第2話【第2の邂逅】

 夢だ。


 …多分、夢だ。

 今までならば、あのお姉さんが出てくる夢を見たときは、すぐに夢だと分かった。

 ――ただ、今度は分からない。

 何となく“違う”気はするのだが、やけにリアリティがある。夢とは元々不定形な物で、リアリティがあるからといっておかしなものではない。でも、肌に感じる風が、痛みが、何より、あのお姉さんの髪から漂ってくる香りが、この夢を夢たらしめない。

 そして、お姉さんが本当に存在していたことが、夢と現実の境目を曖昧にしていた。


「こんにちは」


 声が、した。

 それは、目の前にいる例のお姉さんの声のようだ。

 泣き声でない、ちゃんとした彼女の声を初めて聞いた。

「こんにちは」

 僕も答える。

「大丈夫?」そう言って彼女が手を差し出す。

「ありがとうございます」

 彼女の手を借りて立ち上がった僕は、しっかりと礼をした。


 初めて話したはずなのに、こんにちはで始まる会話に違和感を感じつつ、僕は学校の医務室で目を覚ます。

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