第3話 ドラキュラさんの夜祭り
「あっ!」
今日ハロウィンか。
後ろの席の量産型無個性女共の会話で気付かされた。
「ぬかったわ..」
驚いているか?
そうでもないか、私がオシャレなカフェでトマトスープを飲んでいる事に。
「偶にやってしまうのだ」
基本的に日中は外へ出ないがふとした瞬間に出てみたくなる事がある。その際に余りにも外の情報が無い為意図せずオシャレスポットに入ってしまう。
「トレンドの落とし穴だ...」
映えたくもないのに写される。
「ねぇ今日何のコスプレする〜?」
「あたし魔女かな〜」
「いや普通過ぎ〜無個性〜!」
黙れイケてるグループ。
トマトがマズくなる、無個性〜!
「ハルカは何すんの?」
「私は、いいよ..。」
「え〜今年も不参加〜?」
「仕方ないよ、苦手だもんねそういうのさ。」
「う、うん..」
なかなか良心的な女が一人いたな。
「勿体無いよハルカ可愛いのに〜!」
「いや、そんな事ないよ!
ミサキの方が..ずっと可愛いし...」
「ホント?
やったぁうれしぃ〜!」
「……」
謙虚で控えめな奴をとっ捕まえて元気で活発な奴がマウント取る、か..。
「見るに耐えんな..!」
「..え?」「見るに...」
「この花火、去年の方が余程綺麗だ」
「あ、スマホ見てる。」
「びっくりした、私達かと思った。」
「......」
しまった、つい口に出してしまっていた。余りにも不快で。
「また来年に期待するか..」
控えめな女を褒め否定させ、なおかつ謙虚を引き出し己を褒めさせる。それを否定せず受け入れる事で自分自身が
〝貴方より綺麗〟〝貴方より優れた〟
という事実のみを作り上書きする。
「世界の破壊者め」
お前が笑っている世界など滅びろ!
「決めた!
あたしがやるコスプレ!」
「何、魔女はダメだからね」
「わかってるよ〜、私がやるのは違うドラキュラよ!」
それだけはやめろぉ!!
「何よ、アンタも無個性じゃん」
「え〜うそ〜?かわいくない?
ドラキュラ!」
やめろやめろ、恥をかくぞ。
「ていうかアンタの場合さ!
ドラキュラってかサキュバスだよね」
「ぶっ!」
「..何?」「さぁ..またスマホだよ」
「変な人だね..。」「気持ち悪っ!」
聞こえてるぞサキュバス。
「アタシちょっとトイレ行ってくる」
「あ、わたしも!」
危ない、今日は気が緩いな。
「奴等が戻って来る前に、スープを飲み干してさっさと家に..」
「はあぁぁぁ〜..。」「うん?」
なんだどうした残る地味女。
「うるせぇんだよなぁアイツら!」
「...ほう。」
「参加する訳無ぇだろ痴態コスプレパーティーなんてさ、くだらねぇっ!」
ふはは、やはり暗い女は面白いな。
「悪いな女、私は行くぞ」
ハロウィンの準備があるのでな。
「ごめ〜ん、待たせちゃって!」
「いいよ、待ってないから..」
「さ、会計しよっか!」 「うん!」
帰るやいなや機嫌良さそうだな
初めから一人で来ればいいものを。
「この日の為に休みにしたんだ、盛大に謳歌させて貰うぞ。」
やはり夜が合っているようだ私は、望んではいないがな。一旦眠り、目を覚まし空は一面黒と星。
「さて遊ぼうではないか夜空よ」
会場はここから歩いて直ぐの場所、待っていろ直ぐに赴く!
「あーサツキ〜こっちこっち〜!」
「いたミサキ探したよー?」
「ごめんごめん、こんなに混むとは思わなくてさ!」
「いいけど、ていうかアンタ何そのカッコ!」
「え、おかしい?」
「おかしくないけどミツバチって、どういう主張の仕方よ?」
「アナタをチクッと刺しちゃうぞ!
..的な?」
「アンタやっぱりサキュバスね。」
「ちょっと〜そんな事...あるカモ♪」
「ミツバチか、下らんな」
まぁそんなものだろ、所詮はな。
通常であればこんな集い反吐が出るほど嫌いだが、特別な格好をして優越感に浸るナルシシズムは判らんでも無い
「現にこうして人目をはばからず、ラフな服装で街を歩く事が出来る..」
Tシャツに短パン、便所サンダル。
こんなラクな格好で外を歩けている!
オレドラキュラよ?
「Tシャツには片仮名で
〝ピスタチオ〟実にダサい!」
黒からの開放、それ即ち己の開放!
「但し盛り上がり方は知らぬしハロウィンはどうでもいいので、小一時間街を歩いたら家に帰ろう。」
ならば先ずラフの代名詞コンビニへ向かうとしよう。
「それで目的の八割程が達成する。」
コンビニはどこだ、探す手間が面倒だが心配はない。
「ほらな」
目と鼻の先にある、やはり夜とは相性が良い。
「我が友トマトジュースをここでストックしてやろう。」
まさかこんなラフな男が、血を好む化け物だとは思わんだろう。
「ネックなのはハロウィンの残党が平然とやってくる危険性だが...」
「牛乳切れてるし。」「ん?」
アイツは..昼間の地味女。
「いらっしゃいませー」
「なんでこんな日に冷蔵庫に何もないかな。」
「何のコスプレですか?」「は?」
店員に聞かれてるぞ、答えてやれ。
霊感持ちの能力系おかっぱ女子だとな
「漫研の女子です..」
地味ハロウィンにスライドさせたか!
「やはり暗い女は面白いな..。」
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