新井さん、1軍に上がる4

「これはいい当たり!! さあ、北関東ビクトリーズ、4回ウラ先頭の1番柴崎がライト前ヒットで出塁しました。ノーアウトランナー1塁です!」


試合はテンポよく進んだ。


うちの先発である連城君の調子は上々のようで、4回まで無失点。


相手のピッチャーも調子がいいのか、うちの打線がただ湿っているだけなのか。


3回までパーフェクトに抑えられるも、4回先頭の柴崎ちゃんがライト前へ、見事チーム初ヒットを放った。


首位のチーム相手に、うちとしてはまずは先制点が欲しい。


セットポジションに入るピッチャーに対して、2番の高田さんはバントの構え。


しかし………。


「あーっとこれは上げてしまった。ファーストがフライをつかみました。北関東、送りバント失敗です!」


バントを失敗した高田さんがバットのヘッドを手で叩くように悔しがりながら、ベンチへと戻ってくる。


スタンドのビクトリーズファンからも大きなため息。


相手バッテリーは送りバントを見越して、高田さんの胸元に速い球を放ってきた。


高田さんもバントは得意な選手だったが、失敗出来ないプレッシャーに硬くなったか、フライを上げてしまった。


1アウト1塁。ランナーは残ったが、これが野球の流れ、初球を叩いた3番阿久津さんの当たりは痛烈だったが、ショートの正面。6ー4ー3と渡り、ゲッツー。あっという間にチェンジになってしまった。



これは最下位チームの野球だ。





「これはいい当たり! レフトのシェパードの頭の上を…………越えました! これは、タイムリーになる! サードランナーに続いて、セカンドランナーも返ってきます!!


今、ボールがようやくショートに戻ってきました! 7回表、ついに均衡が破れました! 東京スカイスターズ、平柳の2点タイムリーツーベースで先制です! 連城打たれました!」


ついに連城君が失点。フォアボールとヒットに送りバントを決められて迎えた1アウト2、3塁のピンチ。


迎えた相手1番の平柳が2球目の変化球を叩くと、打球はレフトへ。


呼び込む東京スカイスターズファンの歓声と北関東ビクトリーズファンの悲鳴が交錯する中、打球はレフトシェパードの頭の上を越えた。


2点を失い、なおランナー2塁のピンチに、タイムを取ったピッチングコーチがマウンドへと向かう。








「大丈夫か、連城。まだ行けるか」


「はい。大丈夫っす」


「よし。まだまだお前には投げてもらうぞ。2番3番は右打者だ。外目の変化球中心でかわしていけ。鶴石、頼んだぞ。上手くリードしてやってくれ」


「はい」




ピッチングコーチがマウンドに向かって、ちょうど1分ほど。内野陣を集めてバッテリー中心に何か話していたようだ。


恐らくは、これ以上長打を打たれるなと、外中心の攻め方に切り替えろと、そんなところだろう。


しかし、今日は東京スカイスターズとの3連戦の最終日。とはいえ明日からは、東北との3連戦が控えているし、なるべく中継ぎ陣は温存したい。


とはいえ、これ以上の失点はきついけど、連城君にはここを凌いでもう1イニング。8回まで投げてもらえたら、非常に助かるよなあ。



「バッターは、2番センター佐藤」

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