リリーフの皆さんは頑張って
「8番守谷は空振り三振! ビクトリーズ、この回は結局4点止まりという形ではありましたが、4回裏攻撃終了。しかし、4ー1! 見事な集中打で逆転に成功しています」
攻撃が終わり、マジで? マジで?と半信半疑な形ながら、互いにハイタッチをかわしながら、チームのムードが一気に変わったのを実感しつつ、守備位置に就く。
点を取った直後は本当に大切だ。俺はレフトの守備位置から、マウンド上の碧山くんに祈りを捧げる。
なんといっても15連敗中ですから。あと5点10点のリードがあってもまだ足らないくらい。
それに相手は首位の東京スカイスターズ。
その逆転された彼らが、下位打線からの攻撃で粘っこい繋ぎの野球。
なんやかんやで2アウト満塁されて………。
「低め変化球!! 空振り三振!! なんとか、なんとか凌ぎました!! 2アウト満塁というピンチでしたが、碧山がなんとか土壇場で踏ん張ってこの回スカイスターズ無得点!!」
危ない。危なすぎる。
全くひやひやさせてくれるぜ。
最後に三振したバッターが途中焦って続けてボール球を振ってくれてなければ、押し出しになるようなピンチだった。
ともかく無失点。4ー1のままだ。ナイスだ碧山君。
そう思いながら戻ったベンチの1番後ろで、吉野ピッチングコーチが碧山君の背中をポンポンと叩き………。
「碧山、交代だ。おつかれさん」
ああ、交代か。この5回を投げ終わって碧山君の球数は既に95球。
あと4イニングを12球団1手薄と言われるうちのリリーフ陣でなんとかなるのか?
不安だ。
不安で仕方がない。
嫌な予感とは当たってしまうものだ。
小学生くらいの時、スーファミをしていたら、突然母親が掃除機を掛けはじめてこちらに接近中みたいなそんな状況。
あとちょっとで教会に着く。あと20秒もあればセーブ出来るというところで、ガツンとやられてデータが飛んでしまったり。
中学生の時、ロリサキュバスに目覚めた俺がただならぬ決意で、学校から遠い目立たぬ本屋でいざ聖書を購入しようとしたまさに瞬間に、巡回していた教師に見つかって、野球部の監督にチクられて1ヶ月部活謹慎になったり。
大人になってからもそう。
ある夏真っ盛りの日に、パチンコをしていたら、大当たりした瞬間に、カミナリが落ちて、店が停電。
すぐに明るくなったのはよかったのだが、俺の台だけ基盤が飛んで、結局2時間待っても復旧できずに泣く泣く家に帰ったりとか。
最近もそう。
とある夜更けに、部屋でみのりんとこれ以上なく超絶いい雰囲気になって、あとは彼女を抱き上げてベッドにぶん投げるだけ!
というところで、はろーん! とか言って空気読めないギャル美がピンポンしてきたりとか。
もうほんとに嫌な予感というのだけはよくあたりますよね。
まあそんな思い出しをしている間に、気付いたら8回終わって4ー4の同点になっちゃってたねー。
というそんな状況であります。
同点になってしまった流れ。
4ー1で6回表。試合の後半戦に入ったのだが、先頭打者のなんでもないショートゴロを赤ちゃんがファンブル。
そのランナーが返って4ー2。
7回。この回からマウンドに上がったベテラン左腕の奥田さんが簡単に2アウトを取るも、1番平柳君にインコースの変化球を上手くライトポール際に放り込まれ1点差。
8回セットアッパーのリ・ロンパオが連打を浴びながらも2アウトまで漕ぎ着けたが、代打を完全に打ち取った打球がセンター前にポトリ。
出てくるピッチャーが1人1点ずつを仲良く失って、同点に追い付かれ、碧山君の勝利投手の権利も消えた。
そして9回表。東京スカイスターズの攻撃。
「これはいったかー!! 左中間へ本岡の打球が伸びているー!!…………レフト、センター見送った!……入りましたー!
9回、スカイスターズ本岡の勝ち越しホームラン! 5ー4! ビクトリーズ、3点差をひっくり返されて再逆転!
岡元は今シーズン第10号! スカイスターズにとっては貴重なホームランとなりました!」
嘘だろ………。
いってしまった。
キッシーのストレートが若干高めに浮き、それをジャストミート。
相手チームの成長著しい期待のホープの打球は左中間スタンドの中段へ。
文句なしのホームランだ。
「初球打ちはセカンドゴロ。守谷がこれを捌いて1塁へ送球アウト。3アウトチェンジ。この回、守護神岸田が岡本に痛恨の1発を献上。1点ビハインドで、ビクトリーズ、9回裏の攻撃に入ります」
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