みんなでバーベキューを楽しむ新井さん

夕方。


みのりんの部屋でホットケーキを頂き大満足した俺。


しかし、これ以上一緒にいると、彼女にガバッといってしまいそうな気がしたので、一旦冷静になるために自分の部屋に戻った。





そして、テレビとその横に縦置きしてあるエンジョイステーション4。コントローラーのボタンを押して、ゲーム機を立ち上げる。


先日発売されたRPGゲームをダラダラとプレイしながら、夕飯までの時間を潰していると、スマホがピコピンと鳴いた。



ギャル美からメッセージが届いたのだ。



しかも、4人のグループメッセージではなく、俺宛に直接送ってきた。ちょっとドキドキしてしまう。



マイマイ


ねえ、いいコト教えてあげよっか?





メッセージを見た瞬間、さらにちょっとドキッとした。



時人



なに?いいコトって。



マイマイ



どうしてもっていうなら、教えてあげてもいいけど。



時人



じゃあ、いいです。



マイマイ



ちょっと! ノリ悪いわね! そこはなんでもしますから、教えて下さいっていうのがスジでしょうが!





ちっ。なんなんだよ、めんどくさいなあ。そう思ったが、ヘソを曲げられると余計にめんどくさいので、しゃーなし乗ってあげることにした。





時人



なんでも言うこと聞きますから、そのいいコトっていうのを教えて下さい、マイさま!



マイマイ



よろしい。












…………明日、みのりの誕生日だよ。







ギャル美からのメッセージを見た瞬間、俺はいてもたってもいられなくなりつつも、ゲーム機はちゃんとスタンバイモードにして、財布だけを持って、部屋を飛び出した。


そしてまた、昼間行ったばかりのビクトリーズスタジアムモールを目指す。


路線バスなど待ってられん!


俺は宇都宮の街を疾走した。


一刻も早く、みのりんへのプレゼントを買いに行かなければ! 俺の気持ちはそのただ1つだった。


走力E肩力E守備力Eの俺はひたすらに、脇目もふらずに、夕暮れの街を走り抜ける。


途中で迷子の女の子を母親の元まで送り届け、公園の木に引っかかっていたボールを取り、ひったくり犯を引っ捕らえ、大荷物を抱えたおばあちゃんを背負って歩道橋を渡ったりもした俺は、命からがらようやくショッピングモールへとたどり着いた。


そして駆け込んだのは、昼間精肉店に向かう時に通りすぎた、若い女の子向けのショップ。


もうまもなく閉店時間のようで、網目のシャッターを下ろそうとしていた女性店員の足元に、得意のヘッドスライディングで滑り込む。


「はぁっ、はぁっ!すいません………こ、このバッグをぐださい………。プレゼント用で……」



「か、かしこまりました………。そのヘッドスライディングはもしかして………ビクトリーズの新井選手ですか?」




恐らくはプロ野球選手史上初。ヘッドスライディングで身バレした男誕生。




「……………そ、そうです。よく分かりましたね」



「………あなたのファンなので。この前は一緒に遊んで下さって。とても楽しかったです。ありがとうございました」









あれ? どっかで会ったっけ?




まあ、いいや。









そして翌日。バーベキューの日がやってきた。



「ありがとうございましたー。またよろしくお願いしまーす!!」



午前11時きっかり。注文していたお肉が増田精肉店のおばさまによって届けられ、それを持ってみのりんの部屋へ。



「わあ、すごい! 美味しそうなお肉だね。それに、結構おまけしてもらっちゃったみたいだね!」


「そうそう。後でお礼の電話しとかないとね。そろそろバスの時間だから行こうか」



「そうだね、よいしょっと……」



みのりんは両手に、お酒の缶や野菜がいっぱいに詰まったビニール袋を持ち上げる。


とても重そうだが、俺もお肉の入った発泡スチロールの箱で両手がふさがっている。こっちもドライアイスがパンパンに詰まっているので同じくらい重たい。


困ったな。



と、思ったら…………。



ピンポーン!!


タイミングよくチャイムが鳴った。


よし! ナイス、おっぱいちゃん!



「お邪魔しまーす! あ、新井さん、みのりさん。おはようございます」



予想通りのポニテちゃんが現れた。気の利く子だからもしかしたら来るんじゃないかと思っていたよ。



そして現れたポニテちゃんはすぐに察する。



「みのりさん、重たい方の袋持ちますよ」


「ありがとう、さやちゃん」



「いえいえ。今日はごちそうになるんですから、少しでもお手伝いさせて下さい」



ええ子やなあ。と、みのりんと一緒にほっこり。





出発。



俺とみのりんが住むマンションから、歩いてすぐのバス停まで3人で楽しくおしゃべりしながらテクテクテクテク。


今日は雲1つないような見事なまでの快晴。


よって真夏の強い日差しが容赦なく俺達を照りつける。


「今日も暑いですね」


「でも、晴れてよかったよね」


缶ビールやワインなどが入ったビニール袋を軽々と手に下げながらも、キャップを被ったポニテちゃんは笑いながら額の汗を拭った。


「しかし、ほんとあちいなあ。こんな日はキンキンに冷やしたビールが美味いぞ! さやかちゃんのリクエストに応えて、美味しいホルモン買ってきたから楽しみにしてろよ!」


「やったあ! すごい楽しみです! 今日は朝ごはんも抜いてきましたから、たくさん食べますよ」



ポニテちゃんはさらにテンションが上がったようで、さらにポニテを振り回すようにして、意気揚々と前を歩く。


その後ろで、みのりんが不思議そうな顔をしていた。



そんな彼女の柔らかいほっぺたをぷにぷにしてみる。


「マイちゃんはまだかな? さやちゃんと一緒に私の部屋に来るはずだったのに」



みのりんがそう呟き、俺は少しまずいと思った。



ギャル美にちょっとお願いごとをしていたから。


なんて言ってごまかそうかと考えていると、向こうに見えたバス停に、そのギャル美の姿があった。

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