第30話 確信
「梓」
「何? 勇人」
「大丈夫か?」
「何が?」
切り返し方も、笑い方も、いたって普通に見える。
だけど、どこか辛そうだった。
「体調、まだ治らないのか?」
梓の様子は変わらない。
変わらない筈なのに、時々虚ろな目をしていることがある。
遠くを見ているような、そんな目だった。
「勇人が気にすることじゃないから」
言いながら、何度か目を擦る。
眠そうな姿は誰かと重なる気がする。
「なあ、梓」
「何?」
「眠れないのか?」
梓はきょとんとして、首を振って笑う。
「眠れてるから大丈夫」
「そうか。なら――」
『俺』は梓に向かってこう言った。
「今が一体、いつか分かるか?」
「え? それは――」
梓はなんてことのないように西暦を口にする。
「――でしょ?」
梓の様子は変わらない。
仕草も声も、至って普通に見える。
だけど、『俺』は反射的に梓の腕を摑んだ。
「勇人?」
「――行くぞ」
引きずるような形で、梓を連れて行く。
「行くってどこへ――」
「鬼頭先生のところだ」
困惑する梓に、『俺』は振り返らずに口にする。
途端、梓が息を呑むのが分かった。
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