ビバ! 商工会
「ただいまー」
「お帰り。って、ずいぶん早いじゃないか。具合でも悪いのか? 顔色は良いみたいだが……」
自宅と続いている厨房に声をかけると、父親が驚いた顔をして振り向いた。三人の従業員も振り向いて、マスクごしに「こんにちは」というので、真緒は笑顔でそちらにも挨拶する。
三人のうち一人、小山田はもうすぐ50になる熟練の菓子職人だ。物心ついた頃には見習いとして働いていて、当時からずいぶんかわいがってくれたから、二人目の父親ともいえる存在でもある。
店主からのれん分けしても良いと言われても、なにか店に恩義を感じているらしく、いつも首を横に振るだけだった。そして今も、チーフとして働いている。
ほかはパートの主婦や大学生で、週に2~3度、交代で勤務している。
母親の姿はないが、おそらく奥の事務所で事務処理でもしているのだろう。
「こう見えてもちょっと具合悪いの。上司が無理するなって言うから、素直に帰ってきた」
ギャンプリ ! ~つらぬけ、初恋 八柳 梨子 @yanagin
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