ギャルのおケツを追いかけて。

「あれ?あの時のやっぱりあんたじゃん! チョー、ウケるんだけど」




顔にかけていたタオルを外して体を起こしてみると、午前中ランニングの途中で立ち寄ったコーヒーショップ、シェルバーのテラス席で隣の席に座っていたギャルが何故だかそこに立っていた。




そして俺のバテバテの辛そう表情を見て、ゲラゲラと笑い声を上げた。



とはいえ、なんだかんだで俺のことが気になって追いかけてきてしまったというところだろうか。



「あんた、プロのヤキュー選手だったのね。今、キャンプ中なんじゃないの? どうしてグラウンドで練習しないで、1人で道路の上で転がってんの? チョーウケる! 2軍なら練習しろっての!」




チョー、ウケる。チョー、ウケる。うるせえなぁ。



「見て分からんかね。絶賛練習中なんだよ!この坂を繰り返し猛ダッシュして、ちょっと休んでいただけさ。君こそ何してるんだね。ここは関係者以外立ち入り禁止だよ」




「何しに来たのかって? そんなの仕事しにきたに決まってんじゃん。私、めっちゃ関係者なんですけど。チョー、ウケる」




仕事? 関係者だと?こんな2軍の練習場に何の仕事で来るんだよ。プロ野球とは一生無縁そうな小わっぱギャルが。



ちなみに何の仕事だと問い詰めて見たものの、彼女は目を細めるようにして面白がる表情を浮かべた。




「えー!? 何の仕事してるかって? 別にー、ベラベラ誰かに話すことじゃないしー。私のこと構っている暇があるなら、早く練習しろってカンジだしー。なにー、そのカオ。チョー、ウケる」




このギャルは1人でそんな風にぺちゃくちゃぺちゃくちゃ喋り出し、最終的には呆れた俺の顔を見て笑いやがった。




そっちがそう来るならばと、短いホットパンツから剥き出しにしてるその白く美味しそう太ももはけしからんと坂ダッシュの時よりも速い猛スピードで追いかけてやった。




「キャー!! あんた!チョー、変態じゃん! チョー、ウケる」




と言って、きゃっきゃっ喜びながら逃げ出し、そのまま練習場の中にいなくなってしまった。




しかも、選手は入れないような、お偉いさんだけが通される応接室の方へと消えていってしまった。




だからどうしていちギャルが普通に球場に入れんだよと疑問に思いながらも、俺は食堂でたらふくバナナを頬張った。



そしてトレーニング再開だ。


「……そうそう。ゆっくり上げてー………ゆっくりおろーす………オッケイ、オッケイ。…………ゆっくり上げてー。……おろーす……。はい、オッケイ! 新井君、5分休憩ね!!」




ふっしゅーっと、全身の空気が抜けるように脱力して俺はマットに突っ伏した。




午前中の上半身トレーニングに続いて、今度は太ももやふくらはぎの筋力トレーニング。




トレーニングチェアに座り、足の先に重りをつけた器具を上げたり下げたり。




うつ伏せになって、足首に付けたフットバーベルを上げたり下げたり。




あかん。死んでしまう。球団にひっそりと殺されてしまう。




俺は今日1日のメニューをこなしながら、そう感じていた。




わずか5分の休憩の間になんとかトレーニングコーチをロープで締め上げて逃げ出そうと企んだのだが、逆に関節技を決められてしまったのだ。




そして、1セット余計にトレーニングが追加されてしまった。

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