.5話「信仰と崇拝」
「シンギが通う学び舎には、確か異国の神を祀る寺院があるんじゃったな」
仕事に呼び出されることは無く、僕は自室で学校から出された課題を片付けている最中のことだ。クロにそんな言葉を投げかけられた。
僕は課題に向けていた視線をクロに向ける。さっきまでベッドの上で僕のスマートフォンを勝手に弄ってソーシャルゲームに勤しんでいたらしいが、何か思い至ったのか、僕にそう話しかけてきたらしい。
彼の言う『異国の神』と言われて少し考えてしまったけれど、僕が通っている学園にはカトリック系の教会があることを思い出した。
「そうだね。宗教に詳しいわけじゃないから、どういう神様かはわからないけれど」
「ふむ。まあ最近の宗教はたくさんあるからの」
「そういえば、クロはいいの?余所の神様を祀る学校に
「構わんよ。わしみたいな小さな物ごときに言えるものじゃあるまい。それを言えば、この国は八百万の神々を祀っておるのじゃぞ?今更異国の神の傍に置かれるようなことがあったところで何も言わんよ。仲良くできるかは別としてな」
確かに。この国はたくさんの神を祀っている。地域によって信仰している神様が違ったり、なんなら、国外の神、異国の宗教に属する人だっている。この国は宗教に関しては随分と大らかだ。いや、興味がないか、深く考えていないだけかもしれないけれど。
「それに、その学び舎に通う子らも外に出ればわしの社に手を合わせてくれるからの」
「たまにいるよね」
「そういう子らは別に信心深いというわけではないじゃろうが、認知されていることが重要じゃ」
「信仰じゃなくて?」
クロの言葉に僕は首を傾げた。
「うむ。確かに信仰も大事じゃ。信仰し、祈りを捧げてくれる者に恩恵を与えるのがわしらの役目じゃが。それよりも神や仏が認知されていることが何よりも大事じゃとわしは思っておる」
「認知……」
僕が上手く理解できていないことを察してくれたのか、クロは少し考える素振りを見せてから口を開く。
「信仰する神や仏が居らず、あるいは属していたとしても興味がなく、そういった知識がなくとも名をしる神や仏が居たりするじゃろう?例えばそうじゃな……七福神とかじゃな」
「
「そうじゃ。そういうお方々は役割なんぞ詳しくなくとも名は知っとるじゃろう?それと同じじゃ」
「例え、信仰がされておったとしても、地方……わしみたいに限られた地域でしか知られていない者は余所では名すら知られんじゃろう。“送り狼”という妖怪の名で知れ渡っておるわしは珍しいのかもしれんがな」
「そういう神様って珍しいの?」
「珍しいとは言ったが、名を聞かぬだけで意外と地方にはいるかもしれんな」
「民間信仰ってやつかな」
「それに近いかもしれんの。最近は生きた人間を神と崇める宗教もあるらしいな」
「生きた人間を?」
フィクションにはありそうだけど、こうして現実にもあるのかとなると、僕の中では思い当たるものが出てこないため首を傾げたままだ。
「別に何を信仰しようとその者の勝手だろうが、今を生きる人間を信仰するのはどうかと思うがな」
「いけないことなの?」
「いいや?そうでもない。信仰する者を正しく導くのであればな。それに生きた人間を信奉すること自体は昔からあったそうじゃ」
「昔から……」
「宗教によっては人間が悟りを開いて神や仏となることもある。人間を崇拝することは悪ではない。信仰心を悪用することがよくないのじゃ」
「悪用。その人を信仰している人を騙すとか?」
悪徳宗教でお金を騙し取るとかフィクションでも現実でもよくありそうな話ではある。それか海外でたまにニュースに取り上げられる宗教戦争とかだろうか。僕はそれをクロに話してみたけれど、どうやら違うらしい。
「金銭の
クロは自分なりの考えを僕に話してから本当に危険な話をし出す。
「その信仰している者に、宗教を隠れ蓑にして悪事の片棒を担がせるような
昔からずっとそうじゃ。とクロは何かを知っているような言い方をしていた。
「そういえば……今更だけど、どうしてそんな話を?」
「うむ。今やっとるげえむのきゃらくたあとやらに、神々の名がたくさんあってな」
「ああ……楽しい?」
「楽しいぞ!神々を好きに指示できることなどなかなかない機会じゃからの。ところで、このがちゃというのをやりたいのだが、通貨が足りんらしくてな、課金をするとできるらしいのじゃ。やってよいか?」
「ダメ!絶対ダメ!」
「ぬう……厳しいのう……まあこのままげえむを続けていけば通貨が手に入るらしいしのんびりやっていくかの」
「是非そうしてください……」
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