頑張れビクトリーズ3
「シェパードの打球はセカンドへ!! 4ー6ー3と渡ってダブルプレー! 3アウトチェンジ!! ビクトリーズ、8回ウラ勝ち越しならず!」
4番赤月はフォアボール。1アウト1,2塁となった5番シェパードの2球目。長身のイタリア人が放った打球は、セカンドの真正面。注文通りのダブルプレーでチャンス消滅。
結局同点止まりで残すは1イニング。9回を迎えた。
「空振り三振! 9回ウラ、ビクトリーズも得点出来ず! 試合は延長戦に入ります」
互いのチームのストッパーがマウンドに上がり、9回は両チーム0が並ぶ。
試合はそのまま膠着状態が続く。代わる代わる出てくる中継ぎ陣が踏ん張りを見せ、点が入らない。
そしてあっという間に12回に入る。正真正銘の最終回だ。
「これはいい当たり!! ライトの頭上! 桃白がジャーンプ! 取りました、取りました!! 3アウトチェンジ! さあ、これでビクトリーズの負けはありません! 12回ウラ、打順は7番の鶴石からです!」
2アウト3塁のピンチだった。最終回の表。依然2ー2の同点。3塁ランナーさえ返さなければ、負けはない。
しかし、相手打者がこれまたよく粘る。ファウルボール、ファウルボール、1球きわどいボール球を見逃して、またファウル。
そして迎えた11球目。捉えられたいい当たりがライトへ。
やめろ! 越えるな! ヒットになるな! グラウンドにいたナインもベンチにいた選手や首脳陣もビクトリーズファンも。そんな全員が懇願する中、フェンスに直撃しそうになった打球を寸前のところでライト桃白がキャッチ。
フェンスギリギリで高くジャンプし、背走体勢のまま、大きく体と腕を伸ばしながらキャッチ。補球した後、フェンスに背中から体を強く叩きつけながらも、ボールを掴んだグラブを抱え込むようにして守った。
入団当初から、身体能力の高さが注目されていた彼が見せたスーパープレーだった。
これには、好プレー大好きマンの俺も大満足だ。
「あっと、デッドボール!! 12回ウラ先頭の7番鶴石がデッドボールで出塁です」
「これは大きいですねー。問題はこのランナーをバントできっちり送れるかどうかですが」
「そうですね。今日のビクトリーズは試みた2つの送りバントがどちらも失敗していますから。そして、 バッターは8番の浜出です」
「左肘付近にデッドボールを受けた鶴石ですが、大丈夫そうですね。ベンチから出かけたトレーナーを制して1塁へ向かいます。そしてバッターは8番の浜出です。ここまでノーヒットですが、ここはどういった作戦を取るでしょうか北関東ビクトリーズ」
「あれ? ビクトリーズ側はもう野手は使いきってしまったんでしたっけ?」
「いえ! 野手はあと1人。今日昇格したばかりのルーキーの新井がいますね」
延長12回。試合の緊迫した流れに夢中になってしまって今ようやく気付いたのだが。
ベンチに残ってる野手は俺だけじゃねえか!!ホワイトボードに俺の名前しか残ってないっちゅーの。
もう他の面々はなんかしらで、みんな試合に出とるわ!
しかも打順は7番の鶴石さんからじゃねえか、ピッチャーに打順が回るっつーの。
教えろよ、コーチ陣め。
「監督。新井を使います? 一応、ピッチャーの中村は結構バッティング得意ですけど。去年もヒット2本打ってますし」
おいおい、名も知らんヘッドコーチさんよ。中継ぎ専門のピッチャーと俺を起用の天秤にかけてるんじゃないよ。
正体不明のルーキーとはいえ、素直に俺を使いなさいよ。
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