逃避行されて、どうでしたの?
「それで、未悠。
アドルフ様と逃避行されて、どうでしたの?」
リチャードから解放されたあと、興味津々、アデリナが訊いてきた。
リチャードたちは、何故かいつの間にか、女性陣に混ざり、タモンの話に聞き入っている。
寝たり起きたりしながらだが、長い時間を生きてきたタモンの話は説得力があり、興味深いようだった。
そのとき、何処からか湧いてきたシーラが、
「あら、駆け落ちしてたんですの?
正式に王子妃に決まった貴女が何故、アドルフ様と駆け落ちすることになったんですの?」
と訊きかけ、ふと、思い出したように喧嘩を売ってくる。
「そうでしたわ。
貴女が王子妃になってしまったから、行き場のなくなった私は、バスラー公爵のところに売られることになったんでしたわ」
そ、そうですか。
すみませんね、と思っていると、
「で?
アドルフ様と駆け落ちして、どうなったんですの?」
とやはり、気になるようで、シーラは突っ込んで訊いてくる。
いや……なにも貴女方が期待しているような展開などなかったのですが。
というか、アドルフ様が来た途端、引き返すことになって。
結局、その辺まで出かけて、リコやリチャードたちを連れて帰っただけの旅だったんですが……。
と思ったあとで、未悠は思う。
でもそうだな、と。
アドルフ様と結婚出来ないかもと思ったり、離れて旅に出たりしたら。
少しアドルフ様が恋しくなったりとか、しないこともなかったかな? とちょっとしんみりしたところで、タモンの話を聞きながら、窓の外を見ていたリチャードが、
「未悠」
と呼んできた。
なんか、この男に呼ばれたら、ロクなことがないような……と思っていると、
「今から、塔に行ってみようかと思うんだが、お前も来るか」
と言ってきた。
は? 私? と思っていると、周りの女性たちに、なにやら言われ、リチャードは微笑みながら、
「いやいや、あんなところ、ご婦人方のいらっしゃるような場所ではありませんぞ。
あとで土産話でもお聞かせしましょう」
などと言っている。
いやいや、待て、と思った。
ご婦人方のいらっしゃるような場所ではないところに、何故、貴方は、私を連れていこうとしていますか。
「あんなところってなんだ……」
と文句を言っているタモンも、リチャードは一緒に連れていくつもりのようだった。
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