第1-a話

 新年を迎えてから二度目の日曜日ということもあり、新宿は多くの若者や家族連れで賑わっていた。巨大なデパートが密集するこの地域は、多くの人々を惹きつける魅力を持っている。


 その内の一つ、新宿駅から直結しているデパートの中に多紀本結たきもとゆいはいた。


 高校三年の冬といえば大学受験で忙しい時期ではあるが、結は既に推薦で合格が決まっていた。


 おそらく今年で最後になるだろうお年玉を手に、卒業後は長野の実家の仕事を手伝うことになっている友人、片桐悠月かたぎりゆづきと一緒に遊びに来ていた。


「後で渋谷にも行こうね」


 悠月が嬉しそうに話しかけた。


「うん……」


 結は無理に笑顔をつくり、短くそう答えた。


 悠月とのショッピングは久しぶりだし、卒業したら現在のように簡単には会えなくなってしまうだろうから、この日をとても楽しみにしていた。


 でも、結には一つ気懸かりなことがあった。

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