第13話 再会
夜を切り取ったら、こんな姿になるのではないだろうか。
周囲に溶け込むように、なのに不思議なほど存在感を持っている。
赤黒い瞳が、じっとこちらを見つめている。
「……」
話そうともせず、かと言って、何か仕掛けてくる訳でもない。
月明かりに照らされた姿に、思わず息を呑んだ。
惨殺された隊員のように、殺されるかもしれないのに。
見入った勇者に、『魔女』は何を言うでもなく、
泣きそうな顔で、こちらを見てきた。
「……っ」
なんでそんな顔をするのか。
大勢死んだのに。目の前にいる相手を手に掛け、
仲間の仇を取らないといけないのに。
それを見るだけで、憎悪も悔しさも湧いてこない。
おかしいのかもしれない。
狂っていると言われるのかもしれない。
それでも、目の前にいる少女が勇者にとって憎む対象にはならなかった。
「―――」
『魔女』が何かを言いかける。
「勇者様」
草木を掻き分ける音がした。
振り返れば、隊員の一人が心配げに、座り込む勇者を見下ろしてきた。
「勇者様、もうお休みなられた方がよろしいかと」
「ああ、分かった」
すでに『魔女』の姿はなかった。
逃げた訳じゃない。
『魔女』はその気になれば、勇者を含めた全員を皆殺しにできる。
大陸全てを滅ぼすのだから、それぐらい当然だろう。
そこまで考えて、疑問が湧いてくる。
何故彼女は、勇者を殺そうとしないのだろうか?
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