僕の夢に住む彼女
幻典 尋貴
第1話【始まりの始まり】
懐かしい夢を見た。
公園で友達と遊んでいる夢。多分、サッカーだった。公園の奥の方にある東屋に居る、綺麗なお姉さんに見惚れてシュートを外した。
何故だか定期的に見る夢。
もう、本当に起きたことだったのか、夢だけの話なのかはわからない。
でも、何度見てもそのお姉さんは美しかった。
――何度見てもそのお姉さんは泣いていた。
コーヒーを一気に飲み干し、家を出る。
適当に鍵を閉めて、走って階段を降りた。
一人暮らしを始めて二日が経った。このアパートから学校に行くのは今日が初めてで、どれぐらい時間がかかるか分からないため、早めに家を出ようと思っていたらこれだ。ご飯を食べた後に二度寝してしまっていた。
錆びて硬くなった鍵をなんとか解錠して自転車にまたがる。腕時計は八時を示していた。マップアプリの表示ではギリギリ間に合わない。必死に足を動かした。
ウォーキングをするお爺さんの横を通るたびに睨まれ、その度に頭が下がっていく。次にお爺さんがいたら前が見えなくなるのではないかというところで、目の端に宝石のような輝きが映った。
否、それは宝石ではない。宝石のような輝きを放つ栗色の髪、胸あたりまで伸びた髪は風に揺れてシャンプーの匂いを辺りに散らす。
名前の知らない花の匂いがして、つい自転車を漕ぐ足が止まった。
僕の意思と関係なく自転車はそのまま進み、電柱に派手な音を立てて衝突した。
僕の意識はそこで途断える。
不幸中の幸い、学校は目の前だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます