コリジョンルールと新井さん2

などと、いろいろ妄想していたら、やっと審判団がグラウンドに戻ってきた。


「えー。皆様にご説明致します。ただいまの本塁でのクロスプレーですが、ビデオ判定の結果………コリジョンルールを適応致しまして、新井選手のホームインを認め、スコアは7ー6。2アウトランナー2塁で試合を再開致します」


責任審判のおじさんがそう言うと、ビクトリーズファンの歓声とスカイスターズファンのブーイングが入り乱れた。


そしてスコアボード。10回表に「1」と数字が入り、7ー6。ビクトリーズが阿久津さんのタイムリーツーベースという形で1点を勝ち越した。


「やりましたね、新井さん!」


「新井さん、ナイスランっす!」



「ナイス、ナイス! よく走ったな!」


固唾を飲んで審判団の判定を待っていた、柴ちゃんと桃ちゃん達が嬉しそうに俺の肩をバシバシ叩く。


「いやあ、俺は何もしてないよ」


照れた俺がそう返すと、2人は俺の両隣に腰を下ろし、力説する。


「あれは新井さんのベーランが上手かった結果っすよ!」


と、柴ちゃん。



「そうですね。相手はまさか新井さんがホームに突っ込んでくるとは思っていなかったみたいなんで、焦ってましたよ」


桃ちゃんも右隣でニカッと笑って俺を褒める。


なんだかくすぐったいなあ。







「10回ウラ。2アウトランナーなし。マウンド上はビクトリーズのクローザー、岸田。カウント1ボール2ストライク。セットポジションから第4球を投げました! ………低めフォークボール空振り三振! ゲームセット! なんとこのカード、3戦目もビクトリーズが勝ちました!


スカイスターズは最下位相手にあまりにも痛い3連敗!残り13試合で2位北海道に首位を明け渡してしまいました!」


キッシーの決め球フォークボールが、ホームベースの向こう側でワンバウンド。


バッターはたまらずスイングしてしまい、ワンバウンドの投球をガッチリと押さえたキャッチャーの鶴石さんがバッターにタッグして試合終了。


その瞬間俺は、いの一番にベンチを飛び出した。


スカイスターズ相手に敵地で3連勝。


スーパーミラクルだ。




みんなで並んでハイタッチをかわしてベンチに戻る。3連勝したのだから、少しくらい触らせてくれるだろうと近づいた宮森ちゃんのプリンとしたお尻に俺は突き飛ばされた。



「シェパードさん、シェパードさん!………あ、いた! シェパードさん、ヒーローインタビューお願いします」



「オーケイ」



宮森ちゃんに呼ばれたシェパードが自分の荷物を片付けていた手を止めて、ベンチからまたグラウンドへ。


テレビカメラとインタビュアーの前に立ち、慣れない日本語で、時折英語で、通訳とやりとしながらヒーローインタビューをなんとかこなしていた。








東京6ー7北関東


シェパードの看板直撃の驚愕弾も炸裂!全員野球が光った、チームで奪った価値ある7得点。


試合が終わった瞬間、多くのスカイスターズファンが力なく席にもたれかかるようにして大きなため息を吐いた。


最下位北関東相手に、ホームでまさかの3連敗。北海道に首位も明け渡す最悪の3連戦となった。


打線は序盤に6点取りながら、まさかの逆転負け。しかしそこにはビクトリーズの粘り強い集中力があった。


ビクトリーズの先発は5勝目を狙って久々の先発マウンドとなった24歳の千林。しかし、この右腕が大乱調で3回6失点で降板。


しかしこの6点差がビクトリーズの攻撃陣に火をつけた。


反撃の始まりは6回。1アウト2,3塁のチャンスにバッターは新井の場面。相手バッテリー間のミスと内野ゴロでこの回2点を返し、続く7回には6番桃白の犠牲フライで3ー6。


そして8回には再び2、3塁のチャンスを作って、新井がセカンドへのゴロを放つ間に3塁ランナーが返って2点差。


さらに2アウトランナー3塁で阿久津が三振したボールをキャッチャーが後逸。振り逃げでさらに1点を返して5ー6。


ビクトリーズが3イニングでタイムリーなしの5得点で1点差に詰め寄り、水道橋ドームの空気がいよいよ変わり始めた。







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