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進級初日ということで授業はなく、昼前に下校となった。各部活の部室に向かったり友達と遊んだりするであろうクラスメイトの間をすり抜けてから、階段を降りていく。校門を抜け、目の前にあるコンビニに入った。同じ制服を着た人たちが沢山居たけれど、僕は誰にも声を掛けなかった。また、声を掛けれられることもなかった。カツサンドとコーヒーを買ってから、目的地である川辺のベンチを目指した。
ベンチに腰を下ろした途端、自然と溜め息が漏れた。
落ち着く。
一人は落ち着くはずなのに、今日はなぜかざわざわする。進級初日だから疲れているのかもしれない。春休み中にほとんど外に出ていなかったことを少しだけ悔やんだ。単純な体力の低下か、それとも……。
考えたところで謎のざわめきは収まらなかった。リュックサックを漁り、チェキカメラを取り出す。ストラップを使って首からそれをぶら下げると、少しだけ肩の力が抜けた。
太陽のぬくもりが、僕の背中に伝わってくる。ゆっくりと、深呼吸をひとつ……。そして僕は少しずつ、息を潜めていった。空にはやわらかい羽のような雲が浮かんでいる。橋の上を駆けていく車、散歩をしている飼い主とダックスフント、光合成をする雑草。川の水面は全てを吸収しているかのように、きらきらと輝いている。野球部の掛け声や透き通るようなフルートの音色が、風と混ざり合っては溶けていった。そのせいか、水音がやけに静かに思えた。
昼に散らばる音たちが途切れた瞬間、風が止んだような気がした。ゆっくりと、チェキカメラを顔へと近づける。もう一度、もう一度音が途切れてくれたら、きっと───。
今だ。
今度は逃さなかった。すかさずシャッターを切って、はあっと息を吐いた。ジー……という無機質な音に釣られて視線を手元に戻すと、チェキカメラの写真出口から、手のひらサイズの水面がやってきた。それを見た途端、僕の中ですぅーっと、あのざわめきが引いていくのを感じた。
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