第8話 少しのトラブルと救世主

 結局、私は茜と一緒にお昼休みを過ごす事になり向かった先は屋上・・・。この場所は真山先生と一緒に居る事が多かったから、何か少し寂しいな。

「ねえ、結衣。ちょっと聞きたいんだけど・・・。」

「聞きたいって。茜が相談したいっていうからここに来たんでしょ?何かあったの?」

「相談っていうか、結衣に確認したい事があるんだけど結衣ってもしかして・・・真山先生と付き合ってる?」

「え!?何で茜までそれを聞くの?たまにクラスメイトからも聞かれるけど、私は決して付き合っているわけじゃないよ?」

「実はさ、私見ちゃったんだよね。この間結衣さ、真山先生と屋上で抱きしめられてて口説かれてたでしょ?たまたま、屋上に行こうと思って階段を上がってドアノブに手を掛けたら二人の声がしたから、これはまさかねって思ったんだけど。」

「・・・茜だから話すけど、実はその通りなんだよね。秘密の関係にあるのは真山先生だって事は若桜先生しか知らないから、あまり他言無用でお願いしたいな・・・。」

「私だって、真山先生の事大好きだったのに・・・!何でよりによって結衣なのよ!!」

「え・・・そうなの?」

「黙っていてあげる代わりに一つ条件。真山先生が帰ってきてから1週間の間は、私に譲ってほしいな。」

「いくら茜でもそれは断るよ。私の大切な彼氏だもん。」

「じゃあ言いふらすけど良いの?」

どうしよう。このままだと真山先生が危ない・・・でも守り切らなきゃいけないのに!

「おい、そこで何を話してる?」

その声と同時に振り返ると、出張中のはずの真山先生の姿があった。

「真山先生!?どうしてここに。」

「結衣は下がってろ。佐藤さん、私の大切な人に何か危害を加えようとしましたね?確か私が聞いた限りでは、私達の関係を周りに言いふらすとか?そんな事をしたら教師の力であなたを捻じ伏せる事も簡単なので、決して容赦はしませんがそれでも構わないのならどうぞ。」

「真山先生、私結衣以上にあなたの事が大好きなんです。絶対にずっとそばに居られる自信があります!!」

「ですが、あなたは藤城学園の生徒なのにも関わらず決してまともな生徒ではない事くらい把握済みですよ?例を挙げると・・・。」

「やめろー!」

茜がものすごい勢いで真山先生に殴り掛かろうとしてきた。私は咄嗟に身体が反応し、彼の前に立ちはだかって庇おうとした所で私の記憶が途絶えた。


 気が付くと私は何かフワッとしている物の上にいるような感覚でいた。辺りを見回そうと思い首を動かすと、自分のすぐそこで真山先生が私の手を握りながら静かに眠っている姿があった。少し寝顔を観察していたいが、これ以上ここにいるわけにはいかないと思って動く事にした。

「よいしょ・・・っと。」

「ん、目を覚ましたか。」

「真山先生、すみません。看病してくれたみたいで・・・。今から教室に戻るのでもう大丈夫ですよ。」

「・・・お前はどこまで鈍感なんだ?結衣、ここは俺の家であって藤城学園ではないから教室などあるわけがないだろう。」

「え、ここって真山先生のご自宅ですか!?」

「俺の彼女を若桜が居る保健室に連れていき、看病でもしたらあいつにからかわれる事は目に見えている。それに、俺が結衣の看病をしている所を他の生徒に見られたら怪しまれるからな。俺なりの配慮をしたつもりだったが、どこか不満でもあったのか?」

真山先生が今出来る範囲の配慮をしてくれたなんて、あのいつもの真山先生のスタイルからは想像できないかも。

「ふふ、ありがとうございます(⌒∇⌒)」

「ああ。しかし結衣、お前はなぜあの時俺の前に立って庇おうとした?下がっていろと言っただろう?」

「あの時、咄嗟の判断で恭一郎さんを守らなきゃと思っていたら身体が勝手に動いて・・・。結果、恭一郎さんを困らせてしまいましたがお怪我が無くて良かったです。」

「お前らしいとでも言っておこう。・・・それから、お前の友達の茜の事だが。あの生徒は、元々というか現在もこの辺りでは有名な不良の一人らしい。どういう訳か藤城学園にやってきて、友達を作って不良の仲間を増やしたかったらしい。そして、結衣が殴られたという事実を認めたがそれはまだ一部に過ぎないという事で彼女は、暫くの間自宅謹慎処分になった。」

「茜が自宅謹慎処分・・・。私を殴っただけで。」

「それだけでは無い。俺だって危うく殴られる所だったんだ・・・。警察に突き出しても良いくらいの話だ。故にもしそうなら、俺の事が結衣よりも大好きだったが故の犯行って事で処理されるだろう。」

「茜は戻ってくるんですか?」

「難しいだろうな・・・としか言えない。俺からいえる事はそれしか無い。」

言葉を失った。あんなに仲が良かった茜と謹慎処分という形で一緒に居られなくなる時が、こんなにも悲しいものなんて考えた事も無かった。いつかきっと戻ってきてくれると信じて私は待つしかなかった。

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