘を思い出していた、罠を仕掛けることを知るまで追いかけまわしていたなぁ
そんなことを思い出しながら回りを見ると、目に見える範囲だけでもネズミがかなりいることが分かった
「気持ち悪いなぁ・・・ねずみって何かの病気運ぶんじゃなかったっけ・・・・たしか・・・ペスト!」
(ペスト菌による感染症 。症状は、発熱、脱力感、頭痛などがある 。感染して1-7日後に発症する 。感染者の皮膚が内出血して紫黒色になるので黒死病とも呼ばれる。現代は有効な感染防止対策がなされ流行は減ったが、近年でもペストの感染は続いている。)
宿屋に向かっていると広場に差し掛かった、そこには町中の殆どがいるんじゃないか、というくらい人に溢れていた
「病気が流行ってるっていうのに集まるかなぁ・・・そんな知識もないのかな・・・ん?ピエロ?」
広場の噴水の縁に背の高いピエロの格好をした男が居た
縦じまのカラフルな衣装に三角帽子、手には縦笛
「いやいやいや・・・既視感があるよあの衣装・・・」
『わたくしは今まで色んな町を救ってきた魔術師です、金貨50枚支払っていただければハメールインの町を救ってあげましょう』
「名前も微妙に違うけど町の名前も似てるじゃん」
チュー
「ん?ネズミ・・・んん?えー・・・ちょっと待って」
私は独り言を言いながら頭を抱えた
そのネズミからは人間の気配がしたからだった
広場を見ると、具合の悪そうな人がいたが、気配は病気では無い感じがした
「呪い・・・・?魔法も呪術もある世界だけどさ・・・ちょっとあの童話かと勘違いしたじゃない」
<ハーメルンの笛吹き男>
ハーメルンの町にはネズミが大繁殖し、人々を悩ませていた。ある日、町に笛を持ち、色とりどりの布で作った衣装を着た男 が現れ、報酬をくれるなら町を荒らし回るネズミを退治してみせると持ちかけた。ハーメルンの人々は男に報酬を約束した。男が笛を吹くと、町じゅうのネズミが男のところに集まってきた。男はそのままヴェーザー川に歩いてゆき、ネズミを残らず溺死させた。しかしネズミ退治が済むと、ハーメルンの人々は笛吹き男との約束を破り、報酬を払わなかった。
約束を破られ怒った笛吹き男は「お前たちの大切なものを代わりにいただこう」と捨て台詞を吐きいったんハーメルンの街から姿を消したが、6月26日の朝(一説によれば昼間)に再び現れた。住民が教会にいる間に、笛吹き男が笛を鳴らしながら通りを歩いていくと、家から子供たちが出てきて男のあとをついていった。130人の少年少女たちは笛吹き男の後に続いて町の外に出てゆき、市外の山腹にある洞穴の中に入っていった。そして穴は内側から岩で塞がれ、笛吹き男も子供たちも、二度と戻ってこなかった。
<Wikipedia>
「金貨50枚(500万円位)か、個人で払うと高額だけど、町でってなると払えない額じゃぁないよね」
広場を観察していると、誰かが
『隣国の同じようにネズミにより病気で苦しんでいた町を救った魔術師様ではありませんか』
旅人の姿をした男が叫んだ
「うわっ声に催眠術の魔法を載せてるよ・・・上手いな・・・感心してる場合じゃないか」
うさん臭さ満点の旅装束の男、明らかに仲間だということが分かった
皆、・・・是非お願いすべきだ・・・なんて叫んでる人が多い
「うーん何が目的だろう・・・お金・・・だけじゃない気がする、ちょっと泳がすかな」
広場には、町の世話役系の人は居ないらしく、すぐ結論は出せないので依頼するかはどうかは保留になったようだ
改めて1週間後に話し合いを設けることになったと宿屋の食堂で聞いた
「しばらく滞在するかなぁ・・・とにかく情報収集しなくちゃ」
それから一週間は、町の人にいろいろ聞いて回り、町の周りや、近くの川、森の奥とかいろいと調査した
認識阻害のアイテムを装着しているので、怪しまれることは無かった
結論・・・・やつらが最悪な連中ということが分かった・・・リーダはピエロの笛吹き男だった
罠を仕掛けているやつらに対し、私がさらに罠を仕掛けて回った
会談当日、町長は駆除をお願いすることに決めたそうだ、お金は後払い、下水道整備の予算から出す話をしていた、工事は2年程遅れるが命には代えられないとされた
・・・その話をどうやって聞いたかと言うと・・・
本当のハツカネズミを使役してそのネズミを介して盗み聞きしたからだった
ねずみは町を出る時に使役は解除している、スキマに潜みやすいGの使役も考えたが、やはり生理的にいやだった、他にも動物や虫はいるがネズミ関連だからネズミにした
ハツカネズミはちょっと見た目は可愛い気がするが、害獣だ
病気はこぶし(食中毒や感染症)、家荒らすし(家具や柱をかじる)、この世界に電線は無いけど電線かじるし、電線かじられると火事の可能性でるし、怖いのよね・・・家で見かけたり、糞があったら駆除しましょう
駆除はひとけの無くなった夜中に行われた
ピエロが笛を吹くと、町じゅうのネズミがピエロのところに集まってきた。
ピエロはそのまま川に歩いて行き、川の上の崖の上からネズミを残らず川に落下させた。
町長始め、上役の数人がそれを確認して町にもどった
「ありがとうございました、これで病気も落ち着くでしょう」
「私はいただける者をいただければ」
「大変です」
部屋に町長の部下が駆け込んできた
「魔術師様に支払う予定のお金がありません」
「何?金庫に入れてあっただろう?」
「もぬけの殻です」
ちゃんと準備してあったお金が忽然と消えたようだった
「どうゆうことですかな」
魔術師はそれまでにこにこ笑っていたのが、鬼の形相に変わっていた
「奥まで探したのか?」
「はい・・・無くなっております」
「本当に準備してあったのですかな」
「え?」
「踏み倒すつもりだったのではないですかな」
「何を・・・ちゃんと準備しておりました」
ぶわっと魔素がピエロの周りを覆い
「町長がお金を踏み倒した!約束を保護にした代償をはらってもらおう、お前たちの大切なものを代わりにいただこう」
その言葉は魔素に乗って町中の人に届いた、そしてピエロはその場から消えた
魔素にあてられた町長らは身動きがとれないでいた、体が動くようになってから
金庫を再度確認したが、金貨の入った袋は無くなっていた
唖然としている町長と部下達だった
町の人たちから町長は叱責されていた、町役場には人々が押し寄せていた
町長らは頭を抱えた、ピエロの足取りはつかめていない
改めてお金を払うという交渉も出来ないで居た
「私たちの大切なものとはなんだろう」
人々は恐怖した、大魔術師が自分をないがしろにした町を破壊した話は昔話にあるからだった
数日後の夜中、町は静まり返っていた、酒場も歓楽街も皆、寝静まっていた
町に笛の音が響いている、家の玄関の扉が開いた
そこから5歳から10歳くらいの子供たちが笛の音に引き寄せられる様に大きな橋のそばに集まってきた
橋にはあのピエロがいた、ピエロは笛を吹きながら森を歩き、子供たちを引き連れて洞窟の中に消えていった
その様子を屋根の上から見ているものが居た
広場で『隣国の同じようにネズミにより病気で苦しんでいた町を救った魔術師様ではありませんか』
と叫んだ男だ
「ひっひっひっ・・・何時見ても楽しいなぁ・・・・明日町民の顔がどんなに悲壮な顔になるのか楽しみだ・・・あいつと組んで正解だぜ」
町に睡眠の魔法を展開したのもこの男だった
人が悲しむ姿を見るのが好きな・・・狂人だ
男は宿屋で朝を迎えた
「はー・・・すっきりした朝だぜ、どれどれ皆の悲壮感漂う姿を拝みに行くか」
そういって宿屋をでた・・・・
そこで見た人々の姿に呆然としたのはその男の方だった
活気のある市場、広場を駆け回る子供の姿、なぜかやたら多い軍服を着た男たちの姿
笑い声と、明るさに包まれた天気の良い気持ちのいい朝だった
「?どういうことだ・・・あの娘は昨日あの列に居たよな・・・なぜ」
呆然と広場を見る男
「あの軍服・・まさか」
男は急いで洞窟に向かった
「帰ってきていない」
洞窟内にある大量の動物用ゲージ、そこには何も居なかった
「人間に戻したからね」
そう言って私は背後から男に近づいた
「だれだ!・・・子供?と町長!」
「だれが子供だ!私は成人している大人だ!小さいからってばかにするな、ちゃんと16歳だ」
「そうだったのかてっきり12歳くらいかと」
「町長まで・・・・すぅん・・身長160はあるのに・・・この世界の人がでかすぎるのよ!」
「町長・・なんで」
「この子が教えてくれてね、君らの作戦は失敗だよ、町の呪いはすべて彼女が解除してくれた、寝たふりはしんどかったよ、酔っ払いや言うことを聞いてくれない連中は彼女が眠らせてくれていたがね」
「子供たちも家から出て橋のほうまでは本当に子どもたちだったよ、森に向かったのは幻影だけどね」
「なっな・・何者だ」
「冒険者になる予定の魔法剣士(自分命名)よ」
「そんなジョブ知らない、魔術師はどこに行ったんだ」
「ダンジョンの20階層」
「へっ?」
「移転門がほら後ろに」
男がゆっくりと後ろを見ると真っ暗な空間が
「ひっ」
低い悲鳴が聞こえたと思ったら移転門から手が出てきた、その手は男をつかむとそのまま移転門の中に男を引き入れて行った、男は消えた
「この洞窟がダンジョンって知らなかったみたいですね、入り口は普通の洞窟に見えますもんね」
「ダンジョンの帰還魔法陣を逆に利用するとは」
「協力していただいた冒険者の方々に奮発してあげてください」
「町長が助けを隣町の冒険者ギルドに出していたのはよかったです、来てくれた人たちがAランクで、このダンジョンを25階層まで制覇していたとは偶然とはいえ助かりましたね」
実は私も、認識疎外を使えば一晩で20階層までいけないこともなかったけど良かった
このダンジョンの20階層はセーフティゾーンになっていた
魔物が居ないのはこの階層だけだ
19階層21階層はランクCからBの魔物が、かなりの数沸いていた、Aランク6人パーティ以上ではないとダンジョンから出ることはできないだろう、閉じ込めるにはちょうど良かった、20階層を制覇した人と一緒なら数人なら一緒に移転できる、その機能を利用したのだった
「魔術師たちのレベルだと1体倒すのも困難でしょう、魔術師はCランクくらいでしょうか」
「それくらいだろう」
移転門から冒険者が現れた
「カーランド殿、今回は協力ありがとうございました」
町長が冒険者にお礼をする
「そこの嬢ちゃんの案だろう?大したもんだ、こんなこと良く思いついたな」
「普通に町の監獄だと逃げられてしまうので」
「そうだろうな、普通の人間の檻しかないからなこの町は、魔術師、それも無詠唱のできる連中を拘束するのは無理だろう」
「大きい町なら魔術師用の檻もありますがね、この町はありませんので」
「領主様の私兵の方々が来てくれるんでしょ?よかったですね」
情報はとても大事だ、
この洞窟がダンジョンで20階層にセーフティゾーンがあるのも
【近隣の国で訓練中の兵士1000人が行方不明なことも】
兵士が行方不明になった後、ネズミの発生を解決した町がある話は本当で、その街ではそのあと100人ほどの子供が行方不明、数日後数人の悲惨な死体が見つかり、その後も奴隷商で見たことのある子供がいたという話も新聞、旅行者、商人、冒険者から情報を得ていた
「ネズミの動きがまるで訓練された兵士のようだと思ったのよね・・・」
「解呪の魔法なんて嬢ちゃんは聖職者か?」
「いえ、没落貴族の娘ですよ、魔法は独学です」
そういって見た、冒険者カーランドはじっと私を見た
認識阻害が発動しているはずだが、顔の傷が見えたのだろう
「虐待されていたのか?」
ぼそっと小さい声で言ってきた・・・
「・・・まあ・・・そんなこともあるんじゃないですか」
へへっと笑って見せた
「・・・・まあ、がんばれ」
そういって頭をなでてきた
子供じゃないと言いたかったが、優しさが伝わってきたので黙った
そうやってピエロ詐欺事件は解決した
魔術師達は領主の私兵たちによって王都の刑務所に連行された
連行されたのはピエロの魔術師、睡眠魔法使った男、崖の下でネズミの回収をしようとしていた男三人、洞窟で待機していた男二人合計7人、後から奴隷商が摘発されてこの事件で合計20人ばかりが逮捕された
男たちは魔術師と睡眠魔法使った男は処刑、余罪がゴロゴロ出てきたらしい、他は鉱山奴隷として一生働くことになったそうだ、大きな事件だったので新聞に大きく乗っていた
そしてネズミの正体は・・・
川の下でネズミの回収をしようとしていた仲間を昏倒させ、気絶していたネズミを川岸に運び、土魔法で簡易に作ったテントにネズミを並べて解呪、人間に戻った兵士が横たわっていた
「くっさっ」
ドブのにおいがした
「行方不明から3か月・・・風呂なんて入って無いだろうな・・お風呂作ろう」
洗浄魔法で一人洗ってみたが、かなりの魔力持っていかれたので、魔法は無理だった
結構大変だった、お風呂を作っていると目覚めた兵士達に感謝されるのはいいのだが
「臭い~とりあえずお風呂入って!」
お風呂は交代で入ってもらい服は石鹸渡して自分たちで洗ってもらった
乾くまで皆マッパでいるわけにいかないので、布を渡して、それを腰に巻いてもらった
食事も自分たちで料理はしてもらった、鍋と食器、食材は渡した・・・
1000人・・・多いわ、さすが訓練された兵士の皆さんは、役割分担もすぐ決めて、滞りなく数日過ごすことができた
国に帰るため、町長と会談、物資の調達と荷馬車の確保を進めるためこの日代表者数名が朝から町に来ていたのだった
町の人からも、兵士の皆さんからも感謝され、子供たちにもなつかれ楽しい一日を過ごした
次の日の早朝、私はこっそりと町を出た
後から・・・
「「名前・・名乗って(聞いて)無い」」
といううことに気づいた
「まっいっか・・・」
冒険者登録をするためにドンファラーの町に向かった
「名乗らなかったのですか?」
そうフェルディナンドが言った
「解決したことに皆有頂天だったし、変な方向に認識疎外機能が発揮されたらしくて、聞かれませんでした」
「ハメールインの町ですか・・・犯人はあなただったんですね」
「えっ・・・私何かやらしました?」
「高位結界が発動していて、城壁を作る計画をされてたらしいですが、必要無くなったと国に申請撤回書が届いてましたね」
「あーまずかったですかね・・・たぶん何もしなくても1000年は持つと思うのですが、聖結界だとほかの種族の人で町に入れない人が出てくるので、闇属性やほかの属性も混ぜて結界を作っておいたのですが」
「完璧すぎて、聖域扱いされてますよ、大きな教会に、冒険者ギルドもできるそうですよ」
「大きめにしといてよかったですね」
にこにこ笑う私にあきれ顔のフェルディナンド
「まだ何かしていること無いですか?神獣を2体の生み出してますよね」
「え?_あれはパートナーになった人たちの」
「そんなわけありません、あなたが関わったからでしょう?」
(あたり)
え~何もしてないよ
「女神様にも言われました私のせいみたいです」
「まだ何かしていそうですね」
「・・・・えっとどうかな・・・」
「してますね」
「何をしでかしたんですか・・・」
「もうそんなにしてないよ・・・たぶん」
金貨はやはり盗まれていて、洞窟で見つかっている、催眠魔法で町長の部下を操っていたようだった
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