第3-2話
「落ちましたよ」
脚になにかが当たったことに気が付いたみつるは、
「悪いが、処分しておいてくれ」
黒川は手の平で書類を押し返した。
「ですがこれは……」
黒川の目を見たみつるは、機密書類ではないのか? という言葉を途中でのみ込んだ。
みつるは黙って書類を折りたたむと、上着の内ポケットに仕舞った。
「この事故報告書は調査室に回しておく。まあ壁が少し崩れただけだから、警備員を一人か二人立たせておけば大丈夫だろう。後はそうだな。警察の現場検証が終わるのを待って、不信な点があれば調査することにしよう」
黒川は素早く報告書に目を通すと、スタンプを押して衣鳩に手渡した。
「調査室ですね」
衣鳩は黒川に確認すると、
「
戸惑った様子で黒川が、あきらを呼んだ。
みつるも振り返り、部屋を見渡した。直前までいた場所に、あきらと
「ここです」
香那の机の真下から左腕が突き出された。その手を左右に振りながらあきらが答える。
「なにをしているのかは知らんが、出利葉もこっちに来てくれ」
すぐにあきらと香那が机の下から姿を現した。
あきらはあからさまに助かったという笑みを浮かべ、なにか小さなものを香那に手渡している。
不機嫌そうな香那のオーラを背中に受けながら、あきらはこちらへとやって来る。
「なんです?」
みつるの隣に並び、あきらが黒川に
「すまないが昨日起きた渋谷駅での事故を、二人に調べてもらいたい」
「しかしそれは、調査室の仕事なのでは?」
あきらが疑問を口にした。
「判っている。だから最初にすまないと言った」
黒川は苦笑して続ける。
「調査室の方は新宿の調査だけでも手一杯なんだよ。タイミングが悪いことに、東京駅地下で原因不明の震動が続いているとの報告が届いたから、そちらにも調査員を派遣することが決まって、もう全く余裕がない」
「では、東京駅でもなにか起こると?」
みつるはその震動というのが気になった。予感めいた嫌な感じがする。
「新宿、渋谷と続いたからな。不安にもなるだろう」
黒川が伏し目で答えた。
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