奥田さんは平柳君にさりげなく結構打たれてる。
「平柳が2球目を打ちました!! いい当たりだ! バックスクリーンへ打球が伸びていく!! センター柴崎がバックする!バックして、バックして、上空見上げた! ……入りました、ホームラーン!!
平柳裕太の今シーズン第20号は、2打席連続となりました!!これで5ー2となりました!バックスクリーンへのホームラン。まだまだ試合を諦めません!」
マジかよ。弾丸ランナー。ベテラン左腕の奥田さんのアウトコースのスライダーを平柳君が強振。
打球が低い弾道のまま、ビュイーンと伸びていって、そのままバックスクリーンの最前列に飛び込んでいった。
横から見ていたら、フェンスに直接当たるかなあとか思っていたら、全然打球が落ちてこなかった。それだけ真芯で捉えたということだろうか。
なんというバッティングだ。
まあ、救いは2アウトでランナーが1人もいなかったこと。5ー2でまだ3点差だ。
しかし2打席連続のホームラン。明日が怖いな。
「2番佐藤も振っていきましたが空振り三振!! 奥田、平柳にホームランは打たれましたが、他のバッターにはヒットを許さず、この8回を投げきりました。……そして9回表、北関東ビクトリーズの攻撃に入ります」
よしよし、ナイス、ナイス。エグいホームランを打たれても何事もなかったかのように後続をしっかり抑えるベテランのピッチングだ。
「9回表、北関東ビクトリーズの攻撃は……8番、セカンド、守谷」
ドゴォ!!
「デッドボール!」
うっわ!すっぽ抜けたボールが守谷ちゃんの脇腹に。しかもストレート系の速いボール。
ボールが当たった瞬間、ベンチにいた全員の顔が歪んだ。
いたそー。後で指でグリグリしてやろっと。
ボールがそのまま地面に落ちるくらいまともに脇腹に当たり、守谷ちゃんが左手で押さえながら、ベンチを飛び出したトレーナーにスプレーを吹きかけられながら1塁へ歩いていく。
苦痛に顔が歪んでいる面白い顔。
それでも少しまだよろよろとしながらも守谷ちゃんは1塁ベースにたどり着いた。
ユニフォームとピンク色のアンダーシャツをめくって、ボールが当たった場所を確認している。
「北関東ビクトリーズ、選手の交代をお知らせします。バッター奥田に代わりまして……浜出。バッターは浜出」
お! ピッチャーの奥田さんに代わって出てきたのはなんと浜出くん。こんな終盤のノーアウトランナー1塁で出番を貰うなんて、なかなかやるじゃない。
コツン。
「浜出は初球、セーフティ気味。3塁線に転がしました。………1塁へ送球しましてアウトで、送りバント成功。1アウトランナー2塁で打順はトップに返ります」
今日はタイムリーを放つなど、既に猛打賞を記録している柴ちゃんがバッターボックスに。
じっくりとボールを見極め、真ん中に甘く入ってきたストレートを叩いた。
いい当たりも、セカンド正面のゴロ。
2アウト3塁で俺の打順が回ってきた。
ゆっくりと歩いて打席に向かう。相手はサイドスローで左右の幅を広く使ったピッチングをしてくるサウスポー。
そのピッチャーとの距離感を測るようにして、目を離すことなく、集中を高めてバッターボックスへ。
狙うはインコースにぐいっと食い込んでくるスライダー1点勝負。その他のボールが来たらごめんなさいだ。
アウトコースに打てるボールは投げてこない。絶対にインコースに勝負球のスライダーを放ってくるはずだ。
なんて読みが簡単なように的中してしまうのが今の俺で、苦手なインコースをスライダーでえぐったろ!というバッテリーが逆に驚くくらいに、狙いすましたボールにジャストミート。
打球は三遊間を抜けてレフト前! かと思ったら、三遊間の深いところでこの打球を平柳君が追い付く。
そして1塁へ矢のような送球。
やべえ、アウトになる!?
俺が必死のヘッドスライディングで応戦すると、送球が右に少し逸れて、1塁手の足がベースから離れた。
それにより、ビクトリーズに大きな6点目が入った。
試合が決まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます