第18話 音
音が聞こえる。
「うあああああああああ!」
「きゃああああああああ!」
阿鼻叫喚の地獄絵図。
『彼』にはそう見えてしまうかもしれない。
一面、見渡す限り、赤、赤、赤、赤。
『彼』にはきっとそう映ってしまうだろう。
だけど、それでいいのだ。
『彼』がこの景色を見て何を思うか。
怒りか、苦しみか、悲しみか。
どんな感情でもいい。
『彼』からどんな感情を向けられても、≪私≫には関係ない。
むしろ、好都合だ。
『彼』が≪私≫を意識すればするほど、≪私≫はもっと強くなれる。
『彼』にとって不都合な世界に成り果てる。
『彼』がこの世界を不都合に感じれば、≪私≫は『彼』を連れ出すことができる。
助けることができる。
だから、≪私≫は――
「おぎゃあ、おぎゃあ」
足を止めれば、そんな『音』が聞こえた。
瀕死の重傷を負った相手の中で、ひっきりなしに泣き叫ぶ。
≪私≫は、それを何の躊躇もなく、手を伸ばす。
刹那、『黒』が飛び散った。
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