第14話 大罪人
「『 』君」
――また、この夢だ。
度々見るせいで、夢を妙に冷静に見ることができるようになってきた。
ただ、この夢は夢だと認識しても、現実に戻ることはできない。
「いつものを出しておくから」
優しげで、穏やかな声が耳に届く。
誰だろうか。この人は。
「はい、ありがとうございます。先生」
勇者の疑問に答えることなく、『俺』は『先生』に礼を言った。
不意に、『先生』と目が合った。
声と同様に、優しげな目尻には苦労と疲れが滲んでいる気がした。
* * *
「錬金術師に会いに行く」
翌日、開口一番魔法使いがそう言った。
「私の魔法が感知しないなんて絶対おかしい」
どうやら魔法使いも薄々感じていたらしい。
だが、錬金術師に会うとはどういう了見か。
「魔法使い様、錬金術師に会うとはいったいどのような」
「あの人だったら、答えてくれると思うから」
その割には、苦々しい声音で、嫌悪を隠そうともしない。
勇者を含めた隊員たちに何も言わず、移動魔法の術式を展開する。
「魔法使い」
「勇者?」
「……昨日は悪かった」
謝罪すれば、何故か魔法使いはきょとんとした。
「昨日?」
「ああ」
「何が?」
「え――」
心から不思議そうな顔で、魔法使いは勇者に聞き返す。
「昨日、何かあったっけ?」
* * *
空に届きそうなほどの塔がある。
「魔法使い様、ここは――」
「皆はここで待っていて」
喘ぐような、恐怖が滲んだ声が、あちこちから漏れ出ている。
隊員たちの物だった。
「ここからは、私と勇者で行くから」
念のためと言いながら、隊員達の周囲を防御魔法で覆い、
魔法使いに連れられるがまま、勇者は階段を登っていく。
「魔法使い。ここは――」
「私のお師匠様なの」
不意に魔法使いは呟いた。
「ここはお師匠様が出られないよう、魔法が使えない特殊な場所」
「だから、お前も使えないのか」
「そういうこと」
「けど、お前の師匠がなんでこんなとこ」
「決まってるじゃない」
断言して、魔法使いは振り返る。
「ドラゴンに与して解き放った、大罪人だからよ」
* * *
永遠にも思えるほど、長い階段を登りきれば、
牢屋に囚われた誰かがいる。
「……やぁ」
柔らかな声音が耳に届く。
「お久しぶりです、お師匠様」
「……ああ、魔法使いか。久し振りかな?」
「約百年ぶりです」
「そんな時間になるのか……」
感慨深そうに、呟く錬金術師――大罪人と不意に目が合う。
「……魔法使い。そちらの方は?」
「……この人は」
「――先生?」
魔法使いの言葉を遮るような形で、勇者は言った。
殆ど無意識にも近かった。
「先生ですか?」
驚く魔法使いに気付かぬまま、震える声で呼ぶ。
目を見開いた錬金術師は、そのまま目尻を和らげる。
「ああ……久しぶりだね」
苦労の滲んだその顔は、
夢で出会った『先生』と全く同じ顔だった。
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