閑話

「――っていうかんじで、僕は今に至るよ。まあもう少し話は続くんだけどね」


とある飲食店。深夜の時間帯なこともあってか、客の姿は少ない。

その店内に四人席を囲んで座る客の様子が見える。四人の中で一人だけ白銀の髪を持つ少し大人びた青年がいる。彼、真宮深偽まみやしんぎはうっすらと笑みを対面に座る男性二人向けている。彼はその二人に向かって自分のことについて今まで長々と語っていたのだ。内容の深刻さに対して、彼は随分と楽観的に話をまとめて語り、その話を聞いていた男たちは若干口元が引き攣っている。

「長くなってごめんね。どうも僕は話を短くまとめるの苦手なんだ」

そのことに気づいていないのかシンギはそんなことを言っている。彼の言葉に男たちは慌てて大丈夫だと首を横に振る。それを見て彼はよかったと安堵するような様子を見せるも、スマートフォンで時間を確認した途端目を見開いた。

「やばっ、もう時間じゃん!」

テーブルに手を突き、ガタっと音が鳴りそうな程の勢いで立ち上がると、彼の隣で今までずっと眠っていた男をの肩を何の躊躇いもなく揺さ振った。

「ロギ起きて!仕事!」

「……あと五分」

ロギと呼ばれた男はテーブルに突っ伏したまま起きる様子はない。彼のことを男二人は知っている。組織の謎が多い古株の一人である獅琉炉偽しりゅうろぎだ。彼はシンギが自分のことについて語っている間、珈琲を一杯飲んで以降は今に至るまで起きることなくずっと眠っていたのだ。

「それを店でやらない!仕事なんだから早く行くよ!」

無理矢理腕を引っ張って席を立たせると、自分の荷物と伝票を乱暴に掴んでレジへと向かってしまう。

「あ、そうだ」

シンギは思い出したように男たちへと振り向く。

「ごめん。僕達もう仕事だから行くよ。話の続きとかはまあ、運良く会えたらにしてね。聞きたくなったらだけどさ」

「……運良く、というよりは運悪くじゃないのか?」

「ロギうるさい。ほら仕事行かないと」

シンギの言ったことに何か思うところあるのか、ロギと呼ばれた男は口を挟む。それを不満に思ったのか彼は言い返し、レジで待機していた店員に伝票を渡した。手早く会計を済ませると、二人は店を出ていってしまう。

その様子に男たちは呆気に取られていたが、自分たちも仕事の時間が迫っていることに気づいて慌てて席を立った。

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