初日の朝
4月の朝
暖かな風と明るい日光。
小鳥のさえずりと、道路を走る車の音で飛び起きた私は、今日から新しい学校へ転校する。
初日の今日は、珍しく早めに目が覚め、今は、登校の準備をしていた。
イギリスから引っ越してきた日から約2ヶ月、そろそろ日本の生活にも慣れてきていた。
新しいブレザー型の制服に腕を通し、部屋の鏡の前で、くるっと一回転をしながら、胸を躍らす。
「日本の制服って、可愛い!」
黒を基調とした制服は、まだ体になじんでおらず、そわそわする。
何度も何度も、鏡の前で制服を見渡してから、私は、少し伸びた黒髪をゴムで縛った。
下から
「ヒカルー。早くしなさい。遅れるわよー!」
と、お母さん。
私は、カバンを持ち上げて、
「今、いくー。」
と、返事をしながら1階へ降りていった。
リビングに入ると、机の上には、人数分の食器があり、いい匂いが漂っている。
「今日の朝ご飯なに?」
「今日は、お味噌汁とご飯!」
「おっ、やったね。私、味噌汁好きなの。」
「ほら、急いで食べないと時間内わよ。」
「は~い。」
まだ慣れない、箸の代わりに、スプーンでご飯にぱくつく。
「うん。やっぱり白ご飯は美味しいね。」
「そうね。あっ、ヒカル。今日、学校へ行ったら、まずは職員室に行くのよ。先生に名前を言ったら分かってもらえると思うから。」
「うん。分かった。」
朝食を食べながら今日の天気予報を見ていると、画面が切り替わり、ニュースが流れ始めた。
『次のニュースです。
●●市の地下街で行われていた麻薬売買の取引を行っていた容疑者2名が今朝、負傷した状態で見つかりました。
容疑者はどちらも、何者かに取引を邪魔されたと供述している模様です…』
ニュースの原稿をアナウンサーがすらすらと読んでいく。
「●●市って、この近くじゃない。ヒカル。今日、学校まで送っていこうか?」
「うんうん。1人で大丈夫だよ。」
「でも…」
「それに、この時間帯は人も沢山居るし、私も、通学路の確認とかしときたいしさ。」
「うん…まぁ、そうね。何かあったら絶対すぐに連絡ちょうだいね。」
「分かってる分かってる。」
私は、ご飯を食べ終わると、カバンを持って玄関に立つ。
「ヒカル…本当に大丈夫?」
「大丈夫。大丈夫。お母さんもお仕事頑張ってね。」
「うん。行ってらっしゃい。」
「行ってきます!」
私は、新品のパンプスを履いて、元気よく外に飛び出した。
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