第17話 嫉妬
どうしても言えない。
そんな感情を持て余していて、
「言えよ」
友人に言われた。
「言って楽になれよ」
「自白を強要するなよ」
「するだろ。普通に」
友人に真っ直ぐな眼に射抜かれて、『俺』は言葉を窮してしまった。
「楽になりたいんだよ。もう……」
「……」
「オレなんか秒だぞ、秒」
泣きそうな顔で、友人は言った。
「好きだったんだよ、こっちは」
知っていた。友人が『俺』と『君』が歩いていたら、
からかいながらも、辛そうな顔をしていたことを。
上手く行けばいいと思っていた。
『君』と友人ならお似合いだし、何より、友人相手なら諦められる。
言わない理由ができる。そんなことを考えていた。
最低、そのものだ。
「お前が何考えてるか分からないけどさ」
「……」
「言えば良いだろ」
「俺は……」
「言えばいい」
友情と嫉妬がごちゃ混ぜな目を向けられた。
「オレは、お前が羨ましい」
「……っ」
羨ましいのは『俺』のほうだ。
人気者で、明るくて、真面目で、気さくで、
そんな友人を誇りに思う一方で、妬ましさも感じていた。
彼のようだったら、
『君』に好きだと言えたのに。
* * *
「勇者?」
「けん、し……」
「良かった、目が覚めたんだな」
剣士はほっとした様子で息を吐いた。
「びっくりしたぞ、急に倒れたから」
「倒れた……?」
「ああ」
宿か何かだろうか。天井が見える。
どこだろうか、ここは。
「……剣士」
「?」
「聖女様のこと、好きか?」
「は!!?」
驚くほど、剣士の顔は真っ赤になった。
「なんだよ、急に……」
「……」
黙って見続ければ、観念したらしい。
「まぁ、お前には悪いとは思ってる」
「じゃあ、」
「けど勘違いするなよ? オレはお前と聖女様の仲を邪魔するつもりはないし、上手く行けばいいと思っている」
剣士は聖女を想いながら、勇者のことも大事に思っていた。
「『魔女』を討って、早く幸せになれよ」
純粋に思っている表情に、誰かの表情が重なった。
『オレはお前が羨ましい』
割り切れない感情をぶつける友人の姿。
その姿が今、無性に懐かしく思えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます