人工乳房について

乳がんで乳房全切除手術をした後に選択がいくつかあります。


大きく分けると、切除したままか、再建手術を受けるかです。


再建手術も乳がん手術と同時に行われる同時再建手術があります。

私の場合はがんが大きくなっていたので同時再建手術は受けられませんでした。


後から(二次再建)の場合もインプラントを入れる場合と(当時は水のバッグが主流でした)自分の筋肉を使う方法があります。(自家組織)


抗がん剤と放射線治療が終わってから再建手術を受けたのですが、放射線で焼けて硬くなった皮膚はひどいダメージで皮膚が伸びずに何度も傷口が開いて断念しました。


ポジティブに考えていた時は

「どうせなら大きくしてもらって美乳に!」とか

「お腹の筋肉を使う方法、お腹もぺったんこで一石二鳥~!」と美容整形で豊胸するくらいの気持ちでいましたので、当時はひどく落ち込みました。


放射線を受ける方は数年待ってから再建手術した方がいいと思います。


私はその時の失敗の記憶(特に何回も繰り返した手術の痛み)がぬぐえずに、なかなか次の再建に踏み切れず、その上人前に出られなくなった時期もありました。


今16年経って「今からでもやっちゃおうかな」と思う日もあります。胸元のあいた服が着たいとか、温泉に入りたいとかそんな理由で。


でも「やっぱり痛いのもう嫌だ」の気持ちのほうが勝ってしまいます。なので今でも右胸だけしかありません。


私が普段愛用している(うそっこ乳房)は重みのあるシリコン製です。


コットンで軽いものを使った時は上に上がってきて困りました。肩の上に胸があったこともあり「なんじゃこりゃあ」と笑ってしまいました。


その点シリコン製のものは高いのですが触り心地が本物のようでずっしりと重みもあります。体温で温まり、さらに柔らかくなり気持ちが良いです。


でもこれで大失敗したことがあります。


本来ポケット付きのブラに入れて使うのですが、肌への密着度がとても良かったので胸に直接当てて、普通のブラをしました。


「やった!これが一番いいな、普通のブラも買えるし!」と思っていたんです。


ブラの下からは絶対に出ないと思います。問題は上からでした。


家の前の花壇に花を植えているときでした。かがんだ瞬間ブラの上からシリコンがずるんと落ちて目の前の花壇に落ちました。


~プルルルルン~~と地面の上で揺れる乳房。シュールです。


ぎゃーっと叫び慌てて胸をひっつかみ家に走りこみました。家の前で良かった。モールの真ん中だったりしたら目も当てられません。


それ以来ポケット付きのいわゆる「乳がん手術後用」のブラを使うことにしたのでした。


古いTシャツでポケット部分を縫ったりもしますけど、きれいなブラはもう付けられないんだなと思うと少し寂しいですね。


それでもブルルンと落ちるよりは全然いいです。笑


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