カレーのアミちゃん。
屋台が連なるエリア。冷静な女子大生の冷たい視線を浴びて、当たり前に興奮しながら人混みを掻き分けるようにして奥へ進む。
すると次第に、いかにもカレーっぽいスパイシーなスメルが漂ってきて、オリジナルカレーという黄色のノボリが見えてきた。
そしてそのテントには愛しのポニテちゃんの姿が見えた。お客さんに愛想よく笑顔を振りまきながら接客に励んでいる。
思わず涙ぐむ俺。胸が締め付けられる思いになった。
「おーい、さやちゃーん!」
テントの店先から俺は声をかける。
するとそれに反応した彼女のおっぱいがエプロンの中で揺れた。
「新井さん!!」
俺を見つけたポニテちゃんの表情が弾ける。
接客スマイルとはまた違うまるで幼い女の子のような無垢な笑顔だ。
テントの中からダッシュで走り、自慢のポニーテールをぷるぷると揺らして彼女は俺に向かって迫ってきた。
ぎゅっと抱きしめられるんじゃないかと一瞬胸が高まったが、彼女は急ブレーキをかけると、俺の両手を握るまでにとどまった。
「って………何でユニフォーム姿なんです?」
「え?サヨナラヒット打って、そのままタクシーに乗って直で来ましたよ」
「………招待した私が言うのもなんですが………本当にバカですね……」
その冷たい視線。
たまらないぜ。
「でも、私嬉しいですよ。 本当に来てくれたんですから!ちょっと無理かなって思ってましたし! しかもサヨナラヒットを打つなんて! 帰ったらハイライトをチェックしないと!」
ユニフォーム姿よりも、ギリ来てくれたというその男気ポイントの方が高かったようだ。
ポニテちゃんは俺の両手を包み込むように握ったまま、ぶんぶんと激しく振り回す。
ポニテちゃんのお友達だろうか。同じカレーの屋台にいる女の子達が微笑ましそうな視線で俺達を見ている。
「当たり前だろ。約束は必ず守る。それが俺という男よ」
「………え?」
え? じゃなくて。………ぽってなりなさいよ。ぽっ………って。
しかも彼女は続ける。
「そういうセリフは、みのりさんに言ってあげて下さいよ!」
「うるちゃい!」
「まあ、とにかく座って下さい! すぐにカレーを用意しますので!」
ポニテちゃんは投げ捨てるように俺の手を離し、テントの中へと案内し、並べられたパイプ椅子の1つに座らせる。
どうやらさっきの俺のセリフは、彼女の豊満なそれのせいで胸の奥まで届かず、途中のところで挟まってしまったらしい。
今日彼女がシャワーを浴びるまでそのままになってしまうだろう。
「新井さん。私があげた食券はお持ちですか?」
「もちろん。……はい。」
俺は財布からぺらぺらの食券をポニテちゃんに手渡す。
「飲み物は何にしますか?」
「………じゃあ、コーラで!」
「お待たせ致しましたー!!」
数分すると、ポニテちゃんがシルバートレイを両手に再登場。
「アミちゃん特製のポテトキーマカレーでーす!」
「うおうっ!! 美味しそう!!」
シルバートレイに乗せていた真っ白の四角いプレートが目の前のテーブルに置かれると、カレーのスパイシーな匂いがダイレクトに俺の鼻先を刺激する。
「よいしょっと!」
そしてもう1つの同じプレートを置いた隣の席にポニテちゃんも着いてエプロンを外した。
「あれ? お店はもういいの?」
「はい。アミちゃんが自由時間をくれたんです! 新井さんと一緒に遊んできなって」
「へー。そのアミちゃんてどの娘?」
「あの、大きい鍋の前にいる娘です。私の1番の友達なんです!」
カレーの入っている寸胴鍋を俺が打席に入っている時よりも真剣な表情でかき混ぜている女の子。
耳が隠れる程度のショートヘアーで、日焼けした小麦色の肌。エプロンの中に、何かのスポーツシャツを着ているボーイッシュな印象の女の子だ。
俺はその優しいアミちゃんに向かって、大声でアミコールをした。
「アーミ!アーミ! アーミ! アーミ! アーミ!」
「止めて下さい!みのりさんに言い付けますよ!」
パチーン!
ポニテちゃんに平手打ちされた……。
気持ちよい。
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