いじられる新井さん1

ピッとテレビを付けると、なんとかなんとか説などとバラエティ番組が始まった。


いつものように司会の大物芸人がパネラーを紹介すると、その中にいたグラマラスな美女タレントにドキリとしながら、ソースをつけたコロッケをつまんでハイボールの缶を開けながら、しばらくぼけーっとしていた。


すると……。


「ちょっとー! チューハイ持ってきてー!!」


浴室からギャル美の声がした。


なんとなく理解したので、さっき冷蔵庫に入れたぶどうのチューハイを選び、廊下から声をかける。


「はーい、持ってきたよー!」


「サンキュー! 覗かないでよ!」


声を掛けると、少し濡れたままの腕と肩だけが俺の方から見えた。


その手にチューハイを握ったギャル美は礼を言って引っ込み、缶をあける音がした。


廊下にギャル美の腕から垂れた滴がポタポタとこぼれ落ちたが、特別気にすることなく、ハイボールをグビグビと飲みながらテレビを見て笑い声を上げた。




「あー、さっぱりしたー!」


ギャル美が浴室から戻ってきた。


その格好に愕然とした。


ピンク色の薄いキャミソールに、黒いブカブカの短パン。


上も下もよく見えなくても下着がチラチラチラチラ。


いやらしいったらありゃしない。


俺は注意してやった。


「あのさぁ。一応聞くけど、マイちゃんはさ、彼氏はいないよね?」


「はあ? どういう意味? それ」


ギャル美は怒った表情で俺を睨み付けてきたが、そんなはだけた格好では、何の説得力もない。


「いや、別に深い意味はないけど。まあ、彼氏とかいないならいいんだけど」


「なに勝手に決めてんのよ。そんなのあんたに分かるはずないでしょうが」


「いや、仮に彼氏いたとして。そんな格好をしちゃダメじゃん。普通に考えて。俺が欲情して押し倒したら、どうするわけ?」


「は? あんたにそんな度胸あるわけじゃん。童貞のくせに」


「な、なんだとー!!」






確かに俺は今まで彼女なんて出来た試しがないが、それを言えばギャル美だって怪しいもんだ。


みのりんの話の通りなら、わりと仕事一筋っぽいこのニセギャル美に経験があるなんて思えない。


こんな半分はだけたような格好だって、その反動というか、焦りが表に出てきたようなもので、別にー。こんな格好フツーだしー。チョー、ウケる。


なんて平然を装っているが、彼女も内心俺がどう思っているのか、気になって仕方ないことだろう。


好きでもない奴を部屋に上げたりしないだろうしな。


「ところでさぁ、あんたっていつから野球やってたの? 話聞かせてよ」


ギャル美はやきとりのねぎまを頬張りながら、そう訊ねてきた。


「小学校3年生からだよ。そこから高校卒業するまでずっとピッチャーやってたんだぞ」


「へえー、すごいじゃん! チョー、ウケる! あんたがピッチャーねえ」



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