最下位の意地を見せるビクトリーズ

北関東 320 000 001 6


東京 000 001 010 2



勝 竹倉 1勝2敗 負 ドンコラス13勝4敗



本塁打


北関東 赤月12号2ラン(1回)


東京 平柳19号ソロ(6回)20号ソロ(8回)


北関東が連敗を4で止めた。初回、新井のタイムリーと赤月の2ランで幸先よく先制すると、2回にも下位打線がチャンスを作り、守谷・柴崎のタイムリーでリードを5点に広げた。


北関東先発の竹倉は5回1失点の好投で嬉しい移籍後初勝利。2番手高久も2回無失点と存在感を見せた。


敗れた東京は、平柳のソロ2本による得点のみと打線が繋がらず、先発ドンコラスも3回5失点と誤算だった。




試合後談話。



勝利した北関東萩山監督。


「竹倉が2軍でも見せていたようないいピッチングをしてくれた。シーズン終わりまで、あと3回は先発してもらいたい」


勝利投手の竹倉。


「今日はまっすぐで強気に押せていけた。ビクトリーズでの初めての勝利なので嬉しい。野手の皆さんにも早い回から援護してもらえたのも大きかった。次の登板も頑張ります」



今日2本塁打の東京スカイスターズ、平柳。


「ホームランが打ててもチームが負けてしまっては意味がない。明日はチーム一丸で絶対に勝たなければいけない」


東京スカイスターズ中橋監督。



「今日は相手のピッチャーがよかった。ヒットは出たけど、繋がさせてもらえなかった。北海道にゲーム差なしに並ばれたし、明日は負けられない。先発の石浜に託す」







翌日。水曜日。


東京スカイスターズとの3連戦2戦目。


昨日、首位の東京スカイスターズが敗れ、2位北海道フライヤーズが勝ったため、両チームが20日ぶりに同率首位に並んだ。


シーズン前半戦まで独走状態も、後半戦頭から失速し、ペナントレース連覇が怪しくなってしまったスカイスターズは本当に今日こそは絶対に落とせない。


最下位のうち相手に連敗は許されない状況になった。


そんな中先発したのは現在ハーラートップタイの15勝を挙げているエース右腕の石浜。


150キロを越える球質の重いストレートにキレ味抜群のスライダーが武器なのだが………。





「ボール! これもきわどいところ外れました。これで満塁になります。んー、石浜のコントロールが定まりません!」



この満塁は3回表。先頭打者である俺へのデッドボールから始まった。



石浜の投げ損なったストレートが俺の可愛いおケツにドスン。どちらかといえば左に

ケツにドスン。前の日に食らった守谷の脇腹をグリグリした罰か。



3番阿久津さんはライトフライ。4番赤ちゃんにはストレートのフォアボール。5番シェパードはインコースを攻めきられてファーストゴロで2アウト。


そして今、6番桃ちゃんにはフルカウントからフォアボール。これで満塁となった。



「7番、キャッチャー、鶴石」









0ー0。


互いにまだ得点機のなかった満塁のチャンスに鶴石さんが打席に入る。


最近、バッティングは不調だが、固定出来ない投手陣を必死にリードして、貧打が故に少ないチームの得点を守る守備の要。


37歳の阿久津に次ぐチームでは2番目に年上になる36歳のベテラン捕手だ。今はなき、静岡ヒーローズの中心選手だったおじさん。


深く息を吐くようにしながら、重心を低く落とすようにして体を沈め、構えたバットを後ろに引いてボールを待ち構える鶴石さん。



そして、狙いすましたようにそのバットが振り下ろされる。


膝元にきた低めのストレートだった。


鶴石さんはそのボールを待っていたのだろうか。



小さく上げた足をしっかり踏み込んで、体全体がぐるりと力強く回る。迷いないスイングでそのボールをしっかりと捉える。


ジャストミート。強烈なライナーとなり、あっという間に俺の視界からボールが消えていった。


ホームに走りながら振り返りつつ、目で打球を追うと、センター左の深い場所。


左中間フェンスの手前までグインと打球は一直線に伸びていく。緑色の人工芝と茶色になっているウォーニングゾーンのちょうど境目辺りでワンバウンド。


俺は鶴石さんの黒いバットを拾いながらホームインした。








「左中間破ったー!! 長打になります!! 3塁ランナーの新井に続いて、2塁から赤月も返ってくる! ホームイーン! ……おっと、少しセンターとショートの中継が乱れていますが……1塁ランナーの桃白は3塁ストップ! 打った鶴石は2塁へ!!


タイムリーツーベース!! 鶴石が石浜の初球を叩いていきました! ビクトリーズがベテランの一振りで2点を先制です! ………今、リプレイが出ています。……打ったのはストレートでしょうか」


「ストレートですね。インコースの悪くないコースでしたけど、キャッチャーが構えたところよりかは少し甘くなりましたね。……いやぁしかし、鶴石が上手く打ったと思いますよ」


2塁ベース上。左腕のプロテクターを外しながら、鶴石さんがベンチに向かって小さくガッツポーズをした。


球界を代表するエース級から、2点先制。相手からすれば、首位キープへ絶対に与えてはいけない点。


その動揺があったのか続く8番守谷ちゃんの打球。



「低め変化球、打ち取った! 高いバウンドセカンドへのゴロ。………あっーと!? 弾いた! 拾い直しますが………1塁投げられません! 記録はセカンドのエラー!3塁ランナーがホームインでスカイスターズは痛い3点目を許しました!」

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