第5-5話
「なんでしたか、思い出せませんね」
みつるはデバイスから手を離し、目を
「気になることでもあるのか?」
「吉川駅長はあまり触れて欲しくない様子でしたので、
目を開くと、顔をあきらに向けた。
「いや、それは俺も見てたよ」
あきらは苦笑して、自分のヘッドマウントディスプレイを叩いた。
安全装置について訊く前に、まずは運転士について質問するべきだったか。
みつるは駅長に気を使ったようなことを言ったが、おそらく自分が質問してすぐに駅長が出て行ってしまったから、訊く暇がなかったのだろう。
扉の外から複数の気配が近づいてくるのが分かった。
あきらはディスプレイを外すと、斜めになっていた姿勢を正した。
「お待たせしました」
吉川の声と共に部屋の扉が開いた。駅長の他に技師と思われる人物が一人、運転士らしい人物が三人部屋に入って来る。
吉川があきら達に簡単な紹介をすると、早速事故原因について技師が説明を始めた。
「環状線は現在、旧型を含めて三つの安全装置が
「三つもですか」
あきらは装置の多さに驚き、
「ええ、三つです」
技師は気を良くしたようだった。更に説明を続ける。
「まず一つ目は、
「事故時に、その警報は鳴ったのでしょうか?」
あきらが技師に尋ねる。
「いえ、警報、自動ブレーキ、どちらも作動しなかったことが分かっています。原因は現在調査中ですが、ATS装置に異常はありませんでした」
「異常がなかったということは、装置の故障や何者かによって破壊されたのではない、ということですか?」
技師の説明から明らかだが、あきらは一応確認した。技師は「そうです」と答える。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます