第12話 不自由な生活(一部を除く)
私が骨折した事により、なんと真山先生の家で生活する事になりしかもそこから登校も下校もしなくてはならないという現実に、私は何といえば良いのかという複雑だけど嬉しい気持ちでいた。
「真山先生、私そろそろ学校に行かないと間に合わないんですけど・・・。」
「そうだな。俺も自分のクラスの事があるから、これ以上家に居ては遅刻してしまうから行くか。車持ってくるから玄関で待ってろ。」
「はーい。」
真山先生と初めての登校だけど、きっとバレないよね?と思っていたら、真山先生の車が来て助手席のドアを開けてくれた。
「早く乗れ。遅刻するだろ?」
「はい・・・。」
車を発進させると真山先生は、私を気遣ってくれているのか安心させようとしているのか、さり気なく私の手を握ってくれていた。
「恭一郎さん、片手だと運転に支障が出るんじゃないですか?私なら大丈夫ですから、運転に集中してください(⌒∇⌒)」
「俺が不安なんだ。結衣を一回俺の手から学園に手放した時に、他の誰かに無理難題な仕事を頼まれて足を酷くしてしまうのではないかとかな。」
「一応松葉杖持っていますから、逆に助けてくれる人もいると思うので大丈夫だと思います(^^;)私のクラスは担任が一ノ瀬先生なので、きっと朝礼の時に皆に知らせてくれると信じていますしね(⌒∇⌒)」
「そうか・・・。」
結局最後まで真山先生は、私の手を握っていてくれた。あまり自分の感情を声に出さず行動で示す少し不器用な所もある彼が微笑ましく思った。
「一応、周りに怪しまれたら困るから少し遠いがここで降ろす。何かあったら俺に連絡しろ。守れる所はしっかり守ってやるから・・・。」
「ありがとうございます。じゃあ、行ってきますね(⌒∇⌒)」
「待て、その前に・・・。」
そう、最近彼は出掛ける前や帰宅後に必ずキスをしてくる様になった。まるで新婚さんかなと思わせる様な行動だけど、私にはそれがそれだけ彼に愛されている証拠なのではないかと思って嬉しかった。
学園に着いて教室まで松葉杖で向かっていると、廊下の方で長い列が出来ていた。何事かと思って遠くから覗くと、女子に大人気の藤城四天王のメンバーが朝から女子の皆の相手をしつつ優雅に廊下を歩いていたのだ。やばい、こんな姿見られたら先輩達に心配されてしまう・・・!
「おや、君は佐々木結衣さんだよね?」
「こんな所で何をしているのだ?もっと近くに寄らんか。」
「佐々木さん、おはようございます。松葉杖での登校とは・・・大丈夫ですか?」
「おお、佐々木ー!お前大丈夫か?」
「鷹司先輩、九条先輩、西園寺先輩、壬生先輩おはようございます(^^;)・・・すいません、朝から痛々しい姿で(´・ω・`)」
「いや大丈夫ですよ。それよりも何があったのですか?」
「骨折してしまって(^^;)」
「骨折か。まあ、俺もBMX乗ってるんだけどけがは誰にでも付き物だもんな。早く治ると良いな?」
藤城四天王の皆と話すのは楽しいけど、何だか周りの女子達の目線が怖くて今すぐにでも立ち去ろうとしたその時だった。
「おや、皆さんこんな所で何をしているのですか?ここは廊下ですから、いくら藤城四天王の皆さんが居たからと言って集まってしまっては困ります。もうすぐHRなので今すぐ各教室に戻ってください。」
「みんな、もうすぐ時間だから戻ろうね?」
「戻ってくれないと・・・俺達も困っちゃうんだけど・・・な?」
真山先生、一ノ瀬先生、若桜先生!!何で朝からこの3人が廊下にいるんだろう?私はイマイチ理解出来なかったが、取り敢えず廊下から教室に戻る事にした。というかこの3人は、生徒達から人気の先生達だから朝の巡回でもしているのかな?
教室に着くと自分の席に着き、今日の準備をしていた。ここまでは普通なのだがこういう時に限って移動教室が多い日だというのを忘れていた。やがていつも通りのほんわかとした表情で、一ノ瀬先生が入ってきてHRが始まった。そして一ノ瀬先生は「佐々木さんが骨折でしばらく松葉杖なので、皆助けてあげてね(⌒∇⌒)」と皆にお知らせしてくれた。皆は快く返事をしてくれたのが、唯一の安心感を与えてくれた。
HRが終わり1時間目の数学の準備中、私は教科書が自分のロッカーだという事に気が付き松葉杖で行こうとした。すると誰かが私の教科書を持って来てくれた。
「はい、これが欲しかったんでしょ?」
「ありがとう(⌒∇⌒)・・・君って確か逢坂君だよね?良く私の行動が分かったね(^^;)」
「僕の名前は逢坂紘夢。君の事は知っているつもりだから、何か困った事があったら何でも言ってね?」
「ありがとう(⌒∇⌒)逢坂君って優しいね♪」
「そんな事ないよ。さあ、もう授業だからまたね?」
なんだか不思議な子だなーという第一印象を胸に、真山先生の授業を受ける事にした私は教科書とノートを開きひたすら問題を解いていた。
2時間目は体育。当たり前の事ながら私が見学なので黙って端っこの方で、皆の様子を観察していた。すると逢坂君がやってきた。
「やっぱり見学だったんだね。」
「逢坂君も見学?見た所そこまで具合が悪そうには見えないけど、調子悪いの?」
「・・・あんまり動きたくないんだ。座学の方が好きだから、敢えて今回は見学する事にした。けど、見学の時間は君と居れるから悪くないかもね?(⌒∇⌒)」
「逢坂君(^^;)でもちゃんと見学していないと、見学レポート書けないし成績良くならないよ?」
「僕は君さえ見ていられればそれで充分。成績なんてどうでも良いくらいさ。そんな事より、ちょっと聞きたい事あるから学校の裏に行こうか?ここだとあまり聞けない事だし、君も危ないからね。」
「え、うん。わかった・・・。」
学園の裏って確か誰も居ないけど、たまに人がいる場所だよね??でも、聞きたい事って何だろう。大体は私と真山先生の関係について聞かれる事が多いけど、多分このままだとその可能性があるから気を付けないと・・・。
「よかった、誰も居ないね。で、聞きたい事って言うのは君と真山先生の事なんだ。もしかしてじゃなくて実際に君たちは、秘密の関係で秘密の恋愛しているんじゃないかなって思っているんだけど実際どうなの?」
「黙秘するよ。同じクラスメイトとはいっても話せる人は限られているし、逢坂君の事まだそんなに知らないから安心できないし。」
「ふーん?じゃあ、今度僕がどういう人物なのかを特殊な方法で教え込んであげる(⌒∇⌒)絶対に君が満足する方法でね?」
「・・・。あ、そろそろ戻らないと皆が心配するから私戻るね!(⌒∇⌒)」
そんなこんなで放課後になり、私は帰り支度をしていると真山先生から連絡が入り『俺の車ですぐに帰るから、誰にもバレない様に今朝と同じ所に来い。』と言われたのですぐに向かって車に乗り込んだ。
「恭一郎さんお疲れ様です。それにしても急に連絡してくるなんて、何かあったんですか?」
「お前、逢坂に何かされそうになっていなかったか?」
「何でそれを!?」
「やっぱりな。俺のクラスの男子生徒が逢坂ともう一人女子で、何かされそうになっている所を教室の窓から目撃したと報告があってな。」
「まさか、それで今日は早く帰るって言いだしたんですか?(^^;)」
「そうだ。」
「・・・明日、土曜日だが学園にてお前だけの特別補習を行う。場所は体育館に取り敢えず行くぞ。」
「何で体育館なんですか?」
「これ以上俺が居ない時に、他の男子にお前が惑わされてしまっては困るから俺が躾けようと思ってる。心配しなくとも、俺とお前以外に教師や生徒はいないからゆっくりと時間を掛ける事が出来る。だから今日は体力を明日の為に温存しておくんだな。」
体力必要な補習って初めてな気がするけど、真山先生が居るなら安心出来そうな気がする。取り敢えず明日に備えて今日は早めに寝ようかな。
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