第11話;それぞれのその後(侯爵家兄弟と教会)

(フェルディナンド王子殿下視点)

ファティマ(アイラ)が『転移魔石』で消えた後

その場は凍り付いていた、私も顔が蒼白だったと宰相補佐に言われたよ


「ファティマ…、ファティマ…、ファティマ…!」

壊れたように顔を覆い泣く、元伯爵(ファティマの父)の声が部屋に響いていた。


「かなり魔法に長けた子のようだ、探すのは困難だろう。捜索願はどうされますか」

憲兵団支部長のカイザックが発した言葉で全員が思考を始めた


「捜索はこちらでするので捜索願は出さない」

「侯爵家の方々の捜索網の方が我々よりも迅速でしょう。かしこまりました」

「ロバート、泣いている暇は無いぞ、後始末しっかりしろ」

「兄上・・・」


ドメイン婦人は

「違う違う私は悪くない、何もかも持っていたあの子が悪いのよ・・・」

ぶつぶつ言っていたが

憲兵に腕をつかまれ手錠をかけられた。

少し暴れたが、剣をつきつけられおとなしくなり、護送車に乗せられる。

娘たち二人と、メイドは事情聴取のため護送車とは別の車に乗せられ連れて行かれた。


侯爵家の従者たちが伯爵家の管理を行うことになった

「よかった、金貨はそこそこ持ってったみたいだ、曾祖父母の冒険者時代の装備も無い」

宝物庫を確認してロバート前伯爵は安堵した


「あの最後のSSランク冒険者の二人か・・・」

「状態維持の魔法がこの宝物庫にされているので現役の装備なんです兄上」

「私も宝物庫に入れていただいてよかったのか?」

私は侯爵家の兄弟に聞いた


「かまいませんよフェルディナンド王子殿下、此処から出せるのは仮の領主になった私しかいませんから」

そう次男のジョイル氏が言った


「兄上、あの装備ならAランクの魔物が襲ってきても無傷ですよ」

「何がなくなってる?」

「お尻が痛くならないSランクの馬の鞍とSランクのアイテムバック、無限水筒、聖剣と魔剣、Sランク竜の皮の防具、Sランク認識阻害防御マント、Sランク飛行補助ブーツ、Sランク攻撃力50%UPグローブ、Sランク防御バンダナ、Sランク防毒・認識阻害レッグウォーマー、金貨300枚程」

書類を見ながらロバート氏が言った


「伝説級のアイテムばっかりだな・・・」

「金額にするとたぶん侯爵家より資産があることになると思いますよ。しかし・・・装備できるのは魔法が全属性持ちで、全てAランク以上の素質のある者のみなので・・・宝の持ち腐れ状態でした」

「それはあの娘(むすめ)がその資格を有しているということか」

「・・・・・そう・・・ですね」

ロバート氏は、何も知らなかったことを恥じているように見えた


「あの子のジョブが楽しみだな」

「ぐずっ・・・」

「泣くなばか者・・・全力をあげて見つけてやる」

疎遠だったのが嘘のような、仲の良い兄弟だなぁと思った

無性に兄に会いたい





ジョイル氏達の懸命の捜索にもかかわらずファティマは見つからなかった

名前と髪の色など変えているとは思わなかったのだろう

伝説級の装備を持っていったとはいえ、まさか冒険者になって魔物を狩っているとも


私も侯爵家とは別にファティマを探していた

そんな時私の元に届いたのが新人冒険者の話だった

情報は懇意にいていた元傭兵からの冒険者になったと言う報告の手紙からだった


戦争も殆ど無く、傭兵では食っていけないので冒険者になって魔物を狩ることにした、

冒険者試験で面白い女の子に会った、殿下の好みそうな可愛い娘だったと

ちゃかすように書いてあった


彼と会ったのは留学中、学園の剣術の授業に呼ばれた傭兵団の一員だった

まじめで堅物な彼となぜか馬が合い、期間は一ヶ月だったが友人として過ごさせてもらった

病気で亡くなった奥さんのことをまだ思っている純情さにも魅かれた

その時に王族なのに婚約者の居ない私に、好みの女性の話を他の傭兵団の連中に聞かれてたので冗談でいろいろ語って居たのを聞いていたんだろう、好みの娘 なんてそういう話はあまりしないようなやつがそう書いていた


ピンと来たんだ

ああ・・・ファティマだとそう思った


王太子(あに)と 王(ちち)に見つかったかもしれない話をした

だが、なかなか王都を出る許可が下りなかった

その町に行く街道に盗賊出没の情報があり、実際被害が出ていたからだ

騎士団が討伐に乗り出したがなかなか討伐できないと

だが、しばらくして盗賊団のアジとが発見されて、だが誰も居なかったと

アジとの近くに新しい墓標らしきものがあり掘り起こした所、盗賊の浄化された遺体が埋められていた、さらにアンデット化していた形跡があったと


・・・・ファティマ、君が討伐していたとは

元Aランク冒険者も居たのに・・・







(ファティマ視点)

「盗賊を殺してもなんとも思いませんでした、魔物を殺したのと同じ感覚でした、殺したことよりその感情に唖然となりしばらくぼーとしてたらアンデット化して再度襲ってきたので浄化魔法を・・・」

「それを知って君は聖女では、と思っていたから違うと確信したんだ、聖女だったら教会に連れて行かれてしまう、そう恐怖していたからね、浄化魔法は魔術師なら出来る者も居るからね、聖女は何かを殺めることすら出来ないらしい、攻撃魔法が使えないし、基本非力だ」

「・・・殿下・・・こういう行為をしながらですと話が入ってきません・・・・」

「じゃぁ続きは・・・後で話そう」

「そうじゃなくて・・・・っ」




ちゅんちゅん

あーいつの間にか朝だ・・・いつの間にか寝てしまっていた

「おはよう奥さん」

「!?まだ奥さんでは・・・・おはようございます/////・・・」

「同じことだよ、結婚式は3ヵ月後に王都の大聖堂で各国要人を呼んで行うことになる」

「殿下・・・」

「ルディ・・・そう呼んでって言ったでしょう」

めまいがするくらいの美形スマイルでフェルディナンドが言った

私たちは素っ裸のままベットの上で抱き合って居る


昨夜は殿下の部屋に入るとなぜか侯爵家の養女になる書類と婚約の書類がありいつの間にかサインさせられていた

流されやすいなと思いながら、フェルディナンド王子の笑顔と横に居る安心感に後悔はなかった

そのまま従者が部屋を出て行くと変わりに侍女が入ってきてあれよあれよと湯浴みに着替えをさせたれた、

このビップルームにはバスルームが他にもあり、私が着替え終わるとフェルディナンド王子も着替えてソファーでくつろいでいた


「髪の色戻したんだね」

「はい、もう偽る必要は無いのかと思って」

「ウエーブのかかった綺麗な金髪に吸い込まれそうな綺麗な青い瞳・・・うつくしい」

「でも ざんバラだったのをそろえるのに切ったので短いです、これでも少し伸びたんですけど」

ボブカットの髪を触ってそう言ったら


「髪なんて直ぐ伸びるさ、それに短い髪も可愛くて良い」

そう短い髪をすくって口付けを落とすフェルディナンド王子


ちっ近い~・・・色気が半端ないんですけど、こういうとき女神は出てこないのかな

(そんな無粋なことしません)

出てきてるじゃない、まずくない・・・二人きりなんだけど

(最初から下心丸見えでしたけどね)

え?まじ・・まじ・・・やばい

(いやなら力ずくで逃げればいいじゃないですか、貴方にはその力があるんですから)

そうだけど、嫌われない?

(あせっているんですよ、既成事実を作らないと教会や各国が貴方を取り合うので、自分のものにしておきたいのでしょう)

教会・・・それはやだな

(本当にいやならいやと言えばやめてくれるかも・・です)

・・・・いや・・・じゃないかも


で、そのままベットへ・・・・朝を迎えることに



「首もとの私の跡は消さないでくれるとうれしいな」

そう色気たっぷりで首元で言われると顔が真っ赤になるのが分かった

恋愛系に作用しない精神耐性MAXスキルだった

昨日の夜にまだ残してあった摂関の痕を目の前で消したのでそう言ったのだと思う

あまりにも摂関の痕を悲しそうに触るものだから、自分はあまり気にしてなったが消すことにしたのだった




豪華な迎えの馬車はその日のお昼には到着していた

「これに乗るの?」

「魔法馬車だから乗り心地は良いよ、移転魔法使えればよかったんだけど、無理をさせてしまいしばらく使えないんだごめんね」

「いえそれは大丈夫です、移転魔石は距離が短いですからね、高いし」

次女に綺麗に体を洗われドレスに着替えさせられた私はフェルディナンドとお互いに腰に手を回してホテルから出るところだった


「女神の愛し子様にご挨拶申し上げます」

いきなり横から豪奢な法衣を来た男が近づいて来た

「誰?」

「ベゼウザード枢機卿、無礼だぞ」



げっ教会関係者それも枢機卿って偉い人だよね

なんか睨まれてるんだけど何?ああ、フェルディナンドがまわしている手ね

(純潔が聖女の条件だと<思ってますから>ねぇ二人の様子から分かって顔を引きつらせてるんですね)

おっと女神の声が・・・そうなの?フェルディナンドも知ってたよね

(夢枕に現わせせてもらいまいした)

え?な・・何を言ったの

(単に貴方を愛し子をよろしくって、子供が生まれるの楽しみにしてるって言っただけ、親の気分で言っただけよ)

えーと<思ってますから>って・・・聖女は純潔

(私って【豊穣と愛の女神】よ豊穣に子孫繁栄も含みます)

そうよね、それは変よね、でも私聖女じゃないよね

(愛し子も一緒だと思っているのでしょう、過去に聖女が恋におぼれていろいろあったんですよ、夢中になると仕事が手につかなくなるのはしょうが無いんじゃないかな)

確かに、王族って聖女の子孫だったよねそういえば

(昔は逆に力の強い聖女は大族に嫁ぐのが定番だった、最近聖女を囲ってお金儲けに力をそそいでるからここ100年得に酷いわ・・・そろそろ天罰を・・・)

ちょっとまった、恐ろしいこと言った?

寒気がしたんですけど

(あなたが、なにかしてくれそうなのでやめとくわ)

・・わたしに押し付けるのね・・・

まあ、聞いて黙っていられないお人よしの私だけどね




「愛し子様?」

「ああ、すみません女神に貴方のことを聞いてたところです」

「おお、女神の声を聞くことが出来るのですか」

「お金がそうとうお好きだそうで」

「え?」

「なかなか悪どい商売をされてますね」

「商売?私は聖職者で商売人ではありませんよ」

私の腰に回したフェルディナンド手に力が入った


(王家もなかなか教会に手を出せずにこまっていましたからね、治外法権を理由に)

何か、聞いては駄目な犯罪起こしてそうね

(この国の教会はまだ可愛いものですよ、聖女を囲って高いお布施取って治癒してるだけだから)

十分酷いと思うけど、お布施払わないと治癒してくれないとか?

(その通りです、まあ、そのおかげで薬師や医者の需要があるんですけどね、それもただじゃない)

ふと、傷薬をくれた姉の姿を思い浮かべた


「聖女は貴方たちの金儲けの道具ではありませんよ」

「な・・何をおっしゃって」

「女神様はたいそうご立腹です、その件に関しては後で王家の方々交えて話し合いを設けましょう」

「女神様・・・」

「女神様は天誅を下すとまでおっしゃってます、が、私が対応するなら任せるとおっしゃってくださいました。」

「何を!本当に愛し子なのか!」

枢機卿の後ろに居た上位神官らしき男が叫んだ


「まて!クラファス卿!」

止める枢機卿、わたしに向かってくる神官その時

ばりばりばり

雷が神官に落ちた


「びっくりした!ちょっと落とすなら落とすって言ってよ」

「くはっ・・・」

体から煙の上がる神官、生きてるようだ


(後ろの男、来るっと思って身構えてたのよ当たりね、さすが枢機卿はあなたが愛し子だということを疑っては居ないようよ、天罰を人ひとりに当てるの逆に大変なのよ、火山噴火させたりした方が簡単)

自分で対応出来たのに

(神罰としてのパフォーマンスが必要なのよ、そのほうが【お人よし】がしやすくなると思うわ)


「愛し子様・・・・」

「神罰です、火山がドカーンじゃなくて良かったですねベゼウザード枢機卿」

皆一斉に青い顔になる

私は倒れている神官に手をかざすと


「ヒール」

治癒魔法を使った


「はっ・・・あああぁあぁぁああぁ・・・申し訳ありません・・・」

神官は気がつくと私の前に平伏した、がたがたと震えている

私はフェルディナンドの腕を解くと神官の前にしゃがみこんだ

周りはざわついている


「愛し子様?・・・・」

周りがざわついたので神官はおそるおそる顔をあげて私を見た


「ファティマ・アイラ・グレンバレットですわ」

「?」

「ジョブで呼ばれるのも変ですので名前で呼んでくださいな、グレンバレット侯爵の姪で、侯爵の養女になりました、ファティマ・アイラ・グレンバレットです、そしてフェルディナンド・オブ・フィレンバレット公爵の婚約者ですわ」

にこっと笑いかけると神官が真っ赤になった

そんなに大きな声で言ったわけではないが、そこに居た野次馬や護衛騎士近衛騎士、枢機卿以下神官、侍女や侍従にも聞こえたみたいだった


(各国の密偵も居るみたいなので皆にあなたの存在はどういうものか分からせておいたわ)

フィレンバレット王国って大国だもんねそうそう手出しできないよね


私は地面にはいつくばっている神官に手をのばした

「え?・・・てがよごれ・・・」

「お手!」

「はいっ」

手をのせる神官

手を取って神官を立たせる、力は私のほうが断然強い

「ベゼウザード枢機卿、彼は反省しているようなので寛大な処分を」

そう言ってフェルディナンドの元に戻った


「で、ベゼウザード枢機卿・・・お話とは?」

そう改めて聞いてみた


「・・・・女神の愛し子様・・ファティマ・アイラ・グレンバレット侯爵令嬢殿、是非神殿にお越しいただき神殿にて手厚く保護させて頂きたいのですが」

「必要ありませんわ、女神様にも自由にと言われてますし、フェルディナンド・オブ・フィレンバレット公爵の婚約者ですので、しばらく侯爵家にお邪魔した後、王宮にて教育を受けさせてもらえるようお願いしようと思ってます。なにせ貴族の教育を受けておりませんので・・・」

「受けてない割には、しぐさがとても上品だよ、勉強したのなら全力で協力するよ」

「ありがとうルディ・・・ちゅっ」

フェルディナンドの頬にキスを落とした


「小さいときは一応しぐさなどの教育はしてもらったので」

「どんなしぐさでも可愛いよ  ちゅっ」

今度はフェルディナンドがファティマの額にキスを落とす


いちゃいちゃがしばらく続いたが皆口をあけてその様子を赤くなりながら見ていた

一人怖い顔のベゼウザード枢機卿


「女神の愛し子ともあろ方がなんと破廉恥な」

その声は一帯に広がった


「はー・・・」

思わずため息をついてしまった


「ファティマ?」

フェルディナンドが心配そうな顔をする


「破廉恥とは?恋人どうしならキスの一つや二つしますでしょう?それに頬や額ですよ」

「神に使える者が、という意味ですよ」

「うーん・・・勘違いしてると思うけど、私は女神に使えているわけではないよ、愛し子って意味分かってる?愛でるってことは、しいて言えば女神が私のことを子供のように思ってくださってるってことでしょう?分かるかなぁその意味・・・<子供>って意味」

「そういえば、女神の夢をみたなぁ・・・ファティマを幸せにしてやってって、二人の<子供>を楽しみにしてるって・・・まるで母親のようだった」

「子供?」

どっちの<子供>に反応したのかベゼウザード枢機卿がたじろいだ


「あなた方が女神様に仕えるのは勝ってですが、それを強要しないでくださいね、子孫繁栄・五穀豊穣と愛の女神様ですよ皆の幸せを願っている神様なんですから」

「ベゼウザード枢機卿、彼女は私が女神に託されたのだ、教会とのことは改めて話し合おう」

そう言ってやっと馬車に乗り込んだ


「教会・・・やっぱり面倒だわ・・・」

「女神の声が聞こえる貴方が係われば変わって行けるかもしれない」

「ルディありがとう・・・少し落ち着いた」

頭をがフェルディナンドの胸に寄せて、二人よりそっと手をつないだ


馬車はゆっくりと王都に向かって走り出した


























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